韓国国会が、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追の理由から、「内乱」を取り消すことにしました。憲法裁判所が判断する『事由』から、内乱が消えることになります。内乱は刑法関連なので、それを取り下げて、『違憲』部分だけを強調していくというスタンスです。この場合、国会といっても関連委員会のことで、事実上「野党側」になります。中央日報など多くのメディアが記事を出しています。違憲だからといって弾劾が成立するわけではありません。与党側、そして大統領室側は、「じゃ、弾劾の事由にはいったい何が残るのか」と反論しています。
なにがあったのかわかりませんが、野党側からでもこれが内乱にはあたいしないという内部判断でもあったのでしょうか。また、「内乱まで審議することになると、時間がかかる」という主張もあります。すなわち、李在明代表の司法リスクを意識して、憲法裁判所の判断が素早く出るように、その部分を消したというのです。記事によると、内乱では証人たちの反対審問権があるため、どうしても判断が長引く、とのことでして。理由がどうであれ、つい昨日、その理由で捜査本部が動いて、大統領官邸まで警察が入ったばかりなのに、国会がその件を取り下げたわけですから・・もうなにがなんだか。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・国会弾劾訴追委員団が3日、ユン・ソンニョル大統領弾劾事由で「内乱」を撤回すると明らかにすると、国民の力が「国会議決を再度行うべきだ」と反発した。国民の力所属のホンジュンピョ大邱市長はこの日、SNSに「弾劾訴追審判事件から内乱部分を撤回すると共に民主党は言うけど、そうするには変更された内容で再び国会議決を受けなければならない」と書いた。それと共に「朴槿恵(元大統領)弾劾の時は、そのような手続きを経ずに話にもならない憲法裁判決をしたが、今回はそうはいかないだろう」とした。ナ・ギョンウォン国民の力議員も「明白に国民をだましたことになる・・・・内乱を主張して国民を動かしておいて、今になって弾劾事由から撤回するというとはどういうことなのか。(※共に民主党)自ら、内乱ではなかったと話しているようなものだ」とした。
この日、憲法裁判所で開かれた尹大統領弾劾関連の二次弁論準備期日で、弾劾審判を請求した国会側は、「刑法に違反した事実関係と憲法に違反した事実関係は同じだ」とし、弾劾訴追の理由のうち「刑法上内乱」部分(刑法第87条、第91条)を撤回すると明らかにした。弾劾審判を刑事裁判と分離し、憲法違反の可否を中心に迅速に進めていくという趣旨だ。国会側がこのような決定を下した背景を置いて、国民の力は「弾劾の結果を早く出すためだ」と批判した。国民の力法律委員長のチュジヌ議員はSNSに「内乱の場合は証人に対する反対審問権保障のため、裁判に時間がかかる」とし「それを撤回することで素早く弾劾を進めて、イ・ジェミョン共に民主党代表の司法リスクを避けようとしているわけだ」と主張した・・
・・国会側の代理人団キムジンハン弁護士は準備期日終了後、記者たちと会って、「ユン大統領の違憲・違法行為を内乱ではなく憲法違反で構成しようということ」とし「内乱証拠調査を厳しくして、訴訟期間が長くなれば、国のリスクも長くなる」と説明した。続いて「非常戒厳宣布、国会進入など裁判部で定めた有形行為により憲法裁判を行うだろう」とした。国会側は、弾劾訴追の理由が変わった場合に国会で再議決を受けなければならないという主張に対して、「対応することはない」という立場だ。弾劾訴追委員団幹事であるチェギサン民主党議員は中央日報との通話で、「問題があれば憲法裁判所で意見を出せばいいだけだ」とし「裁判の最終判断は裁判部がすること」と反論した(中央日報)・・>>
尹大統領側は、戒厳令は「統治行為だった」と主張しています。それが違憲だったのかどうかについての判断と、だからといって弾劾の事由になるのかどうかの判断は、別です。弾劾までやる理由においてもっとも重いのは、内乱関連でした。それを今更撤回するとは、さすがに言葉も出ません。久しぶりに尹大統領に有利な展開ではありますが、いままでのこと(いろいろ)を振り返ってみると、やはり裁判結果は世論に合わせる形になるでしょう。さて、与党側は共に民主党李代表の裁判も迅速に進めるべきだとしています。昨日は執行できなかったものの、公捜処など共助捜査本部がこのまま引き下がるとも思えません。尹大統領の大冒険はまだまだ続きます。というか、どちらの裁判(判断)結果が先になるかで事実上「大統領」が決まるというのも凄い話ですが・・なにか大きな動きがなければ、次は別の話にしたいと思います。
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