どうでもいいと言われればそれだけですが、個人的な話をすこし書きたいと思います。実は、いまさらですが『ニューコリア』の翻訳の「最後のピース」が見つかり、完成しました。ニューコリアは、1926年にアレインアイランドという行政学者が書いた本で、日本の政策のおかげで発展していく、Chosen(当時の朝鮮の正式表記)の各種データを記録した本です。本の内容の中には、特定案件についての認識については同意できない部分もありますが、「良い政府というのは、主観的な『正しいと思う』かどうかではなく、客観的な『データ』でのみ、判断すべきだ」と明言しているアレインアイランドさんのスタンスは、見習うべきだと思っています。もう随分前のことですが、本ブログは、この本の訳(当時は韓国語版が出ていて、まだ日本語版はなかったので)を載せるためにアメブロに立ち上げたのが始まりです。
で、最後のピースというのはどういうものかと言いますと、原書(1926年版)の257ページ、当時日本の数々の政策のおかげで発展しつつあった朝鮮の農事のことで、農家が人力を確保する方法について書かれた部分です。一緒に住みながら仕事を手伝う作男(韓国語でモスム)、契約労働、そしてドゥレ(農社とも言いますが、農民同士の相互扶助のようなもの)などによる・・という内容ですが、そこに、こんな言葉が出てきます。「Koji, or contract-labor(Kojiともいう、契約労働)」。契約というのは、仕事を手伝って約束した代価を受け取るという内容で、いわば小作システムの簡易版のようなものですが、Kojiってなんだ?というのが謎でした。
これ、韓国語版にもないし、発売済みの日本語版にも、Kojiが何の単語なのかは説明がありません。前からずっと疑問に思っていた単語ですが、調べてみても、これといった単語がヒットしませんでした。「こじ」なのか、「こうじ」なのか。まだ日本語のローマ字表記がいまよりずっと安定してなかった頃ですし・・日本語辞典の同音の単語を総当りで探したりしましたが、マジンガーZのパイロットの名前か、それとも当時だけに使われていた流行語のようなものか、結局、分かりませんでした。で、そうだったのですが。まだ詳しくご紹介できる段階ではありませんが、最近、この本の『自分なりの翻訳』を進めておりますが、その過程で、やっと、初めて読んでから十数年ぶりに、やっとこの単語が分かりました。これで、『完成』したとも言えるでしょう。
これ、なんと朝鮮半島の固有語でした。「ゴジ(Goji)」です。これは、食糧が尽きた農民が、他の農民の仕事を手伝い、代価(殆どの場合は現物、すなわち食糧)を先に受け取る雇用形態を言います。原書では契約労働としていますが、基本的には『ゴジしてやっと食いつなぐ』など、ちょっとネガティブな意味合いが強い単語です(1926年の本には契約労働していますが、その以前には、そんな言葉を使うようなものではなかったかもしれません)。実はこれ、韓国でもものすごくマイナーな言葉で、辞典を調べて、私も初めて知りました。もしやとおもって韓国語辞典を「コジ」「ゴジ」で調べてみたのが、ヒットしたわけです。で、夜中に一人で喜んでいた・・レナが心配そうに見ていた・・といったところですが、これだけだと更新にならないので、いま約している「農業発展」の部分から少しだけ引用してみます。すでに正式の翻訳版などをお持ちの方もおられましょうけど、よろしければ、どうぞ。
<<・・日本の政治家たちは、よくわかっていた。朝鮮における経済政策が、それがどのような形のものであろうと、朝鮮や外国の傍観者たちからは強く批判されるだろう、ということを。もし日本の人たちが半島に定住し、資本を投入し、商業、産業、農業を奨励し、学校、道路、病院、港湾、鉄道を建設し、裁判所、銀行、その他の信用機関、農業や産業やその他の研究機関を設立し、それによって、朝鮮半島に多大な有形資産を与え、朝鮮の住民たちの健康、安寧、繁栄に貢献したとしても、彼らは『日本って、自らの利益のためにやっているだけなんだよね』と批判するだろう、と。
一方、もし日本が別の政策を採用し、朝鮮開発への投資を控え、朝鮮半島を現地統治のときのままにして、ただ地政学的に利益のある国境を手に入れたことに満足していたとしたら、彼らはこう批判するだろう。『やはり、軍事計画を遂行することしか考えておらず、現地の人たちの福祉にはまったく無関心なんだよね』。英国、米国、フランス、オランダに関連しても、ただ表面的な知識だけでも持っている人なら、私が上で言及したタイプの批判をいくつも知っているであろう。
日本の国策上、併合は取り消せないものであったため、日本は対朝鮮国内の経済資源の開発に重点を置くと決意した。日本は、朝鮮の人々の全般的な生活を豊かにしてやれば、日本に対する反感も消えるだろうと考えていたわけではない。朝鮮の人々が、時間が立つにつれて確実に現れるであろう、「物質的利益、教育機会の増加、社会的地平の拡大など、説得力のある多くの証拠」と、「政治的に独立を失ったという一つだけの事実」を、反対給付として天秤にかけ、判断してくれるだろうと考えていたのだ(ニューコリアより)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・準新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・既刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。