2024年下半期の、就業、賃金関連データが公表されたので、紹介します。実はこれ、たとえば「非居住福祉施設の就業者が大幅に増えた」などは、それが何を意味するのか少し説明を加えるだけで見方が変わったりしますが、ほとんどのメディアはデータを紹介するだけです。以下、ヘラルド経済などの記事に、ちょっとだけ説明を加えながら進めてみます。まず、賃金データからです。韓国の賃金労働者・非賃金労働者(経済活動参加しているけど、賃金を受け取らない人たち)を合わせると、約2880万人です。経済活動参加人口とほぼ同じだとみていいでしょう。自営業者は非賃金労働者に分類されます。賃金労働者は約2200万人で、彼ら賃金の分布となります。
まず、各メディアが注目しているのは、賃金労働者、約5人の1人は月給200万ウォンにならないこと、約10人の1人は100万ウォンにならないことです。ちょっと詳しく見てみましょう。100万ウォン未満9.6%。100万ウォン以上~200万ウォン未満が10.4%。200万~300万ウォンがもっとも多く、31.6%。300万~400万ウォンが22.0%、400万ウォン以上が26.5%です。ソース記事によると、全般的に賃金格差は拡大されつつある、とのことです。次は、雇用がどこで発生しているのか、ですが・・食堂(飲食業)による雇用がもっとも多いのが特徴です。これ、前にも書いたことがありますが、一部の大企業のネームバリューがすごいですが、実は大企業による雇用は他国より少なく(一つ前のエントリーも参考にしてください)、もっとも雇用を生むのは、自営業者、特に飲食業からです。
自営業者問題、特に「ひとり社長」などが経済関連記事で大きく取り上げられているのも、このためです。この部分はちょっと<<~>>で引用してみます。 <<・・統計庁が24日に発表した「2024年下半期地域別雇用調査-就業者の産業及び職業別特性」によると、昨年下半期(10月)基準で、163種類の小分類職業群のうち、「売場販売従事者」は150万7000人(5.2%)で最も多かった。作物栽培従事者が134万3千人(4.7%)で、それに続いて清掃関連従事者が124万9千人(4.3%)で3番目に多かった。 1年前に比べて売場販売従事者が10万人減少し、減少幅が最も大きかった。建設・鉱業単純従事者も6万1000人減少したと分析された・・
・・(※それより細かい分類となる)234種類の産業小分類においては、それぞれの就業者数を見ると、飲食店業が166万2000人(5.8%)で最も多く、非居住福祉施設運営事業(159万4000人、5.5%)、作物栽培業(140万7000人、4.9%)などが続いた。就業者が最も多く増えた産業は非居住福祉施設運営事業(8万8000人)だった。建設業の就業者は8万6000人減り、減少幅が最も大きかった。年齢別就業者の割合を見ると、青年層と30~49歳は飲食店業がそれぞれ10.4%、4.5%で最も多かった。50歳以上の就業者の割合が最も高いのは、作物栽培業(9.6%)だった。昨年下半期、就業者は2884万7千人で、1年前より8万3000人増えた(ヘラルド経済)・・>>
よく話題になる、「政府や自治体などによる『簡単なお仕事ばらまき』も就業者数に全部カウントされるので(就業者にカウントされるものの、彼らへの報酬は『支援金』なので、賃金データにはカウントされません。本データに入っているかどうかは不明です)、8万3000人増えたとしても、実際はどうなのか、よくわかりません。2024年8月27日ファイナンシャルニュースによると、「政府は27日に発表した2025年の予算案で、来年(※2025年)の高齢者働き口110万個を供給すると明らかにした。これは昨年の103万個より7万個増えたもので、最大水準だ。1000万人を突破した高齢者人口の10%に相当する」、となっています。これがどれだけ実行されたかはわかりませんが、110万の働き口を供給したのになんで8万3000人しか増えていないのか、そこも気になるところです。短期が多いから、すぐ辞めたのかもしれませんが。
あと、栽培業に50代以上が多いというのは引用部分にもありますが、実は「非居住福祉施設」にも、60代以上の雇用が多いとされています(4月24日SBS Bizなど)。これは、居住しないタイプの介護施設などに関連した雇用を意味します。もちろん人によるでしょうけど、低所得高齢者の家に自治体や福祉機関が用意した用品(弁当など)を持ち運ぶ仕事も、非居住福祉施設関連の雇用になります。先の「高齢者働き口」の中に、この非居住福祉施設関連カテゴリーがあります。急に増えたというのは、もちろん高齢化の影響もあるでしょうけど、こういう背景もあるわけです。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。