なんか、「とても良いもの」というイメージを帯びた言葉が一人歩きするのは、めずらしいことではありません。AIという言葉もそうで、AIについて話せばなにか未来について話しているような気がする、AIはそんな『キーワード』になりました。だからこそ、でしょう。野党共に民主党の大統領候補、そして次期大統領の最有力候補とされる李在明(イジェミョン)氏が、急に「AIに100兆ウォン投資します」と公約を話し、それから与党側の有力候補の一人、キムムンス氏が、「AIに200兆ウォン投資します」と公約するなど、「そこ(公約)にAIはあるんか」が競争になってきました。
韓国では、AI世界3大強国ということになっています。でも、実際にビッグテックが進めているAI関連プロジェクト、たとえばAIデータセンター関連は、主に日本に設立することになっています。そういう現状を気にしてのこと、でしょうか。それとも、先も書きましたが『キーワード』はわかりやすいから、とりあえず取り上げてみたのでしょうか。そこで、イーデイリー、ニューシースが、「で、電力問題はどうするんですか」、「で、資金調達はどうするんですか」という記事を載せました。実はこれ、尹大統領が半導体団地に600兆ウォン使う(ただし民間投資で)と発表したときにも、同じ指摘がありました。LNG関連でもそうで、最近LNG関連でいろいろニュースが出ていますが、日本などに比べて関連インフラがずいぶん足りない、という指摘も出ています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・大統領選挙が始まり、人工知能(AI)公約があふれている。共に民主党側ではイ・ジェミョン競選(※正式に大統領選挙に出る候補を決めるための党内選挙)候補が初公約として「AI産業100兆ウォン投資」を出したのに続き、キムギョンス、キムドンヨン候補も加勢した。国民の力でも。ハンドンフン競選候補が「AIインフラ構築200兆ウォン投資」公約を掲げたのに続き、キムムンス、ホンジュンピョ候補なども競争的にAI公約を出している。今になって慌てているのを見ると、確かに選挙シーズンになったことが分かる。それでも、今からでもそういう意志を固めたなら、幸いだ。だが、問題はは財源づくりだ。 100兆、200兆ウォンを簡単に言っているが、投資財源の造成はそれほど簡単ではない。
せいぜい銀行を圧迫するか、すでに投資している関連企業にもっと投資しろと圧迫するくらいしかないだろう。財務構造が弱い各種公的基金を自分の金のように使うのももういいかげんにしてほしい頃だ。財源問題より実務的に大きいのは、電力問題だ。 AIやデータ産業には膨大な電力が必要だ。従来の産業も必要エネルギーが競争力を左右するものだが、未来型先端新産業も同じだ。データとコンピューティング、半導体を基盤とするAI産業も、発展軌道に上がるほど経済的なエネルギー調達がカギになるだろう。安定的で質の高い電力供給が、優れた人材確保と同じくらい、AI産業の発展に必須だという話だ。だが、韓国電力が推進してきた31の主要電力網事業のうち、スタートもできないでいるのが15個もある。
脱原発で発電部門で5年も進展がなかったし、変電所建設など送・配電事業でも、機関・地域同士が協力せず、プロジェクトは進まないでいる・・・・ AI産業を育てるからといって、既存の鉄鋼、自動車工場に電力供給を制限することもできないし、発電から消費先までの送配電まで電力インフラを適切に備えていかなければならない。大統領選挙候補たちは、これに対する実践方案も一緒に提案してほしいところだ(イーデイリー)・・>>
<<・・6月大統領選挙を控えて、主要候補者たちが人工知能(AI)関連公約を相次いで発表している。グローバル技術競争の中で韓国のAI競争力確保が重要な国家的課題として浮上したためだ。大統領候補のAI公約は、その大部分が、大規模投資と国家主導の積極的な介入を通じたAI強国跳躍という共通点を持っている。そのため、少なくは数十兆ウォン、多くは200兆ウォンをAIに投資するという公約を、競争的に広げているわけだ・・・・専門家たちは、大統領選挙予備候補者たちのこのようなAI公約に対して、AI産業・技術の重要性を認知し、育成意志を強調しているという点で、一応は肯定的だという評価を出している。ただし、大規模な投資規模を強調するだけで、具体的な資金調達計画と実行方案の面で現実的でない側面もあると指摘する。
ユフェジュン カイスト電気電子工学部教授は、「事実、大統領候補者たちの今の公約を覗いてみれば、意味なく(AI投資金額の)数字だけを話しているだけだ。どのように資金を調達するのかなど、先に確実な戦略を提示しなければならないだろう」と批判した。具体的な目標と、方向性のない投資規模は無意味だということだ。イジェソン中央大AI学科教授は「既存政策を踏襲した水準の公約が多い」とし「今までの政権とも大して異なる点がなく、大統領候補として出てきた方々の話を聞いても、どれも似たりよったりで、どう異なるのかわからない論調である」・・・・「AI技術を発展させる人材がなければ、100兆ウォンでも200兆ウォンでも、投資したところで意味がない」と話した。インフラとハードウェア、半導体だけ活かしたところで(※人がいないと)意味がないという話だ(ニューシース)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。