「中国が、対米輸出の迂回のために韓国に進出している」こと。本ブログでも「タグ替え」という言葉を紹介しながら、ソウル経済など一部のメディアの記事をピックアップしてきました。最近は大手とされるメディアからも似たような趣旨の記事が出ており、東亜日報(26日)にも同じ記事がありました。中国の対韓投資が最近の1年間で4倍になったことも、この「迂回」のためのものではないのか、という内容です。記事には、「A社」の事例が載っています。普通に米国の会社だと思われていた、半導体関連企業A社。ある日、米国商務省が安保上の理由でこの会社(の親企業)を指摘、関係者たちはびっくりした、とのことでして。実は中国資本による会社だったわけです。
先の「4倍」も、半導体、バッテリー、太陽光発電関連などに集中しています。これから成長する可能性が高い分野に投資したと見ることもできますが、すべて、米国が対中貿易において相応の措置を取っている分野でもあります。ハワード・ラトニック米国商務長官が韓国の経済使節団に「各社、10億ドルの投資」を条件にして話したという「ファスト・トラック(審査などを優先的に行う制度)」ですが、実はトランプ大統領も同じ話をしています。同盟国などの企業のためにファスト・トラックを用意する、と(22日、朝鮮日報など)。しかし、そのファストトラックには、中国など一部の国と「距離」を維持するという条件がありました。以下、東亜日報の記事から<<~>>で引用してみます。
<<・・先月、中国のある半導体メーカーは「韓国に対する大規模投資にリスクがあると判断する」とし、突然投資を中断する内容の公示を出した。同社の国内法人であるA社は昨年12月、中国軍の現代化に関与するなど米国の安全保障にリスクになるという理由で、米国商務省の140の懸念企業の一つとして登載された。それまで国内業界では、A社は米国シリコンバレーに本社を置く米国企業の韓国支社として知られていた・・・・実際は、中国法人の子会社で、事実上、中国資本として運営されていたのだ。国内のある半導体装備企業役員は「米国会社だと思っていたところ、突然中国軍関連会社だとか米国商務省のリストとか言われたわけだから、なにがなんだかわからなかった」とし「これまで、国内取引先がわからなくて、国内で事業する理由はなんだろう、と思っていた」と伝えた。業界では、A社が半導体装備を中国に搬出する役割をしたのではないかという疑問も提起されている・・
・・米国の対中関連措置がどんどん強くなる中、中国企業が韓国を迂回輸出入通路として活用する場合が増えている、という懸念が産業界から出ている。中国の韓国投資が1年ぶりに約4倍に増加したうえ、半導体、バッテリー、太陽光など米国が関連措置を設けている先端製造分野に集中したためだ。一部では、中国資本の韓国投資を審査しなければならないという主張も出ている(※10日にもお伝えしましたが、韓国の場合、日本のような関連資本の審査制度がまだありません)・・
・・25日、産業通商資源部によると、昨年中国の韓国投資申告金額は57億8593万ドルで、今までで最大を記録した。2023年の15億8049万ドルと比較すると、たった1年で約4倍近く増えた数値だ。特に半導体、バッテリー、太陽光などの分野で集中的な投資に乗り出している。電気・電子(19億7568万ドル)が最も多く、次に機械装備及び医療精密(8億1925万ドル)分野の投資が多かった。産業部関係者は「中国企業が韓国の海外輸出サプライチェーンに参加しようとする目的で、直接生産施設を建設している」と説明した。問題は、こうした企業が米国と輸出・輸入すれば、韓国に「輸出入の迂回路」というイメージが出来上がるという点だ。半導体は、米国の措置により中国が直接輸入できない先端製品や装備を持ち込むための迂回路として活用される可能性がある。先のA社の場合がまさにそうだ・・
・・中国は先に、東南アジアでも別途法人を立てて必要な半導体装備を購入した後、中国に送る方式を取って、論議になっていた。国連統計によると、2022年にマレーシアが3大半導体装備輸出国である米国、日本、オランダから買い入れた半導体装備(HSコード8486)金額は前年比7800億ウォンが増えた。同期間、マレーシアから中国に移った半導体装置も同様の金額である8400億ウォン増加した。マレーシアに入った半導体装備の多くが中国行きの迂回輸出であるという疑いが提起された背景だ。半導体業界関係者は「米国の対中措置が始まってから、マレーシアだけでなくシンガポール、ベトナムなど東南アジア諸国が半導体装備迂回輸入国として活用された」とし「最近、それが知られるようになって、韓国など他の国にも目を向けている雰囲気だ」と伝えた・・・・中国の陽極材(バッテリー核心素材)メーカーのB社は、最近、国内に1兆2000億ウォン規模の工場を建設するとし、契約書類を提出した。 B社は中国で韓国投資計画を発表する際、「韓国で製品を生産すれば米国とヨーロッパ市場で関税の恩恵を受けることができる」と強調していた(東亜日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。