中国「日中韓FTAしましょう」・・CPTPPに入れなかった中韓、日本とのFTAに意欲

日中韓FTAに関する記事がいくつか出ていたので、その中の一つをピックアップしていました。日本の場合、日中韓FTAについてほとんど話が出ていませんが、韓国メディアはそこそこ盛り上がっています。今回の記事は3月31日の朝鮮日報です。尹大統領はすでに去年から、中国と中韓FTA改正(拡大)について話していました。いまも一応FTAを結んでいますが、一部の指摘だと「FTAと言うには弱い内容」であり、それをさらに強化する内容です。2024年8月25電子新聞の記事を見てみると、それは「米中対立において、私たちが使える『カード』である」という主張も出ています。

記事は(題などで)「中国がそうしようと言っている」としていますが、去年から韓国政府は同調していたわけです。すでに去年、韓国政府は各国とのFTA拡大や自由貿易を基本とする通商ロードマップを発表しています。そして、ほぼ同じタイミングで中国も同じ主張を強化していました。そこで、通商ロードマップといっても、最終的な目標は「日中韓FTA」、またはその交渉再開ではないのか、という話も出ていました。ただ、ほとんどの記事で、「簡単なことではない」とも指摘しています。特に日本の場合、「それはいいことですね」という話までは出ていますが、いまのところFTA交渉再開に関する何かの話があったわけではありません。以下、<<~>>で引用してみます。




<<・・日中韓3国の経済通商長官(※経済産業大臣)が5年ぶりで会同し、会議を行った。日中韓経済通商長官会議は、IMF外国為替危機以後、北東アジア3国協力のために発足し、2002年からほぼ毎年開かれたが、2019年12月の北京会議以後、コロナなどの影響で中断された。今回の会議は、昨年5月に開かれた日中韓首脳会議の後続措置議論が主な案件だったが、一定の調整が遅れており、ドナルド・トランプ米大統領の関税政策が出ている中で行われたこともあり、注目されていた。産業通商資源部は(※3月)30日、アンドックン長官とワンウォンタオ中国商務部長、武藤容治日本経済産業省大臣が、ソウル大韓商工会議所国際会議場で第13次日中韓経済通商長官会議を行ったと同日明らかにした。

中国は今回の三国、両者会議では、いままでとは異なり、日中韓自由貿易協定(FTA)推進に積極的に乗り出し、韓中FTA2段階交渉の加速化も提案し、注目を集めた。日中韓FTAは2012年から交渉を始めたが、中国が消極的な姿を見せて10年以上も進度が見られず、2015年に発効した韓中FTAの2段階交渉も韓国側の要請にもかかわらず、これまで中国はパッとしない反応を見せてきた。ある関係者は「主に日本が率いる日中韓FTA交渉議論を、中国が先に立ち上がって言及するのは初めてだ」と話した(※記事は「日本が率いていた」としていますが、日本が日中韓FTAにそこまで積極的だったとか、率いたという話は聞いた記憶がありません)。




中国はこれまで日中韓FTAを結ぶと、自国の産業が影響を受けると思い、交渉を延期してきたが、米国が貿易障壁を立てて日本、韓国との共助に問題が発生したことで、そこを意識していると思われる・・・この日、政府関係者は「韓中FTA改正は、私たちが要求し続けてきた事案であり、日中韓FTAも肯定的な効果が期待される」としながらも「各国が意見を統一するまではまだまだ時間がかかるだろう」と慎重な姿を見せた(朝鮮日報)・・>>

 

<<・・米国大統領選挙を控えて(※去年8月25日の記事です)、米中対立が高まる時期に、三国の交渉再開を推進するというのは、戦略的な判断というのが専門家たちの解釈だ。ホ・ユン西江大学国際大学院教授は「日中韓国FTAは現実的に妥結するまではかなりの困難を経験するだろうが、未来志向的に見ると十分に追求する価値がある」とし「私たちとしては戦略的にまともな歩みである」と評価した・・・・それでも中国は巨大な市場であり、中国と協力が必要だという点を政府が十分に把握しているという意味だ。中韓FTAが締結されたが、貿易自由化の程度は非常に低いレベルとされている。これを、より堅調な水準に引き上げる日中韓FTAを締結すれば、米中対立の中でバランスを求める一つの「カード」としても活用できる(電子新聞)・・>>

で、CPTPP加入の話はどうなったのか・・といいますと、去年「事実上、できなくなった」という記事がいくつか出てから、あまり話題にならなくなりました。去年8月23日のソウル経済によると、CPTPP加入申請のための段階である、担当省庁の「国会報告」すらできないでいる、とのことでして。 <<・・ユン政権任期中の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」加入が、野党の反対などで、事実上、霧散される状況になった・・・・CPTPPは、アジア太平洋地域の経済統合を目標に2018年末に発足したメガ自由貿易協定(FTA)だ。開放水準が高く、既存の12カ国の加盟国の全会一致が必要であり、すぐに交渉を始めても加入までに2~3年かかる。今回、加入時点と推進意志を明文化しなかったことで、現政権任期中の加入はできなくなったという分析だ・・>>、と。




 

ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。