「韓国は米国にとって、AI、半導体など先端製造業を総合的に確保できた唯一の同盟国」

まず、ありがとうございます。おかげさまで、宿願だった「THE NEW KOREA」の訳が完成し、3月2日に扶桑社から発売されることになりました。最後の『お知らせ』で改めてご紹介します。で、本題のほうですが、中央日報(12日)に「不動産・クレジットカードから、AIへ」という趣旨の記事(時評)があったので、エントリーしてみます。ある意味、これはこれで、おニューなコリアになろう、という話です。で、記事は韓国を「AI、半導体、造船、ディスプレイなど先端製造業ポートフォリオを持つ、米国の唯一の同盟国だとしながら、いままでの不動産(記事内容からして「債務」)中心の発展から、AIなどを中心にした経済に発展していく必要がある、としています。

で、AIなど先端ポートフォリオでやっていこうという部分は、方向性として十分に成立すると思いますが、いまのところ何一つ具体的なものは見えていません。そこは「AI(アイ)はあるのか」で変わる・・かどうかはおいといて、個人的に説得力があると思ったのは、「不動産」に関する部分です。2003年あたりから始まった、いわゆるカード大乱に関する内容も出てきて、それから「いままでは、債務中心の経済発展をしてきたが、それは持続できるものではなかった」という内容になりますが、この部分だけは本当にそのとおりだとしか思えません。家計債務など、もうとんでもない金額まで来ていますから。Aポー(略)より、この部分のほうがとてもストレートだと思われます。拙著にも似たような題の本がありますが。以下、<<~>>で引用してみます。




<<・・1990年代後半の「IMF入り」以後、政府は内需景気の活性化のためにクレジットカード使用の活性化政策を推進した。これは、人為的景気浮揚の一つの形態で、家計債務を増やして消費を促進する方式だった。月70万ウォンだったローン限度が廃止され、クレジットカード使用額に対する所得控除制度が導入された。クレジットカードの利用実績は1998年63.5兆ウォンから2002年622.9兆ウォンに、現金ローンは32.7兆ウォンから357.7兆ウォンに4年ぶりに約10倍に増加した。クレジットカードと家計ローンを通じた内需の増進で、2002年7%台の高い経済成長率を記録した。しかし、過剰なローンは、債務不履者の急増という副作用をもたらし、2003年、経済は深い内需不振におちいり、成長率が3.1%に下落した。2004年4月、経済活動人口6人のうちの1人である382万人以上が債務不履行者となった。イギリスのエコノミスト紙は、この現象を「韓国のプラスチック(クレカ)バブル」と呼んだ。持続可能でない債務は、内需沈滞を必然的に伴うことが示された、代表的な事例である・・

 

・・我々は20年間、産業構造革新ではなく、家計債務拡大を通じた不動産景気浮揚と、建設・SOC(※social overhead capital、社会資本)投資という簡単な解決法を主に頼ってきた。例えば、韓国の大きさは米国テキサス州の6分の1程度であるが、仁川、金浦、金海、済州、清州、大邱、武安、襄陽の8ヶ所に国際空港がある。面積比率通りなら、テキサスに48の国際空港が存在することになる。でも、実際はテキサス州には国際空港は4つしかない。国際空港は、地方SOCの過剰投資を示す、氷山の一角であろう・・・・これまで簡単な解決策で対応してきた結果、今の私たちが受け継いだ遺産は、次の2つにまとめることができる。まず、不動産市場の歪み。これは、ソウルのマンションが世界最高水準のPIR(所得に対する住宅価格比率)、世界最高水準の「仮処分所得に対比家計債務比率」、地方未分譲マンションの累積などで確認できる(※前にも何度か書きましたが、韓国ではマンション団地などの未分譲数が数万を超えるだけでも大きなニュースになります。現在、地方で確認できた数だけ7万を超えているとのことです)。




次に、良質の雇用が足りないこと。これは、小・中・高等学校の過度な私教育費、30%を超える修能(※大学入試テスト)浪人比重、医科大学だけを目指す現象、遅くなる初就職年齢と、これによる出生率の低下、生計型自営業の過剰供給、首都圏への人口集中加速化、格差の深化という複合的社会問題として現れる。この2つの遺産がもたらした、より根本的な問題は、社会全体の投機心理蔓延、正直な労働の価値下落、そしてこれによる社会・理念の対立だ。

幸いなことに、私たちが進む道は明らかだ。まず、家計ローンを原則として徹底的に管理すること。地方マンションでも例外を置いてはいけない。第二に、政府は先端産業のグローバル競争力確保のための制度と環境づくりに注力すること。良質の雇用は民間企業が創出するからだ・・・・韓国は、半導体、自動車、造船、ディスプレイ、ロボット、防衛産業というテック製造業ポートフォリオを総合的に確保した、唯一の米国の同盟国という点で、チャンスである。 AIが搭載された製品の場合、同盟国のものを選ぶしかないからだ。産業パラダイムとグローバル・バリューチェーンが同時に動くこの決定的時期に、必ず代替不可能な地位を確保しなければならない。365日徹夜をしても、時間が足りないだろう(中央日報)・・>>

「唯一」のことは、ま、これもおいといて・・「債務を原則通りに管理する」というのは、確かに必要なことではありますが、それができるなら、すでに20年前にとっくにやっているはずではないのか・・そんな気もします。明日は、1日休みをいただきます。また、どこかでひな人形を見てこようかと思っています。次の更新は、23日(日曜日)のいつもの時間になります。




 

ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
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  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。