韓国の経済関連ニュースにおいて、「未分譲」住宅というのはユニークな意味を持ちます。完成してもすべて売れるとは限らないものですから、普通に一定数の未分譲住宅というのは存在するし、だから、買いたい時に買うこともできるわけですが(シンシアリーも日本に移住するとき、そうでした)・・韓国では、特にマンションが売れ残ることは、まずありえないとされます。そもそも投資目的で家を買う人がほとんどなので、「これから値上がりするに決まっている」マンションが売れ残るなんてありえないからです。特に2000年代になってからは。工事が始まる完売になるのが、いままでの「普通」でした。一部が未分譲のまま残っていると、そのマンション団地の価格はさらに下がります。「未分譲があるなんて!」「あ、あそこは値上がりしないとでもいうのか?!」と思われるからです。前にも「未分譲の数が5万だけでも非常事態とされる」「政府はそのラインを6万戸と見ている」などの話を紹介したことがあります。そういうことです。
そんな中、2023年あたりから、『また』政府が未分譲マンションを政府が買い取るべきだという主張がありました。実は2008年頃、韓国土地住宅公社(LH)が未分譲マンションを買い取ったことがあります。ソース記事は「当時、7000戸あたりを買い取った」としていますが、もっと多かったという指摘もあります。それでも国民日報(引用はしませんが2023年2月1日)によると、政府は応じるつもりはないとしている、とのことでした・・結局、地方を中心に未分譲マンションの数が7万を超え、今回、LHが「竣工後未分譲」に限って3000戸を買い取ることにしました。分譲価格の約70%で買い取るのではないか、との話もあります。朝鮮日報(朝鮮BIZ、19日)など、普通は政府の政策に肯定的な見方を示す事が多い右側のメディアも、「これは解決策にならない」と指摘しています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・土地住宅公社(LH)が、竣工後に売れないでいる地方の未分譲マンションを抱えることにした中で、住宅購入時の価格と品質・立地などを多角的に考慮しなければならないという指摘が出ている。品質・ロケーション・分譲価格問題で市場で失敗した住宅を政府財源で買い入れるのは、やはり建設会社のモラルをに関する問題だ、ということだ。国土交通部は19日、「地域建設景気補完案」を通じてLHが地方の竣工後未分譲マンション3000世帯を直接買い入れると明らかにした。LHは既存に編成された買取賃貸予算3000億ウォンを活用して地方の竣工後未分譲マンションを買い入れる。買い入れ後には「心強い貸切住宅」という制度を活用する。貸切住宅にして、相場の90%価格のジョンセ(※家を借りる制度)で最大8年間居住できる賃貸制度であり・・
・・国土部は需要に応じて必要であれば関係省庁と協議して予算を追加確保する方針だ。LHが竣工後未分譲マンションの直接購入に乗り出すのは、2010年以来15年ぶりだ。 LHは2008~2010年竣工後、未分譲マンション7058世帯を買い入れた。当時、買い価格は分譲価格の70%以下だった。LHが地方竣工後未分譲住宅問題の解決者として出てきたことを、地方景気を活かすための避けられない決定だという評価が出ている。キム・ヒョソンNH農協銀行不動産首席専門委員は「竣工後未分譲が増加する一部地域は、長期化すれば建設会社の困難と、地域スラム化にもつながるため、LH住宅買い入れなどの公共の介入は避けられないようだ」とした・・
・・それにもかかわらず、LHが地方竣工後未分譲住宅の買い入れ時に、品質・ロケーション・分譲価格などを考慮しなければならないという指摘も提起される。品質・ロケーション・分譲家の側面で基準を満たさない場合、LHは市場で失敗した住宅を抱える状況となり、十分な賃貸需要を確保できなくなる。また、民間建設会社の利益だけを保障してやる格好となり、道徳的な問題を助長することもありえるという指摘だ。逆に、LHが地方竣工後未分譲マンションの中でも、今後不動産市場の回復で不動産価値の上昇を期待できる物量だけを確保すれば、優良賃貸住宅を低価格で買い取る機会になることもある。
イ・ウンヒョン大韓建設政策研究院研究委員は・・・・「公共の未分譲マンション買取は綿密な基準を適用して試みる必要があり、同時に品質・ロケーションに対する基準を設け、未分譲マンションに過度な恩恵にならないように選別的に買取をしなければならない」と付け加えた。ユソンジョン建国大学不動産学科教授も「未分譲というのは、分譲価格とロケーションなどが市場状況に合わないかったからだ」とし・・・・「該当物件、未分譲解消のための努力をちゃんとしているのかなどを考慮して。買い取り原則を立てなければならない」、「同時に、公共財政を投入して(未分譲住宅を買い入れること)事態がはたして正しいかという問題もある」と付け加えた(朝鮮日報)・・>>
ちなみに、未分譲というのは基本的に(そのマンションを販売する)会社側の申告を基準にしているので、「未分譲がある」とされて価格が下がることを懸念し、ちゃんと申告しない会社も多いと言われています。実際、2023年には「実際は10万戸超え説」もありました。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。