読者の皆様はもうご存知でしょうけど、昨日(3日)の夜10時半頃、韓国ユン大統領が非常戒厳令を宣布しました。まず、非常戒厳令がどういうものなのかをダウムカカオの百科事典から引用しますと、次のような内容です。「国家緊急事態で軍事力を利用して司法と行政を維持する緊急措置の一つ。国家元首が宣布する戒厳令の中で緊急に軍事力を利用しなければ行政や司法などの基礎的な社会秩序を維持できない戦時または交戦状況などに発動する。警備戒厳とは異なり、国民の基本権も一部制限する最も強力な戒厳令であり、作戦上やむを得ない場合、国民の財産を破壊したり焼却する権限も与えられる」。
韓国では何回かありましたが、1979年12月12日、全斗煥氏のクーデターのときが最後でした。昨日で45年ぶりということになります。道路は軍用車両が走り、国会に軍が投入され、国会議員たちに銃を向けました。このインパクトはあまりにも大きく、海外メディアも「いったい何が起きたのか」というふうに報じました。一部メディアによると、与党側はもちろん、米国側も、「事前に何も聞いていない」と話している、とのことです。それでも、与党・野党合わせて190人の国会議員が国会に入り(これも大きな騒ぎになりましたが)、非常戒厳令解除要求が可決しました。これが昨日の夜遅く(今日の1~2時あたり?)です。
これで法律的には戒厳令は終わったことになりますが(国会が解除要求した場合、大統領は解除する義務がある)、1955年、韓国の最高裁は、たとえ国会が解除要求案を可決しても、大統領が解除を発表するまでは戒厳令は有効だと判断したことがあります。朝鮮戦争が1954年までだったので、『非常時』を前提にする非常戒厳令において、1955年と昨日とはずいぶん異なる状況ですが・・この部分がちょっと気になりましたが、4時30分、ユン大統領が公式に戒厳令を解除すると発表しました。これで、約6時間の「現職大統領によるクーデター」は、終わりました。中央日報によると、そもそも非常戒厳令を出す条件が満たされていなかったので、非常戒厳令自体が違法である可能性が高く、野党は今日中にも「内乱」などの理由で国会で弾劾関連案を発議するとしています。個人的にも、良い悪いの問題ではなく、『なんでこんなことを?』としか思えません。北朝鮮にしたがう勢力により国政がマヒしたため、というのが名分でしたが・・先も紹介しましたが、戦時またはそれに準ずる状況を前提にしている非常戒厳令。野党側の動き以外にも、法律的な判断も気になるところです。以下、中央日報の記事を<<~>>で引用してみます。
<<・・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が4日午前4時30分国務会議で非常戒厳解除を議決し、「6時間戒厳事態」は幕を下ろしたが、戒厳宣布手続の適法性を置いて論議が起きている。「戦時・事変またはこれに準ずる国家緊急事態」(憲法77条)という戒厳要件が成立していないだけでなく、その過程でも違憲・違法の可能性ががあるという指摘が出ている。まず、去る3日午後10時23分に始まった6分ほどの大統領緊急談話生放送を通じて宣言された非常戒厳だが、国務会議の審議を経たのかが不明だ。憲法89条と戒厳法2条は、大統領が戒厳を宣言しようとするときは、国務会議の審議を経なければならないと規定する。だが「国務会議がなかった」「国務総理も知らなかった」、または「非公開国務会議があった」という噂ばかりだ。
キム・デファンソウル市立大ロスクール教授は・・・・「もし国務会議があったなら、その国務委員に対する調査もしなければならないだろう」と付け加えた。憲法上戒厳要件が成立しない状況で戒厳に同意した場合、それも憲法違反である可能性があるからだ。「戒厳を宣布するときは、その理由・種類・施行日時・施行地域及び戒厳司令官を公告しなければならない」(戒厳法3条)という規定もきちんと守られなかった、という指摘も出ている・・・・また、戒厳法4条は「大統領が戒厳を宣布したときは、遅滞なく国会に通告しなければならない」と規定するが、生放送談話形式がその「通告」に該当するかについても意見が分かれている。ウ・ウォンシク国会議長は4日、本会議で「大統領は国会に通告しなかった」と明らかにした。与党である国民の力からも「ニュースを見て初めて知った」(チュギョンホ院内代表)という話が出た。
戒厳宣布後にも違憲・違法所持が少なく発見される。「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じる」という戒厳司令部布告内容が代表的だ。憲法は、戒厳状況で「言論・出版・集会・結社の自由、政府や裁判所の権限に関して特別な措置ができる」(77条)と規定するが、立法部活動を制限する内容はない。むしろ「国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求したときは、大統領はこれを解除しなければならない」という憲法条項(77条)、「戒厳施行中、国会議員は現行犯でもないかぎり逮捕または拘禁されない」という戒厳法(13条)などを通じて、立法部活動を保護している。
より大きな問題は、戒厳司令部の布告が単に宣言にとどまらず、現場でも一部実現されたという点だ。特殊戦闘部隊員、空輸部隊(※飛行機による敵地投入のための部隊)員など武装した軍兵力が与・野党代表室のガラス窓を壊して入って、ソウル汝矣島国会議事堂本庁に進入し、警察は議事堂を囲んだ。彼らはガラス窓を壊したり、バリケードを設置するなど、国会議員と補佐陣と激しく対峙した・・・・キムソンテク高麗大ロスクール教授は「布告で国会政治活動を中止させるなど、大統領の権限、憲法・戒厳法などにもない」とし「明らかに不法」と話した。続いて「全斗煥、盧泰愚元大統領の内乱陰謀裁判の時、国会議員の登院を妨害したことで内乱の罪が成立すると最高裁判所が判断したことがある」とし「今回の場合には内乱未遂として、今後刑事訴訟の対象になる可能性がある」と話した(中央日報)・・>>
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