本ブログでもバッテリー関連で同じエントリーを書いたりしましたが、「中国が対米輸出のため、地理的に近く、また米国とFTAを結んでいる韓国を『迂回路』として利用している」という話は、ずいぶん前から指摘されてきました。でも、半導体(メモリー)もバッテリーも、「私たちには超技術があるから大丈夫だ」という主張のほうが強く、各メディアもそういう主張をメインにしてきました。そしてこれは、「米国も中国も、『超技術』を持つ私たちには、強く出ることができない」という主張にも繋がっていました。文政権のときによく出ていた、「だから、なにもしなくても問題ない(わざわざ外交的な努力をしなくても、問題が起きることはない)」という主張も、この技術力が論拠でした。
しかし、最近になっては、「政府は急いで補助金を」という主張が多く、どちらかというと「日本と協力すれば、米国も強く出られないだろう」というふうになってきました。あくまで私の感覚的な話で、どんな記事が多いのか数えてみたわけではありませんが。そんな中、国民日報(30日)が、「私たちが中国の下請け企業になっている」という記事を載せました。いままでは「核心技術は私たちが持っていて、それを使って中国が製品を作る」パターンだったけど、最近は核心技術も、そして原料も中国のものを使う企業が多く、その結果、中国が米国へものを輸出するための、実質的な迂回路になっているというのです。一言で、競争力が弱くなった、と。もっと話題になってもよさそうですが、意外と少ない趣旨の記事です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・グローバル競争力を自負していた国内の各製造業企業が、中国企業の核心技術や原料を使って生産した製品を「メイドインコリア」にして輸出する、いわゆる「タグ替え(※製品の表記だけ自社のものに変えるという意味)」通路になってしまった。業況不振の影響で、ほぼ耐えられなくなった状況で、中国資本の誘惑を振りきることができないでいるのだ。中国企業は米国関税の壁を迂回でき、韓国企業は休んでいる工場を回すことができ、該当企業にはウィン・ウィン戦略だと言える。しかし、中国の『迂回輸出基地化』がこのまま本格化していけば、関税を掲げている米国ドナルド・トランプ2期政権との通常摩擦に発展する可能性があるという懸念が出ている・・
・・(※事例として、韓国の某大企業石油化学企業と中国Wanhuaケミカルの合作法人設立のことを書いた後)ワンファケミカルが得る利益は、迂回輸出で確保できることだ。中国石油化学企業は長年にわたって設備投資を大幅に増やしたが、中国の景気が低迷して、いまは供給過剰になっている。内需で消化できない物量を輸出で解決しなければならない。このような状況で、中国から来るすべての輸入品に最大60%の普遍関税を賦課すると公言したトランプ大統領の復帰は、大きな負担だ。より強力な関税政策と迂回輸入防止措置が予想されるだけに、自社の石油化学製品が米国の関税対象になる可能性に備えて安全な迂回輸出路が必要である・・・・不況が続いている他の石油化学関連大企業も、この会社の事例を注視し、タク替えの推進を考えていることも分かった・・
・・このような、米国の関税を避けるための中国企業の戦略的第三国進出の試みは、業種を選ばず国内産業全般で行われている。ルノーグループは中国吉利自動車とコンソーシアムを結んで「ポルスター4」をルノーコリア釜山工場で委託生産することにした。国内の主要ロボット企業である某社は、自社生産力量なしで、付加価値の核心部品を中国企業から取り込み、国内工場で組立工程だけを経て輸出している。中国が韓国を迂回路にしているのは、米国との貿易障壁が低く、関税回避の面で有利だからだ。
韓国は米国と自由貿易協定(FTA)を締結しており、対米貿易環境が造成されている市場だ。ある反ダンピング専門弁護士は、「中国企業のタク替えは、これまでは東南アジアで頻繁に行われてきた」とし「米国がベトナム、カンボジアなど東南アジア諸国を貿易関連措置の対象として見るようになって、もう一つの近い市場である韓国に目を向けたものと見られる」と話した。韓国市場で中国のタグ替えが試みが本格化すれば、今後中国の迂回進出路を遮断しようとするトランプ政権との通常摩擦で広がる可能性があるという懸念が出ている(国民日報)・・>>
懸念が出ているもなにも、相応の外交的措置を取らない限り、ほぼ確実にそうなるでしょう。記事は、米国への迂回輸出において最も高い比重を占める「第3国での組立・完成」は、その第3国で行われる工程がどんなものなのか、たとえば些細なものなのか、核心的な重要工程なのか、が一つの判断基準になるとしながら、上記の流れがなさに「中国企業の技術と部品が、完成製品の付加価値において高い比重を占めるようになる」パターンだとしています。たとえば、先の石油化学某大企業とワンファケミカルの合作法人の話では、「硬化剤原料が現在米国輸入時の関税対象になっているうえに、ワンファケミカルに対する技術依存度が高い」という点などで、合作法人であっても関税の対象になる可能性が高い、と。確か、同じ話がバッテリー関連でも結構出ています。
ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・準新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・既刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。