2MBという表記が懐かしいですが、李明博政権の資源外交のこと、覚えておられますか。海外の資源開発を積極的に行うというもので、方向性としては問題ない政策でした。一時、最優先政策とされていた、と記憶しています。詳しくは金大中大統領が始めたもので、それから盧武鉉大統領が受け継いで、そこそこ予算を使うようになりました。それを李明博政権が受け継いで、さらに強化、強調したわけです。しかし、それから担当公社などの損失が膨れ上がり、朴槿恵大統領が「なにを仰るでざますか。これからは創造経済です」と、創造経済というよくわからない政策を優先的に進めることになって、それからあまり聞かなくなりました。ちなみに、創造経済もまた、朴槿恵政権そのものが「想像」もできない形で消えたこともあり、まったく聞かなくなりました。
文在寅政権は「所得主導成長政策(最低賃金の大幅な引き上げなど)」で、いまのユン政権は・・なにがあるのでしょうか。FTAで経済領土がどうとか、自由貿易を目指すとかそんな政策を強く打ち出していますが、パッとするものはありません。で、その資源外交、海外資源開発ですが・・ガス公社、石油公団、鉱業公団の3つの公団の損失額だけで29兆ウォンを超えたと言われています。その影響もあって、いまは『ほぼ中断されている』とのこと。韓国経済(27日)の記事によると、李明博政権で386個(件)だった関連事業も、いま(2022~2023年)は7個まで下がっています。しかも、すでに現地で資源開発外交をやるためのシステムそのものが機能しなくなっている、とも。
問題は、この海外資源開発こそ、韓国の各種サプライチェーンにおいて「中国の影響力を減らす」ために必要なものだという点です。ノーカットニュース(9月23日)によると、米国は言うまでもなく、日本の場合も、海外資源開発のための政府出資を50%から100%まで増やすなど、積極的に取り組んでいます。しかし、韓国では損失が大きすぎたこともあり、言い出すことすら難しい、と。そもそも、いま韓国政府にそこまで余力がありません。本ブログでも何回か取り上げた税収不足が今年も続いていて、各種公的基金からお金を「借りて」いるのが現状です。地方政府へ送る交付税関連も、6割はカットされました。
公的基金から借りること自体がそこまで問題になるわけではありませんが、普通に投資で運用する分より(政府からもらう)利子のほうが少ないので、結局は基金としてはマイナスでしかないという指摘もあります。しかも、国民日報(29日)によると、政府はこの利子をちゃんと支払っていません。「政府は昨年56兆7000億ウォンの税収不足を埋めるため公的資金の基金に出さなければならない利子7兆7600億ウォンを出さず、3330億ウォンの加算利子までついている」、と。これでは、海外資源開発予算を増やすのはちょっと難しそうです。以下、<<~>>で韓国経済の記事を引用してみます。
<<・・盧武鉉政権は5年間195社、「資源外交」を掲げた李明博政権は5年間に386の新規海外資源開発事業を推進した。しかし、朴槿恵政権で74カ所に減った。ユン政権は資源外交再開を宣言し、2013年から廃止された税制支援を復活させるなど、海外資源開発システムの復元を核心国政課題に選定した。文在寅政権の2020年に521億ウォンまで減った予算を4倍以上引き上げた。しかし、2022年に5つだった新規海外資源開発事業は、昨年2つに減少し、成果はない。専門家たちは、海外資源開発のシステムそのものがくずれているので、政府が支援を増やしても目立つ成果が出ないと説明している。2013年535社に達した海外資源開発事業件数が、昨年387社に急減している間、アフリカや中央アジアなど資源国で数十年間積み重ねた人的・物的インフラが大きく萎縮したというのだ。資源開発業界の関係者は、「損失の出た事業を整理したのも原因だが、無条件撤退せよという圧迫のため、なにもできなかった事業も多い」とし、「その分を中国と日本が占めたというのが、業界のいいたくない真実だ」と話した(韓国経済)・・>>
まるで他国に取られたかのような話し方ですが、じゃ、なんでここまで撤収が多いのか(先も書きましたが損失が多い)、私見ですが、そこから考えてみました。それは、『とりあえず資源開発』が流行ったからでしょう。韓国では、大統領がなにか強調すると、すべてがそこに集中します。2013年10月19日京郷新聞から、朴槿恵政権の『創造経済』について、どうだったかを紹介します。当時、創造経済です!と様々な事業の予算が割り当てられました。全体340件、予算は6兆4900億ウォン。しかし、その中に『新規事業』で使われた予算は3406億ウォン、5.2%だけでした。記事はこの件で、『とりあえず創造とか創意とかの字を付けただけで、実は前からあった事業だから』と説明しています。
<<・・未来部(※担当部署)が国会に提出した創造経済実現計画に関する細部事業を見ると、計340社のうち、各省庁の創造経済関連新規事業は40社で11.7%に過ぎなかった。予算規模で見るとさらに問題で、全体340件の総予算が6兆4900億ウォンなのに、新規事業予算は3406億ウォン(5.2%)にとどまった・・・・各省庁が、朴槿恵大統領と『コードを合わせる(※足並みを揃える)』ために、既存の事業を創造経済事業として提出していると思われる。国会関係者は「各省庁が、朴槿恵大統領の核心公約である創造経済と関連して、何かを出さなければならないという圧迫を強く感じている」と話した・・・・各省庁が、部署名や職位名などに創造または創意という言葉をとりあえず付けているのが、代表的な例だ・・・・朴槿恵政権になってから、すべての省庁に創造行政担当官、創造企画財政担当官、創造行政人事担当官など、70以上の組織名・職位名に創造、創意という字が入った。既存の行政担当官、企画財政担当官、行政人事担当官に「創造」という単語を付けただけだ(京郷新聞)・・>>
こんな勢いで、李明博政権でも、可能性が高くないところまで含めて「とりあえず資源開発」をしたのではないだろうか・・データがないので私見ですが、その結果がいまの「海外資源開発はもうやらない」というシステム的な問題を起こしたのではないでしょうか。無数に増えていた「創造なんたら」が、一瞬で消えたように。
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