半導体、バッテリーなどでも同じ趣旨の記事が目立ちますが、AI関連でも、「遅れを取ってはならない」という記事が増えてきました。いつどこから出てきた話かは分かりませんが、韓国では、「私たちがAI分野3大強国」ということになっています。政府の目標として「世界3位進入」というものがありますが、それについて、この話(3大)を意識してのものではないのか、とも言われています。もう3大なら3位には入っているということなのに、話が合わない気もしますが、まぁそこはともかく。そんな中、朝鮮日報が、AIはソブリン(主権)が重要であるという記事を載せました。これからは、多くの分野において、「AI強国なのかどうか」が、「核保有国なのかどうか」のような意味を持つ時代になる、という内容です。
無理して自国だけのものを作るより、大きな外国企業が作ったものを使えばいいじゃないか、と考える人もいるものの、記事は、そうではなく、AIこそ経済・安保の主権にかかわる問題になるだろう、としています。まだ「これからはITだよね、ところでITってどういう意味だろう」とされていた時代、米国以外の国々は、資金を使って競争するより、グーグルなど外国のビッグテックのものを使えばいいじゃないか、としていました。しかし、それこそ、米国以外の国々がIT関連で主導権を失う一つの原因になった、というのが朝鮮日報の見解です。レナパパは「ゲームのNPCが賢くなると嬉しいな」としか思っていませんが・・すごく壮大なテーマです。
日本の場合、AIで遅れているという話もありますが、そもそもAI関連の調査は『AIを積極的に活用しているのかどうか』による部分もあり(調査によりますが)、技術力だけで判断しているわけではありません。また米国や中国など明らかにリードしている国以外は、これといって大きな差はないともされています。去年12月にボストン・コンサルティング・グループが発表したAI成熟度グループでも、米国、中国、イギリス、シンガポール、カナダがパイオニアとされ(順位ではなく、グループ別です)、日本、台湾、韓国、オーストラリアなどは「安定的な競争グループ」に入っていました。ちなみにこの報告書、韓国では「3位じゃなかったのか!」という趣旨で結構記事が出ていました(いつものことですが記事内容そのものより、こういうところがオチだったりします)。
シェア的に、AI半導体用のHBMメモリーを生産しているのは高く評価できる部分ですが、メモリー分野での優位がいつまで続くか分からない状態だし、AIという言葉はかなり一般的に使われているものの、実際にAI分野で何をしているのか、そんな話はほとんどありません。引用部分にもありますが、テレビショッピングで売っている野菜栽培機も「AI搭載」となっているけど、具体的な動きにはなにがあるのか、と。実際、半導体もそうですが、韓国ではAI専門人材が「純流出(国内に入ってくる人より外国へ行く人が多い)」になっています。米国やEUはいうまでもなく、日本も2020年から純流入が続いています。ソース記事の朝鮮日報は、どことなく、半導体関連で出てくる多くの記事とまったく同じ趣旨にも見えます。リショアリング(企業が海外の拠点を国内に戻すこと)が進まない、富裕層が国外に流出しているなどのニュースとも、どことなく通じている気もします。以下、<<~>>で引用してみます。引用部分にはありませんが、記事の結論は、いつもどおり「急いで政府は補助金を」です。
<<・・最近、テック業界で人工知能(AI)という言葉が入らないものを見つけるのは難しい。家でレタスを育てる際に使う栽培機もAI搭載だと宣伝する。やりすぎな部分もあるだろうが、AIが産業の根本まで変えていることは明らかだ。 AI新技術のほとんどは、オープンAI・メタ・グーグル・バイドゥ(中国)・ミストラル(フランス)など少数のAIモデルを借用して開発したものだ。ビックテックの影響力はますます強くなっている。ビッグテックたちのAI競争は国家代理戦でもある。主要国は「ソブリン(主権)AI」と呼ばれる自国AIモデルの開発に尽力している。人材とお金が民間に集まる現代テック産業の特性上、企業が前面に出ているだけだ。米国は言うまでもなく、フランスのミストラル、日本のサカナAI、カナダのコヒール、ドイツのネクストクラウドなどが、政府の全面的な支援を受けて自国AIモデルを開発中だ。
「ソブリンAI」開発に全力を注ぐ理由は大きく二つある。まず経済的側面だ。 ソブリンAI開発を懐疑的な目で見る人も多いが、その理論は、数十兆円単位の投資をする米国との競争で勝算がないというものだ。ビックテックのAIモデルを持ってきて、改良するのが実用的だという意味だ。数字だけ覗くと反論しにくい。20年余り前、ヨーロッパがそうだった。ヤフー・グーグル・フェイスブックなど米国の検索プラットフォームとソーシャルメディアが世界を席巻していた際、ヨーロッパは資本・技術不足を理由に、競争しようとしなかった。以後の結果は誰もが分かる通りだ。
それでも、ネイバーのようなプラットフォームで耐え抜いた韓国は、イーコマース、ゲーム、ウェブトゥーンなどでIT環境を成長させた・・・・AI専門家たちが、これより重要に考える理由もある。軍事・安保的側面だ。米国が中国に最先端の半導体とAIモデルについて輸出関連措置を取り、「軍事転用の可能性」に言及するのは、単純な名分のためではない。 AIと国防分野の結合は、私たちが考えるよりもはるかに進展している(朝鮮日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・準新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・既刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。