日経平均が上がるようになってから、韓国では『国場(国内証券市場)はあまりにも低評価されている』という主張が溢れました。政府も日本をベンチマークするとかで「企業バリューアップ指数」というものを作り、発表しましたが、広報が足りなかったのかこれといって効果はなく、むしろなにか発表するたびに株価が下がるという話まで出ています。その際にかならず出てくるのが、『企業ガバナンス』関連です。本ブログでもユン政権の株価対策関連で同じ意見を紹介してきましたが、デジタルタイムズというネットメディアが、「まさにこれが実例」と紹介する記事を載せたので、紹介します。簡単にいうと、総帥(一家)の影響力が強すぎる、企業がオーナー中心でまわる、そういうところをなんとかしないと、どんな政策も効果がないという指摘です。
個人投資家でもある記者が書くシリーズ記事、「アリ暮らし」のというシリーズ記事があります。借りぐらしのアリエッティの略ではなく、韓国では個人投資家を「アリ(蟻)」と言うからです。記者さん本人も個人投資家だから、でしょうか。で、主人公は高麗亜鉛という会社。時価総額1兆円超えの、結構大きな企業だと聞きました。簡単にまとめますと、同じ親族が経営する別の企業グループのオーナーと、高麗亜鉛創業者の孫の間で、高麗亜鉛の経営権を手に入れようとする親族ケンカが起きました。そこで、自社株をもっと手に入れるため高麗亜鉛側は自社株買いを行いました。『株主の利益のため』ということでしたが、実は自分の経営権を守るためでした。
その結果、50万ウォンにもならなかった株価は150万ウォンまで上がりました(どんだけ買ったんだよ、といったところでしょうか)。ですが、記事によると、自社株を買った資金が、借金だったそうです。そこで、債務をなんどかするために、今度は大規模の有償増資を行うと発表しました。株価は急落しました。数ヶ月前からこの動きが各メディアで「あ、これ、国場(国内証券市場)の問題を説明できる良い事例だな」と記事になり、政府が有償増資を止めました。いまは有償増資は取り消しとなっています。株価は100万ウォンになっている、とのことです。考えてみると、「じゃ、自社株買いのときの債務はどうするのか」が気になるところです。ソース記事もまた、「結局、近い内にまたやるのではないか」というふうに書いています。バリューアップより、経営権争いが株価を動かす。こういうのが、まさに「国場に投資してはならない理由(原文ママ)」である、と。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・高麗亜鉛の株価がなぜ上がったのかを考えてみなければならない。実績はそのままで、来年の見通しが明るいわけでもない。株価が動いた理由は、経営権だけだった。同業をしていた二人の親族が、互いに経営するといい出して、株価が上がった。「バリューアップ指数」より「経営権争い指数」を作ったほうが、もっと株価対策になるのではないかという話まで出てきた。高麗亜鉛は経営権関連で「株主価値の向上」を売りにした。自社株買いを通じて株主価値を高めるということだった、自社株買いの目的が株主価値の向上ではないこと位、誰もが知っていた。会社が自社株を買い取り消却すれば、一般株主の立場ではいい。資本はそのままなのに株式数が減ることで、自分が持っている株式の価値を高めてくれる。
しかし、このような自社株買取背景には、相手側の公開買入がある。経営権を確保するために、競争者の持分買入より高い価格を提示して株式を買い、これを消却して議決権を焼却するという意味だった。66万ウォンで始まった公開買入価格競争は、75万ウォン、83万ウォンに高まり、89万ウォンで終わった。一方はこれを通じて持分を5%増やし、会社は買い取った株式を消却して経営陣の株主価値を高めた。問題は、公開買入直後の有償増資であった。経営権防御のために借金で株式を買い取ったので、今回は株式を新たに発行して借金を返済すると言ったのだ。新株の価格は初公開買付価格と同程度の67万ウォンだった。有償増資発表当時、高麗亜鉛の株価は154万ウォンだった。しかし発表直後、一日で46万ウォンも下がった。
これは、結局、会社のお金で会長の経営権を守ることを、会社側が認めたのだ。取締役会がこれを承認した。投資家の株価は、経営陣の検討対象ではなかったのだ。当局がこれにブレーキをかけたが、市場が落ち着いた後、再び有償増資を決定すれば、これを防ぐ方法はない。結局、暴騰した株価は再び所定の位置に戻るだろう。結局、会社は依然としてオーナーのための経営をしており、当局はこれを牽制できない現実が明らかになったわけだ。個人投資家も反省しなければならないだろう・・・・企業の基礎体力を見て投資するのではなく、噂に期待し、短期の好材料にだけ反応する投資は、市場の魅力を下げる要因である(デジタルタイムズ)・・>>
ちなみに、難しいこと考えなくても、株主還元率が他国に比べて低いとされています。前にも紹介したことがありますが、1月28日のKBSによると、1配当額と自社株買取額を純利益で分けて『株主還元率』を出してみたところ、韓国上場会社の10年平均株主還元率は29%でした。同じ計算で、米国はなんと92%に達します。ヨーロッパや日本など先進国の株主還元率は68%前後。中国も低いとされていますが、それでも32%です。
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