今回の、石破茂総理とドナルド・トランプ大統領の日米首脳会談について、ほぼすべての韓国メディアは「『アブ』外交」と書いています。おもねるという意味の阿付の韓国語読みです。アブ外交、アブテクニック、さらにはアブ芸術と書いたメディアもあります。日本語版とはちょっとニュアンスが異なっており、たとえば中央日報の記事も、日本語版は追従の技術と書いていますが、韓国語版はアブとなっています。別に追従と書いても意味は通じますが、書き方のニュアンスが、日本語版ではずいぶんマイルドになっていると言えるでしょう。
しかし、ごく一部ではありますが、「そういう見方しかできないのか」と指摘する記事も(書いた人によるので、「メディア」ではなく「記事」としたほうがいいでしょう)あります。毎日経済(10日)の記事がその一つで、今回の会談での日本の対応はもっと肯定的に見られるべきものだとしています。国民を守るためではなかったのか、というのです。特に、石破総理がトランプ大統領にプレゼントした金の兜は、「日本ならではの心のこもった」側面を象徴しているものだとしています。SHOGUNや大谷選手のことで、米国ではこの兜に親しみを感じる人が多く、「トランプ大統領より孫さんのほうが喜ぶのではないか」という話もあるけど、それは確かにそうだ、とも。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・(※安倍元総理の頃)日本はすべてのネットワークを動員して、当時、大統領に当選したトランプ氏と、米国ニューヨークで会い、その翌年2月に米国ホワイトハウスで開かれた初の首脳会談では投資と雇用という大きなプレゼントを贈った。経済的に見ればマイナスだったが、当時会談を導いた故・安倍晋三首相は笑顔で日本行きの飛行機に乗った。懸念されていた為替レートや貿易不均衡、防衛費分担などの話がトランプ口から出なかったためだ・・・・今回、トランプ氏の再選後、初の日米首脳会談を務めることになった石破茂首相の状況は、おもわしくなかった・・・・発言が一貫しないトランプと、自分の話をするのが好きな石破では、まったく合わないとされていた。いわゆる「化学反応」があわないと見られていた。首脳会談を控えて、安倍元総理を懐かしむ人々が多かったのもそのためだ。
だが、石破総理は今回の日米首脳会談で、3つの知恵袋でトランプ大統領の心をひきつけた。一つは、警戒を解除して飛び込み、相手を賞賛した。これは本人が批判していた安倍元首相のやり方と同じものだった・・・・二つ目は、徹底した準備だ。石破茂総理はトランプ氏が当選した昨年11月から、チームを立ち上げ、首脳会談の準備に乗り出した。予想できるすべての質問に、相手が一番喜びそうな答えを用意した。トランプ大統領とすでに会っていた、安倍昭恵女史や孫正義ソフトバンクグループ会長、トランプ時代の駐米日本大使など、専門家たちに会い、相手の好みに対する小さな部分までもアドバイスを聞いた。
安倍元首相時代、トランプ大統領から「小さな首相」と呼ばれた外務省幹部に通訳を任せた。幹部クラスが首脳会談で通訳を引き受けるのは、日本では珍しいことだ。安倍の声より通訳の声のほうがなじみがあることを利用したのだ。3つ目は、日本特有のお客様をおもてなしする文化の心を込めた。石破総理はトランプ大統領が想像していた以上の数字で投資金額を明らかにし、これを通じて彼を楽しませた。 「もっとやってほしい」という彼の要求には、具体的に返事はしなかったが、明るい笑いで可能性を示した・・
・・プレゼントだった金の侍兜は、象徴的だった。プレゼントの準備はトランプ当選直後から始まった。輝きながらも実際に使うこともできる、トランプの好みを全て反映したものだ。ドラマ「SHOGUN」とMLB野球選手大谷翔平のホームランセレモニーで、侍の兜はアメリカ人にとても親しみやすい。日本の外部省幹部が「トランプより、孫がもっと喜ぶだろう」と言及したのは、そのとおりだ。今回の日米首脳会談に対して韓国側は「アブ外交」で評価下げする雰囲気が多いと見える。国民を守るために安保と経済をトレードしたことを、単にアブとだけ言っていいのだろうか(毎日経済)・・>>
よくわからない部分もあります(いつものことですが)。投資金額を大きくしたのが「おもてなし」ではないでしょう。また、安保と経済(経済というより投資金額)をトレードしたというけど、どちらも「方向性としては、いままでもやっていたこと」だから別にトレードでもない気がします。投資だから、それに起因するリターンがどれだけ得られるのか、にかかっているのでしょう。とはいえ、保守系の大手メディアも例外なくアブアブアブブブブとしている中、かなり珍しい記事です。9日にも書いたばかりですが、個人的に今回の日米首脳会談は「心配していたが、思ったよりよかった」と見ています。他の政策でも、同じく「心配してたが、思ったよりよかった」と思えるようになるといいですが・・
ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・準新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・既刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。