米シンクタンク「トランプ政権の防衛ラインに、台湾と韓国は含まれていない」

一つ前のエントリーで紹介した通貨安もそうですが、これも似たような現象として、各メディアには、「なにかあればすぐでてくる単語」がいくつかあります。日米安保協力で両国の関係が強化されると、桂・タフト協定という言葉がよく出てくるし、米韓安保協力においてなにか関連でもあれば、各メディアはすぐに「アチソンライン」という単語を持ち出します。もちろんとても重要な概念ではありますが、ちょっと簡単に持ち出しすぎ、な気もします。今回は、そういう記事に比べるとまだ(単語の使い方において)説得力がありますが、毎日経済(11日)が、「米国の防衛ライン(defense perimeter、防衛範囲)は、日本とフィリピンまでとなる」という記事を載せました。米国の防衛ライン内に、台湾と韓国は含まれないだろう、というのです。

もちろん、ぜんぜん構わないという意味ではありません。ただ、米国が「直接」防御するのかというと、そうではないという指摘です。主に引用しているのは、外交・安保関連シンクタンクである「Defense Priorities」という外交・安保シンクタンクのジェニファーキャヴァナー研究員の見解です。前のトランプ政権のとき、在韓米軍を減縮させる話があった、と言われています。本当かどうかまでは確認できない話ですが、これを止めたのは、他でもない安倍(当時)総理だった、とも。今回は、どこまで決まっているのか、そもそも何かが決まってはいるのか、わかりません。ただ、もし本当にそういう流れがあるなら、次の政権がどうなのか(政権交代の可能性)が大きく影響するかもしれません。以下、<<~>>で引用してみます。




<<・・ドナルド·トランプ政権が描いているアジアの防御ラインに、台湾と韓国は含まれていないという、米国シンクタンクの冷静な分析が出てきて、注目される。10日(現地時間)、日本経済新聞・アジア版(※会員登録が必要ですが、原文はこちらの記事です。『Will Trump defend Taiwan? U.S. defense perimeter appears to shrink』)は、「トランプは台湾を守るのだろうか。防御ラインは変わりつつある」という題の、国際情勢を分析した記事で、トランプ政権「2期」においては米国の防衛ライン内境界線に、台湾とともに韓国も含まれないだろうという米国外交安保専門家の分析を掲載した。該当発言をした人物は、ワシントンDCにある外交・安保シンクタンクディフェンス・プライオリティス(Defense Priorities)のジェニファー・カヴァナー研究員だ。

彼女は、日経アジア版とのインタビューで、日本とフィリピンが米国の「アチソン・ライン(Acheson line)」だけが米国の防衛ライン内に含まれていたのと同じく、現トランプ政権では韓国と台湾に対する防衛ラインの約束をちゃんと守らないだろう、と観測した。アチソン・ラインは1950年1月、ディーン・アチソン米国務長官(当時)が共産主義の拡散を防ぐために東アジアに設定した米国の防御ラインだ。日本、沖縄、フィリピンの主要島を含めているが、韓国と台湾は入ってなかった。




日経アジアは、「アチソン・ラインが公開されてから数カ月の後、北朝鮮は軍事境界線を越えて軍事行動を敢行したが、アチソン・ラインがその原因になったと指摘している」とし、「アルブリッジ・コルビー米国防総省政策次官候補も、最近の人事聴聞会の後、『ワシントンでは、トランプ政権が米国の(東アジア)防御ラインをどこまでに設定すべきか、いろいろ議論が行われている』と話した」と伝えた。トランプ2期のアジア防衛ラインについての論議で、ワシントン政界の見解の一つとしてカヴァナー研究員など専門家の見解を載せたのだ。カヴァナー研究員の、現実主義のこの見方は、トランプ2期のアジア戦略の設計者とされているコルビー国防部政策次官(※国防次官)の見方と、多くの部分において一致している。

コルビー国防次官候補は4日、米議会承認聴聞会で「台湾は米国にとって重要だが、実存的利益ではない」と発言し、アジア諸国を驚かせた。彼はトランプ1期でも外交安保分野で核心人物として活動したことがあり、自らを「地政学の現実主義者」としている。彼の現実主義の見方から、米国は中国との競争に備え、欧州にある米国の戦略資産をアジアに集中させなければならないと主張している。 今、大きくなった中国と軍事的な問題が発生しても、米国が勝利を断言できないというのが彼の主張だ。台湾と韓国に対しても、米国の域内での利益はあくまで「中国牽制」であり、台湾や韓国に対する直接防御ではないと、線を引いている(毎日経済)・・>>




 

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