政治が国民をわかっていないのか、それとも国民がそんな政治を作ったのか

尹錫悦どこを見ても関連ニュースばかりですが、だからといって何か大きな進展があるわけでもなく、時間だけが過ぎています。戒厳令それ自体が問題ではなく、その内容が弾劾事由になるのかどうかですが、何かの証拠(尹大統領が何かを指示した)に関する話はなく、このまえ「A4用紙がある」という話がありましたがそれから続報もなく、こう聞いたああ聞いたな話ばかりがニュースになっています。そんな中、中央日報(17日)が、憲法裁判所の判断結果はもう明らかだと思われるという記事を載せました。寄稿文の形のものとはいえ、右側とされる中央日報に載ったことで、結構話題になっています。

これが、この文を書いた人(延世大学校特任教授)だけの見解なのかと言いますと、なんかそうでもないみたいで、すでに与党政治家たちが動いているとか、そんなニュースもあります。他にも中央日報の週刊誌である中央サンデーにも、11日にソウル大学教授の寄稿文が載りましたが、内容の核心はソース記事と同じです。『対立をやめて、疎通へ向かおう』というのです。11日の記事には「疎通正義」という表現まで出てきます。さぁ、どうでしょうか。各記事は共通して、国民は団結した姿を見せているけど、政治がそれをサポートできないでいるという論理展開で、政治や制度の問題だとしていますが・・本当にそうでしょうか。

 

『対立からアイデンティティーを求めている』。いままでブログや拙著に無数に書いてきた特徴です。すなわち、「~の~な政策を支持する」ではなく、右か、左かの、ある種の踏み絵のような分け方から、アイデンティティーを求める人が多すぎます。この現象について、いままで表現は何度も変わってきましたが、最近は「陣営論理」という言葉が一般的になりました。政治のせいでそうなったのでしょうか。そういう側面もあるかもしれません。しかし、私は、世論が、いわば大衆の感情が、それを作り上げたと思っています。でも、不思議なことに、あるいは「だからこそ」、『『『全員』』』がこう言っています。「疎通や配慮や話し合いや協力や共同体意識が必要だ」。そう言わないと、相手側に先に言われると、自分側に不利だと思っているからでしょうか。そうなのかどうかは、記事の言う通り、『今回の問題』が根本的に解決できるのかどうかを見れば、分かることでしょう。以下、<<~>>が引用部分です。引用部分に「87年体制」という言葉が出てきますが、これは大統領直接選挙復活、5年単任制になった憲法(1987年改憲)のことです。確か9回目の改憲でしたが、それから改憲はありませんでした。

 

<<・・今回の問題は、単に87年体制が古くなったという意味ではない。もうこの国の国家運営方式の全般的な改編が必要だということだ。そして、政治・政党・市民社会文化の大革新が必要だということだ。非常戒厳令は大統領個人の認識と判断によるものだったが、この戒厳令が出てくるまでの状況、戒厳令事態後の政党・政治家の対応は、単に大統領を弾劾して新しい大統領を選ぶだけで、この問題が終わるわけではないと物語っている・・・・我々の社会の対立要素は多く根深いものであるが、朝鮮時代の党派争い、分裂の姿にそのまま戻っているようだ。

民主主義は、節制、包容、妥協の文化なしにはうまく機能しにくい。内閣制、大統領制など同じ民主主義制度でも国によって異なる形で機能している。同じ大統領制で、同じく政治の問題が指摘されている米国でも、30年間議会で表決された約3000件を分析した研究によると、民主党と共和党が超党派的な合意に到達した事例は、国内政策で63%、国際政策で76%だったという。我が国は、同じ政党が、自分が与党だったときに推進していた政策でも、野党になれば反対する。価値のための政治ではなく、相手をたおすための政治をしているのだ。この問題をなんとかしないかぎり、私帯は今回の事態を克服したとは言えないだろう。

 

制度の変化も必要だ。権力構造、選挙制度、政党運営制度すべて、これを契機に政治に新しい力、妥協と協力の伝統が定着する制度的な基盤を模索しなければいけない。しかし制度だけでなんとかなるわけでもない・・・・憲法裁判所の弾劾審判の結果は、明らかだと思われる。弾劾が憲法裁判所によって認められれば、より大きな混乱が訪れるだろう。手続きにおいての正当性を守りながら、最大限スピードを出し、国政の空白、不確実性の期間を減らす必要がある。その後の大統領選挙を、対立がメインにならないようにすることが重要だ。大統領選挙の候補は、選挙の過程で国政運営システム、国家ガバナンス構造改編、政治文化革新に対する本人の意志と共に、明確なビジョンを提示しながら競い合うことを願う。

大統領選挙前の改憲は、時間的にも難しく、大統領選挙と改憲内容についても議論もあるので望ましくない。しかし、改憲はもう先延ばしできない国家的課題であり、大統領候補は改憲に関して覆せない約束とスケジュールを提示しなければいけない。人、制度、やり方すべてが関わっている今回の政局を解決するうえで最も難しいのが、「やり方」の問題だ。手段、方法を問わずに相手を失敗させて、それで自分が勝利するという政治が、我々全員を失敗に導くことになったのだ・・・・政治制度を変えるだけでなく、政治のやり方、政党運営のやり方を変えてこそ、破局を避けることができることを、今回の事態は物語っている。野党の大統領選挙勝利は既成事実ではない。この時代、知恵と洞察力、包容と統合のリーダーシップを渇望しているのだ(中央日報)・・>>

 

ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。