ユン政権の「家計債務を減らせ大作戦」について、ですが・・どうやら、うまくいってないようです。集計する機関にもよりますが、GDP比家計債務ランキングでは確実に1~4位に入る韓国。ちなみに日本など他の国は60~70%あたりです。いよいよ政府も家計ローンを減らすようにと各銀行に指示(?)を出しています。1~2年前には銀行に『基準金利を上げたけど、ローンの金利を上げないでくれ。支持率下がるから』としていましたが、最近は逆で、『基準金利を下げたけど、ローンが増えると困るから家計債務規模を減らしてね』と言っているわけです。その影響でしょうか、それとも銀行の内部事情でしょうか。中央日報(10月31日)などの記事によると、韓国銀行が基準金利を0.25%p引き下げまたのに、なぜか住宅担保ローンの金利が上昇する、妙な現象が起きています。多分、一時的なものだろうとは思いますが、もう2ヶ月も続いています。
預金・積金金利は普通に下がっている、とも(笑)。一部のメディアは「もはや通貨政策が機能しなくなったのではないか」という専門家見解も伝えています。あと、韓国経済(1日)の記事によると、普通の銀行すなわち「第1金融圏」がローン規模を減らそうとしたら、第2金融圏(貯蓄銀行など、普通の銀行より借りやすいけどローン金利が高い金融機関)に人が集中する、いわゆる風船効果(風船の一部を押しても、他の部分が膨れ上がるだけ)が現れている、とのことです。家計債務総額で見ると、さほど変わっていない、すなわち政府が家計債務を減らそうとする動きも、効果がなかったことになります。基本的に第2金融圏は第1より金利が高いので、これはこれで借り主たちの負担は大きくなったのではないか、そんな気もします。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・先月、国内5大市中銀行の家計貸出増加幅が大きく鈍化したことが把握された。金利引き上げ(※基準金利は0.25%p下がりました)と融資限度縮小などの結果だという分析が出ている。しかし、融資需要が依然として大きく、地方銀行とインターネット銀行、2金融圏に集まる「風船効果」が強くなった。減少するだろうと思われていた家計ローンの増加が、当分持続するという観測が提起される。1日、金融関係者たちによると、国民銀行、新韓銀行、ハナ銀行、ウリ銀行、農協中央会など5大銀行の家計ローン残高は先月31日基準で732兆812億ウォンだった。前月(730兆9671億ウォン)より1兆1141億ウォン増加した。9月(5兆6029億ウォン)に比べて月間増加幅が5分の1に縮小された・・
・・5大銀行から離れたローン需要は、地方銀行とインターネット銀行、農・水・信協と貯蓄銀行、セマウル金庫など2金融圏に集まった。地方銀行やセマウル金庫などの相互金融会社は、積極的に住宅担保ローン金利を下げ(※下げたとしても第1金融圏よりは高い)、ローン需要を大挙吸収した。保険契約融資、カードローンなど「不況型ローン」の増加幅も大きいと伝えられた。2金融圏だけで、先月、家計ローンは2兆ウォン近く急増したことが分かった。金融委員会の関係者は「先月5大銀行の家計融資の増加幅は前月比で大幅に減少したが、地方銀行と2金融圏の家計ローンが予想よりも大幅に増えた」とし「まだ集計が終わっていないが、全体の家計融資の増加幅は前月(5兆2000億ウォン)とほぼ同じか、むしろ増えたと見ている」と話した(韓国経済)・・>>
この「第1金融圏」「第2」「第3」、どの金融機関を利用する(できる)のか。それは、家計債務が一般的な社会においては、なにかの身分制度のような存在です。前からずっと指摘されてきた、『第1利用者が第2に行くしかなくなる』(同じく、第2利用者は第3へ、第3利用者は異世界へ)現象が、いよいよ本格化したと言えるでしょう。この件をずっと見てきた1人として、「政府政策だけで家計債務を減らすのは、果たして可能な状態なのか」という気もします。新型コロナが収まりかけたころ、ウィズ(with)・コロナという言葉が流行りました。韓国の経済システムそのものが、もうウィズ・家計債務です。資産や所得に余裕のある人ならいいでしょうけど、そもそも返す余裕がなく、自転車操業を『賢いこと』と認識している人たちが多く、彼らはそんな社会で生まれて育ったため、それを当然のことと思っています。
10月17日にも、違法金融業者利用額が2022年10兆ウォンを超えたことをエントリーしました。これは、当局は発表せずにいて、経済メディア「ファイナンシャルニュース」が自力で入手して報じた内容です。第3金融圏とされる貸金業者を利用する人たちは、2017年247万人だったとされています(実際はもっと多いとも)。しかし、利用者たちがちゃんと返さないリスクが増え、上限金利が20%まで下がったこともあり、貸金業者たちは新規ローンを出さなくなり、2022年には99万人まで減少しています。じゃ、148万人はどこへ行ったのか。第3金融圏までは『合法』すなわち制度圏です。そこからさらに『下がる』と、違法金融業者の世界になります。どんな集計にもカウントされません。2022年~2023年から強くなってきた、「第3を利用していた人たちが制度圏の外へ」「第2を利用していた人たちが第3へ」の動き。いよいよ、「第1を利用していて人たちが、第2に行くしかなくなった」現象までもが、本格化しました。大統領おにいちゃん、次の手はあるのでしょうか。
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