これもまた、ある意味、「ベンチマーク」系の主張とも言えますが・・去年夏あたりから、日本がLNGハブを目指すというニュースが出ています。日本でもあまり耳にしない話ですが、何のハブなのか。あくまでいくつかの記事(ソース記事とは別のものもいくつか含めて)の要約になりますが、日本が米国からLNGを購入し、その分を台湾や東南アジアの一部の国に販売、そのための外国のターミナル建設などに投資する、いわば『LNG産出国ではないけど、LNGハブになる』ことを目指している、というのです。それは、中国の影響力を牽制する効果もあり、日本のLNG輸入を安定させる(日本のLNG輸入がうまくいかなかった場合、複数の国に影響を及ぼすことになってしまうため、日本にLNGを輸出する国としては慎重な対応が求められる)エネルギー安保とも関連性がある、という内容も。
LNGの場合、「どこの国への輸出なのか」が決まっています。この規定によると、たとえばB国がA国からLNGを買った場合、そのLNGを、B国はC国に売ることはできません。トランプ政権になってから、米国が輸出するLNGにおいて、この制限が解除された、とのことでして。日本の三井商船など大手海運企業が、LNG運搬船を47%拡充する計画だとかそんなニュースもあったので、繋がっている気もします。どうやら韓国も似たようなことを目指しており、実際、関連ターミナルなどがあるものの、地域発電所に供給するためのものにすぎず、中央日報(24日)によると、日本のように「LNGハブ」を目指すためのプロジェクトを進めている、とのことです。記事の題も「日韓エネルギー競争」だったりします。
でも、内容的には、韓国の場合まだ競い合えるようなインフラはできていないようです。実際、いまのところうまくは行ってないようですし、そもそも、輸入するといっても、そのためのインフラ整備にはかなりの資金が必要でしょう。この話、LNGに限られたものではありますが、盧武鉉大統領の各種「ハブ」関連構想(ハブという言葉がこのときから有名になりました)、李明博大統領の海外資源確保などとも繋がっている、またはその結果を表す内容という見方もできるでしょう。それに、記事に明記はされている内容ではなく、私の考えすぎかもしれませんが・・日本の投資で建設された東南アジア地域の関連ターミナルを、韓国の輸出のために使うようにする・・そんなところかもしれません。また、韓国経済の2024年8月7日の記事が同じ内容を扱っているので、まとめて紹介したいと思います。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・トランプ米大統領は20日に就任するとすぐに、米国産液化天然ガス(LNG)の新規輸出許可を凍結した前任者の措置を解除した。今回の行政命令で米エネルギー部がこれまで承認を保留した5件のLNG輸出が近いうちに再開されるだろう。ちょうど1年前、バイデン前大統領は自由貿易協定(FTA)域外国家にLNGを輸出する新規プロジェクト許可を中断した。米国はすでに世界1位のLNG輸出国だ。2023年、世界市場シェア22%で・・・・今回のような友好的な環境づくりで、2024年8300万トン規模の米国LNG輸出能力を2030年までに2倍以上にし、その立地を強化するという。さらに、最近の平年より暖かい冬の天候によって発生した天然ガスの過剰供給も一部解消され、米国内のシェールガスの生産が促進される可能性もある・・
・・しかも米国産LNGは、オーストラリアやカタール産などとは異なり、契約条件がゆるいという長所がある。通常、LNG輸出プロジェクトには数十兆ウォン以上の大規模な資本調達が必要だ。これに債権団は安定的な収益保障のため、輸出契約に条件をつける。代表的には、LNGの最終目的地(港)を特定する「目的地条項」がある。この条項のため、買収者は必ず最終目的地まで行って荷役しなければならず、原油など他の原材料と異なり、中間地で中継取引をすることができない。米国産LNGは通常、このような条項がない・・
・・日本は、また別の理由で米国産LNGに注目している。目的地制限条項がない米国産LNGを大量に導入、最近天然ガス消費が急速に増加している東南アジアや台湾などに再販で差益を残すことになる。日本はすでに世界最大のLNG輸入インフラも保有中であり、世界2位のLNG輸入国という地位を利用した価格交渉力も、相当なものだ。近いうちに東アジアのLNG取引ハブとして浮上する可能性がある。事実、われわれも「LNGハブ」という名目で蔚山や麗水などに構築事業をしてきた。実は、それらは周辺発電所などに自家消費の天然ガスを供給するターミナルに過ぎない。今、蔚山に「北東アジアエネルギーハブ」事業構想が進行中だ。日本の事例を参照して、米国産LNGベースの取引ハブ構築を試みてみるのはどうだろうか(中央日報)・・>>
<<・・IEEFA(※エネルギー経済・財務分析研究所)によると、日本は東京ガス、大阪ガス、関西電力が主導し、台湾をはじめ、バングラデシュ、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなどで30以上のガス関連プロジェクトに関わっている。持分を取得したり、LNGを供給することにしている・・・・ロイター通信は「国際ガス連盟のデータを基に計算したことによると、2019年以降現在まで日本企業はバングラデシュ、インドネシア、フィリピンに合計1620万トン容量の新規LNG輸入ターミナルに投資した」と伝えた。日本の投資のおかげで、ベトナムとインドにも来る2030年までに年間1300万トン容量のLNG輸入ターミナルが追加建設される予定だ・・
・・2022年基準、日本の第3国LNG販売量(再輸出量)は2018年比2倍以上増加し、3157万トンに増えた。このように、他国から輸入したLNGを国内消費せずに第3国に転換する外部取引量は、2018年1497万トンから2019年2818万トン、2020年3394万トン、2021年3811万トン、2022年3157万トンに増えた・・・・IEEFAのクリストファー・ドルマンLNG専門家は「、来る2030年なら日本が結ぶLNG輸入契約の60%に目的地制限がなくなるだろう」とし「日本のLNG取引能力が成長するという意味だ」と話した。日本はLNG取引市場で中国と競争構図を形成している。中国はLNG輸入規模の面で日本と1、2位を競っている。ペトロチャイナによると、中国のLNG輸入量は今年前年比12%増加し、8000万トンに達すると予想される。中国も日本のようにこれを第3国に再輸出する取引量を増やしている(韓国経済、2024年8月7日)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・準新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・既刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。