システムの転換点か、それとも一時的な現象か・・韓国、マンションの購入価格が売買価格を上回る

おちついてきいてください。韓国のアパート(日本で言うマンションなども含めて)の分譲価格(いわば購入価格)が、平均売買価格を上回りました。凄いことです(演出)・・・いや、まだ閉じないでください。一応説明しますので。簡単に言えば、「買ったときの価格が、売ったときの価格より高い(売っても差益が残せなかった)」ということです。日本など他の国の感覚からすると「いや、そんなことも普通にあるのでしょう」と思われるかもしれませんが、韓国でお金が動くシステムにおいて、これはすごく異例なことです。実際、このような現象が出てきたのは、15年ぶりのことです。ソウル含め、すべての地域でも同じでした。

もちろん平均ですし、1年だけのデータですので、一時的な現象だとも言えます。しかし、もしこの流れが続くなら、これは韓国経済の「お金の流れ」において、大きな転換点になるでしょう。2000年代になってから、韓国の経済成長は「家計債務」と「中国特需」によるものでした。一つ前のエントリーで紹介したような案件も、もちろん家計債務・自営業者債務と関連しているでしょうけど、家計債務の多くは「マンションを買う」ことに使われており、それは「マンションは値上がりするに決まっている」という信念から来る現象でもあります。収益の4割近くを返済に使ってでもマンションを買う理由も、そこにあります。

 

前に「韓国では、抽選なしでマンションが買えること自体が珍しい」とか、「未分譲が残っているだけでも、そのマンション団地の『投資先』としてのイメージはものすごい影響を受ける」などの話を書いたことがありますが、この「分譲価格が実取引よりやすい(売れば差益が得られる)」というのも、韓国では当たり前とされてきました。そうならない不動産なんてある方が珍しい、と。あくまで認識の話ですが。その信念とは異なる結果が、データとして示されたわけです。マンションを買っておけばとりあえず売るときに差益が残せるという信念が、少しずつ変わってしまう可能性が出てきたわけです。ソース記事の京郷新聞は、記事の題を「買っておけば値上がりする時代は終わったのか」にしていますが、これがなかなか的確な表現だと言えるでしょう。

 

ただし、タイトルにも書きましたが、一時的な現象である可能性もあります。流れが分かるまでは、まだ時間が必要でしょう。とはいえ、「マンション『様』」が他国より重要な意味を持つ韓国。少子高齢化の影響とともに、興味深いデータなのは事実です。以下、<<~>>で引用してみます・・が、なんかすごく読みづらい表現が目立ちます。以下、基本的に、「分譲価」が「実際の取引される価格」より高くなった(単純対比だが、差益が残せなくなった)という話です。すべての文章で「分譲価格」が先に来るようにしてあるので、取引価格を「下回る」なら、売るときに得をするという意味です。「マイナス」「プラス」表現が出てきますが、これも「分譲価格から実取引価格を引いた」ものなので、「マイナス」が得をした意味になります。

 

<<・・昨年、全国新築マンションの平均分譲価格が、15年ぶりに平均売買価格を上回った。現政権に入って「分譲価上限制」が事実上なくなったことに加え、高金利、及び、資材費や人件費などが上がったことで、分譲価格が上昇した影響だ。「不動産R114」は、全国平均分譲価格が2009年以降15年ぶりに平均実取引価格を上回ったと、26日に報じた。このような逆転現象は全国17の市・道のすべてで起こった。ソウルの分譲価格が実取引価格を上回ったのは、2018年以降6年ぶりだ。

分譲価格は、「分譲価格上限制」の解除に加え、エンデミック以後本格化した金利引き上げ、不動産プロジェクトファイナンシング(PF)問題の影響による調達金利、及び、資材費・人件費などが伴い上昇したことで、大幅に上がった。一方、この期間のマンション取引価格は分譲価格に比べて上昇幅が少なかったわけだ。ソウルを基準に、2018年には分譲価格が取引価格対比「3.3㎡当たり」50万ウォン程度上回っていたが、政府が強力な分譲価格規制を施行した2019年に入って、分譲価格が実取引価格を440万ウォン下回った。

 

「分譲価格から売買価格を引いた」偏差は、2020年にマイナス1012万ウォン、2021年マイナス1455万ウォンで、3年連続大きくなった。しかし工事費の急騰が本格化した2022年から偏差がマイナス643万ウォン、2023年にはマイナス504万ウォンに減少し、昨年、分譲価格が取引価格より高くなったのだ(※3.3㎡当たりプラス520万ウォン)。

昨年11月に分譲を進めたソウルのノウォン区「ソウルウォンアイパーク」の専用84㎡分譲価格は14億ウォンで、高価すぎるという論議が生じた。立地条件が良いことなどを考慮しても、周辺相場に比べて過度に高いということだった。地方の分譲価格・取引価格の逆転幅は、より大きい。土地費を除く建築費は、全国が同様の水準に上昇した点を勘案すると、地方が受ける分譲価格の上昇幅はさらに大きくなる。3.3㎡当たりの分譲価格と取引価格の偏差を見れば、済州が1245万ウォンで最も大きかった。パクウォンガプKB国民銀行不動産首席専門委員は「分譲価格が上昇すれば地方など相対的に人気のない地域は、収容できないだろう」、「これは未分譲が増えることになる」と説明した(京郷新聞)・・>>

 

ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。