韓国政府は、「在韓米軍は対北朝鮮用であり、台湾の有事の際にも、在韓米軍を投入するわけにはいかない」というスタンスです。主に文在寅政権のときに何度か取り上げたことがありますが、今もこの路線は変わっていません。2023年8月4日の韓国日報によると、尹錫悦大統領が米国を国賓訪問する前にも、同じ話がありました。台湾の有事の際、在韓米軍を投入することについて米国側から話し合おうという提案があったけど、尹政権は応じなかったというのです。多分、米国としては、尹大統領の訪米中に、相応の内容を発表したかったのでしょう。しかし、東亜日報(23日)によると、トランプ政権で国防次官に任命された人は、この件において『対中』を重視し、そのためには在韓米軍の役割変更、及び再検討が必要だというスタンスです。
ちなみに、国務長官に任命された人も、似たような主張をしていた、とのことでして。台湾関連で在韓米軍を動かさないというのは、表面的には『北朝鮮が動くと地政学的に不利になる』となっていますが、結局は中国との関係、いわゆる『安米経中』のためです。本件、韓国と北朝鮮の関係というより、韓国と中国の関係に関わる件になるわけです。尹政権になってからも、『北朝鮮問題に対応するから、中国関連では相応の例外を認めてほしい』というのが基本路線でした。尹大統領、またはその次の人は、どう対応するのでしょうか。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・ドナルド・トランプ米大統領当選者が22日(現地時間)「在韓米軍役割調整論」を主張してきたエルブリッジ・コルビー元国防部副次官補を米国国防戦略政策開発の核心役割を引き受ける国防部政策次官として指名した。トランプ当選者はこの日、コルビー指名者に対して「米優先主義外交及び国防政策を擁護する非常に尊敬される人事」とし「ピート・ヘグセス国防長官指名者と緊密に協力して軍事力を復元する」と明らかにした。トランプ1期行政府時代、国防部戦略・電力開発担当副次官を務めたコルビー指名者は「対中国強硬派」と評価される。特に在韓米軍は中国抑制に集中し、韓国が自国防衛を自ら責任を負わなければならないという立場を明らかにしてきた。これにより在韓米軍の規模や役割調整に積極的に出て、圧迫してくるだろうという観測が出ている・・
・・しかし戒厳と弾劾などでで事実上リーダーシップ空白の韓国政府は、トランプ当選者側とまだきちんとしたコミュニケーションもできずにいることが分かった。来年1月20日、トランプ2期政権が発足し、防衛費の引き上げはもちろん、在韓米軍の再配置などに乗り出す場合、無防備にさらされる懸念も大きくなる・・・・政府はトランプ当選者側から大統領就任式の招待をまだ受けていおらず、一部の国内財界人事だけ招待されたと伝えられた・・・・トランプ当選者が先に指名した外交安保「ツートップ」も、在韓米軍再配置の可能性に言及したことがある。マコ・ルビオ国務長官の指名者は2020年「韓国と西ヨーロッパに駐留した米軍の見直しを見ることになるだろう」と述べた。マイケル・ウォルツ ホワイトハウス国家安保補佐官指名者も2018年「駐韓米軍撤収が北朝鮮を非核化に動かすことができる」と明らかにしたことがある(東亜日報)・・>>
<<・・(※2023年8月の記事です)米国が、台湾有事に在韓米軍旅団級部隊を派兵すると韓国政府に提案したことが把握された。台湾海峡の衝突に対抗して在韓米軍を動かす可能性は着実に提起されてきたが、具体的規模が明らかになったのは初めてだ。中国リスクに私たちの安保が影響を受ける可能性が高まっている。3日、韓国日報取材を総合すれば、韓米両国は去る3、4月の高位級外交安保チャンネルを通じてインド・太平洋圏域での有事の際、在韓米軍の活動範囲と規模について意見を交わした。ユン大統領の米国国賓訪問を控えた時点だ・・・・匿名を要求した軍の情報筋は「米側では以前から在韓米軍の役割調整問題を議論したがっているが、韓国政府は公式協議に消極的だった」とし「それでも米国側は具体的な兵力規模に言及し、より積極的に出ている」と話した。
米側が最近述べた台湾派兵在韓米軍規模は旅団級(3000~5000人)と伝えられた。場合によっては、最大5,000人の在韓米軍が台湾に「抜け出す」わけだ・・・・韓国政府はそんな協議はなかったとしているが、米側が持続的にこの問題を取り上げてきただけに、決定的瞬間には応えざるを得ないと予想される。国防部は2014年、米当局と在韓米軍が提起してきた高高度ミサイル防衛体系(THAAD)配置協議についても「公式に議論されたことがない」としていた(韓国日報)・・>>
コルビー氏は、日本の防衛費関連でも、「正しい方向へは進んでいるが、GDP3%は必要だ」と話すなど、基本的に増額を支持する路線です。また、引用部分にはありませんが、韓国(など)の核武装も視野に入れる必要があると話したこともあります。ただ、前にも同じ話題がありましたが、NPT関連の問題などもあるし、輸出関連で各企業がその影響(イメージダウン)を懸念しているという話もあるので、在韓米軍内の配備ならともかく、事実上米国だけで決められる(米国からすると)在韓米軍役割変更・再検討よりは難しい問題ではないでしょうか。
ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は「自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
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