「韓国尹錫悦大統領の非常戒厳令(12月3日)は、違憲だったのか?」についての私見

いよいよ、明日は(予定通りなら)尹大統領弾劾表決の日です。前週にもあった気がするけど、多分気のせいでしょう。そこで、あくまで私見ですが、関連法律からして「韓国尹錫悦大統領の非常戒厳令(12月3日)は、違憲だったのか?」について書いてみます。「違憲なのか?」についての考察であり、それ以外の基準で『正当な』ものなのかとうかの考察ではありません。異論ありOKで気軽に行きましょう。細かいことはまた別の法律でも問題になっている可能性がありますが、大まかに、違憲とされている部分は2箇所あります。一つは、「いまが『そこまで」やる状況だったのか」という点。警備戒厳でもなく非常戒厳を出すほどの状況だったのか、というのです。そしてもう一つは、国務会議をやったのかどうかです。これは、今までは「無かった」とされていましたが、実は『会議』そのものはありました。

まず韓国の戒厳ですが、憲法77条を見てみると、このような条項があります。上記の議論に必要な部分だけ引用してみます。まず、「①大統領は、戦時・事変又はこれに準ずる国家の緊急事態において、兵力として軍事上の必要に応じる、または公共の安寧・秩序を維持する必要があるときは、法律が定めるところにより戒厳を宣布することができる」、「②戒厳は非常戒厳と警備戒厳とする」となっています。非常戒厳が宣布されたときは、法律が定めるところにより令状制度、言論・出版・集会・結社の自由、政府や裁判所の権限に関して特別な措置を行うことができますが(これが③です)、『警備戒厳』ではそこまではできません。

 

そして、「④戒厳を宣布したときは、大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない」、「⑤国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求したときは、大統領はこれを解除しなければならない」となっていますが、④の場合まだこれといって問題になっていないのを見ると、通告はしたようです。⑤の場合も、国会の解除要求を受け入れました。だから⑤も問題ないでしょう。ここで違憲とされているのは、①です。同じく77条の2項を見ると、戦時・事変またはそれに準ずる国家非常事態において、「交戦状態、または社会秩序が極めて撹乱された状態で、行政及び司法の機能の遂行が著しく困難な場合」、「軍事上の必要性、または公共の安寧・秩序を維持するために」、非常戒厳を行うことができます。

ちなみに警備戒厳は、大規模のデモなどで社会秩序が行政力だけではどうにもならない状況において出すことができます。権限も非常戒厳ほど強くはありません。個人的に、77条の「条件」においては、尹大統領の12月3日の非常戒厳は違憲だと思っています。共に民主党についての大統領の考えには同意できる部分もかなりありますが、タイミング的にどう考えても保身のための側面が強く、彼らは普通に選挙を通じて当選した議員たちです。談話で指摘していた不正選挙が本当にあったと思うなら、せめてその証拠は示す必要があるでしょう。

 

次に問題になっているのが、国務会議を行ったのか、です。憲法89条(国務会議についての内容)を見てみると、国民投票案や憲法改正案はもちろん、予算案なども「次の事項は国務会議の審議を通らなければならない」となっています。そこの5項(89条5項)に、「大統領の緊急命令、緊急財政経済処分及び命令、戒厳の宣言及び解除」になっています。戒厳法2条にも同じ内容があります。すなわち、国務会議の審議を経ていないなら、違憲、戒厳法違反になってしまいます。これについては、最初のうちは「国務会議は無かった」とされていました。国務総理も事前に知らなかったと報じられていたので、国務会議があったはずない、と。でも、11日ハンギョレ新聞などのメディアの記事によると、国務会議はあった(手続き的になんともいえない部分はあるものの)ことがわかりました。ハンドクス総理もその時点、すなわち戒厳前に『知っていた』ことになります。国務総理は、「私は反対した」としています。ここはちょっと<<~>>で引用してみます。

 

<<・・ハンドクス首相はこの日(※国会での)答弁で、ユン大統領の非常戒厳宣布計画を3日夕方8時40分頃に聞き、夜9時ごろ国務会議を招集したと説明した。首相は「(戒厳をするという)大統領の言葉を聞いて反対し、国務委員たちと共に説得しようと努力した」と話した。しかし、彼は「正確には、それは国務会議ではないのではないか」という野党議員の質疑に、「同意する。公式会議として行われたわけではない」と答えた。戒厳法2条は、大統領が戒厳を宣言または変更しようとするときは、国務会の審議を経るようにしている。しかし3日にはこのような手続きをきちんと踏んでおらず、非常戒厳宣布が違憲・不法という根拠がより明確になったわけだ。ハン首相は、国務会議の後、国務総理と国務委員が共に署名する「副署」手続きを経たかどうかを尋ねる質問にも、副署はしたことがないとした。法令や大統領の国務に関する文書は、国務総理と国務委員が署名するようになっているが、このような手続きも行われなかった(ハンギョレ新聞)・・>>

 

このように、『前提(12月3日当時の現状)が非常戒厳令を出すような状態なのか』と、『国務会議が無かった』が、今回の議論の中心にあります。しかし、個人的に、『国務会議はあった』と思っています。すなわち、この部分は問題ないのではないか、と。副署(大統領と国務会議委員たちの署名)が本当に無いなら、それは問題です。でも、大統領が招集していいと言ったから(相応の手続きは守ろうとしたから)国務会議も招集されたのでしょう。ちなみに、会議は5分で終わったという話もあります。大統領がちゃんと参加したのか、副署は本当に無かったのか、まだ確認すべき内容もありますが、あったかなかったかでいうなら、国務会議は一応『あった』と言えます。

で、『私見』まとめですが、違憲だと言われても仕方ない状況ではあります。ただ、『条件』についての部分なので(国務会議のように『あった、なかった』でわかりやすく判断できるものではない)、人によって見方も異なるはずです。また、非常戒厳令がもし違憲だったとしても、それがそのまま「内乱」になるわけではありません。これについても、私は「内乱とは言えないのでは」と思っていますが・・結局は、裁判所が「流れに合わせる」形になるでしょう。明日もし弾劾案が可決されても、憲法裁判所が今審議できる状態ではない(9人のうち、6人しかいない)ので、まだまだ時間はかかります。しかし、もし最終的に弾劾されたら・・保守派大統領2人連続弾劾になります。とんでもないインパクトです。

 

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