クアッド外相会合でも、日米外相会議でも「朝鮮半島の非核化」の言及無し

トランプ政権関連で多くのニュースが出ていますが、特に韓国で話題になっているのは、北朝鮮の核問題に関するものです。文在寅政権の「運転者論(仲介者論)」が話題になっていたとき、たとえば米朝首脳会談などで盛り上がっていたときのことを、また期待しているのでしょうか。米国と北朝鮮は韓国を介して会談などを進めるべきだという主張が多く、少なくとも能動的に参加するようにしなければならない・・という主張が多いですが、いまのところ、米朝の間の直接対話になる可能性が大きいとされています。その論拠は、トランプ大統領が北朝鮮を「核保有国」とも解釈できる呼び方をしたことです(引用部分にもありますが『核能力がある』)。

もしこれが「保有」と認めたものなら、これはいままでの「朝鮮半島の非核化」とは明らかに別路線になります。東亜日報の記事によると、日米外相会議の発表文にも、クアッド外相会合においても、朝鮮半島非核化というフレーズは入らなかった、ということです。これは前回までの発表とはずいぶん異なるものだ、とも。記事は、これは非核化ではなく核の凍結を要求する形にするためのものではないのかとしています。日本にとっても外せない問題の、北朝鮮核問題。トランプ政権が具体的にどんな動きを見せるのか、気になるところです。すでに日本側にもなにかの路線を伝えているのではないか、そんな気もしますが。

 

この件で気になるのは、多くの韓国メディア、専門家たちが、「米朝直接会話」だけを問題にしている点です。今回の発言についても、なんで今までの路線を韓国と会談もせずに変えるのかという論調のものが多く、肝心の非核化そのものについてはあまり話題になっていません。個人的に、これは北朝鮮をまず会談に誘い出すための発言ではないのか、そんな気もします。今回のトランプ大統領の発言も「能力がある」だったし、米国防長官(候補者)も「核能力の保有」という、公式ではない用語を使いました。公式用語としての「核保有国」とは、まだ誰も言っていないことになります。「わざと」ではないでしょうか。どうだ、これについて話してみないか、と。この発言のあと、韓国与党では『また』核武装に関する主張が出ていますが、事実上それは難しいのではないか、という反論も出ています。これもまたいつものパターンです。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・ドナルド・トランプ米行政府2期発足日の後の21日(現地時間)、米ワシントンで開かれた「クアッド(Quad・米国、日本、オーストラリア、インド4者安保協議体)」外交長官会議の共同声明で「朝鮮半島非核化」のフレーズが消えた。昨年を含め、ジョー・バイデン政権時代、クワッド共同声明で「朝鮮半島の完全な非核化」が着実に入っていたのとは対照的だ。トランプ大統領就任後に開かれた初のクワッド会議でこの表現が消え、トランプ2期政権が対北朝鮮政策の焦点を「非核化」ではなく「核軍縮および凍結」などに合わせているという懸念が提起される。今回のクワッド会議後、米国国務省が公開した共同声明でも、北朝鮮に対する言及自体はなかった。

トランプ大統領は就任当日の20日、金正恩北朝鮮国務委員長を置いて「核能力(nuclear power)がある」と話し、事実上北朝鮮の核能力を認めたのではないかという懸念が提起された。このような状況でクワッド共同声明でも北朝鮮の非核化というフレーズが消え、トランプ2期政権が北朝鮮の核能力を認める現実論に基づいて核軍縮および凍結を目標とする「スモール・ディール」に焦点を合わせるのではないか、という観測が出てくる。

 

特に今回のクワッド共同声明の分量は2つの段落に過ぎなかった。昨年7月、日本の東京で開かれたクワッド外交長官会議(24段落)より分量が大幅に減った。また昨年の声明は、一つの段落を北朝鮮関連内容にしたという点でも、今回と異なる。当時の声明では「安保理決議により、朝鮮半島の完全な非核化に対する私たちの公約を再確認する」とし、「朝鮮半島の完全な非核化」を追求することを明らかにした。新型コロナの余波でオンライン会議になっていた2021年3月、クワッド首脳会議は「国連安保理決議による北朝鮮の完全な非核化に専念する」として「北朝鮮非核化」という表現を直接使用した。通常「北朝鮮非核化」は「朝鮮半島非核化」より強硬な文句とされる。北朝鮮に完全に核を放棄するよう促すという意味だからだ。

しかし、トランプ2期行政府の発足翌日に開かれた今回の会議で「非核化」のフレーズが消え、トランプ2期行政府の気流が「北朝鮮の核能力が高度化しただけに核保有を事実上認めなければならない」という方に振り返っているという懸念が提起される。同日、マルコ・ルビオ新任米国国務長官と岩屋毅日本外相が会談をした後に公開した発表文でも、「北朝鮮とロシアの政治・安保同盟を懸念する意見を交換した」という内容だけを盛り込んだ。北朝鮮とロシアの軍事密着だけを懸念するという意味に解釈される余地がある(東亜日報)・・>>

 

この件だけでもありませんが、トランプ時代、どんな流れになっていくのか。気になることが多すぎます。ちなみに、ルビオ長官は「北朝鮮の『完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄(CVID)』を達成するのは可能だと思うのか」という趣旨の質問に、「より広範に対北朝鮮政策を考えなければならない」と答えたことがあります。非核化に焦点を合わせた既存の北朝鮮政策を修正することもできるという意味を示したという解釈が出ている。ピート・ヘグセス米国防長官候補者も、「(北朝鮮は)nuclear power(核能力)を持っている」と話したことがあります。これもまた、核保有国と認めたことになる、と話題になりました。ただ、(引用部分にはありませんが記事によると)これは公式用語である「核保有国(nuclear weapon state)」ではない、との指摘もあります。ただの表現の仕方か、それとも『わざと』間違えたのか。

 

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