韓国の関税交渉チームが訪米し、明日の21時あたりから、米韓の関税交渉が始まります。ただ、この場合、韓国では普通「協商(ソース記事の表記基準で『ネゴシエーション』になっているので、『交渉』の意味になります)」という用語を使いますが、今回は「協議」を公式名称にしているとのことで、朝鮮日報(朝鮮Biz、4月20日)はこのことを「あえて時間稼ぎをするという意味ではないだろうか」とも報じています。米国側の要請により、2+2(財務、通商)の形で行われる、とのことです。日本のようにトランプ大統領が直接参加するのかどうかはまだ分かっていませんが、複数のメディアが「可能性は十分にある」としています。ハンギョレ新聞(22日)とのインタビューで、文在寅政権で通商本部長だったヨハングさんは、日本はもっと準備ができている状態なので、日本を参考にすべきである、としています。ひょっとすると、日米の交渉がどうなるのかを見てから、あえて後手に回ろうとしているのかもしれません。
で、その日米の交渉ですが、一部からは、「どうしても関税猶予期間中には具体的な合意まではできそうにないし、暫定合意の形、すなわち大まかに合意しておいて、細かい項目別の交渉は後で行う形になるだろう」という見解も出ています。韓国ではヘラルド経済が報じています(もとはロイターの記事で、ブログ本文に引用はしていません)。共通しているのは、実はトランプ大統領はかなり焦っていて、「とりあえず妥結」でも成果を出さなければならないと思っているからだ、という見方です。あとは国内向けにそれっぽく言えばいいということかもしれません。ボウリングボールではなく野球ボールでテストすることにしたから大勝利だ・・とか(笑)。いや、まさか。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・来週、崔相穆(チェサンモク)副首相兼企画財政部長官と安徳根(アンドックン)産業通商資源部長官が参加する「2+2韓米財務・通商長官会議」は、「協商」(Negotiation)ではなく「協議」(Consultation)という公式名称がついた。各国が持ってきたカードを一つ一つ見せてトレードする意味の「協商」ではなく、相互の関心事を確認してみる場だという意味の名前をつけたと政府関係者は説明した・・・・企画財政部部と産業通商資源部は20日、メディア発表を通じて「来週中、米国ワシントンで米国と2+2の「通商協議」(Trade Consultation)を持つ計画」とし「韓国側ではチェ副首相とアン長官が、米側ではスコット・ベッセント財務長官とジェイミソン・グリア貿易代表部代表が参席する」とした。両省庁は今回の会談が「米国側の提案によってなされたもの」と公開した。詳細スケジュールと議題は「米国側と調整中」と付け加えた・・
・・米国が通常会談を両国の財務・通商長官が共に参加する2+2方式で提案したのは、できるだけ迅速に結果を出すというトランプ大統領の意志を反映されたものだと見られる。これに対し、韓国側は今回の会談を「協商」ではなく「協議」に制限し、慎重な態度を堅持している。これと関連して、企画財政部関係者は「手続き的に外国と協商をするには通商条約法に従って計画を立て国会に報告した後、公聴会も開かなければならない」とし「今回の会議は両国の関心事を聞く水準の席で、内容側面でも協商と呼べない」とした・・・・通商会談で「協商」と「協議」は相当な違いがある。産業部関係者は「交渉と呼ぶには目標と議題が明確でなければならない。両国間の調整案についても具体的な内容がなければならない」とし「現在の韓米間には関税議論の枠組みや細部議題が定められた状態ではない。交渉よりは協議と呼ぶのが正しい」とした(朝鮮BIZ)・・>>
<<・・元通商関連の首長たち(※通商本部長のことで、次官レベルですが、対外交渉では長官、すなわち大臣と同等レベルとされます)は、防御的態度にとどまらず、受け取れるものはちゃんと受け取るという態度で交渉に臨むべきだと注文した・・・・ヨハングもと通商本部長は、主力輸出品である自動車や半導体(関税のための調査進行中)などに対する品目別関税も議題にする必要があると述べた。「米国が製造業に協力をするにおいて、私たちほど良い相手は他にいない」とし、「製造業復活」を叫ぶトランプ政権に韓国の製造業競争力を武器に、協力強化と譲歩を得る必要があると述べた。彼らは米国の関税政策の方向がどこに向かうかがまだ分からない状況で、徹底した備えが必要だと経験に基づくアドバイスもした。
ヨ元本部長は、米韓自由貿易協定の改正交渉は成功したと評価し、当時トランプ大統領は中間選挙を控え、中国・メキシコ・カナダなどと繰り広げた貿易葛藤が解決されなかった。そんな中、韓国の提案が効果があって、適切な時点で妥結できたと説明した。元本部長は「日本がどうするかを参照しなければならない。日本は韓国よりも準備ができている状態だ」とし「日本と韓国は、自動車や鉄鋼などの品目別関税問題、アラスカ液化天然ガス(LNG)開発事業参加検討、安保問題という共通点がある」と話した(ハンギョレい新聞)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。