もうなにがなんだか・・といったところですが、とりあえず、韓国の与党(もう「前与党」ですが)「国民の力」が、候補単一化に成功しました。簡単に流れを書いてみますと、まず、競選(公式に大統領選挙候補を決めるための党内選挙)で 金文洙(キムムンス)前雇用部長間が大統領選挙候補に決まりました。でも、国務総理で大統領権限代行をしていた韓悳洙(ハンドクス)さんがまた無所属で出馬を表明しました。一時は出馬しないという話もありましたが、競選にも参加せず、あとになって無所属で出ることにしました。
ただでさえ支持率で野党がリードしているのに、与党指導部は候補単一化を目指しました。そもそも、金候補も韓候補も単一化すると言っていました。しかし、両候補ともに意見が合わず単一化できる可能性がほぼなくなり、党指導部は、親尹(尹大統領と親しい議員たち)を中心に、なんと公式に選出されたキム候補の候補資格を取り下げ、競選をやり直すと宣言しました。すると、ハン候補が「待ってました」と言わんばかり、「国民の力」に入党、競選にエントリーしました。党内の反発はかなりのもので、競選にエントリーしたのはハン候補だけです。
そこで、大統領候補に登録できる期限もあるので、党指導部は「候補が一人しかいないから賛成・反対の投票にします」と全党員による投票を実施しました。ここまでが、昨日までお伝えした内容です。でも、なんと、その投票結果、「否決」になりました。事実上、「親尹派がまけた」ことになります。この投票結果で、キムムンス候補が元通り、公式大統領候補に返り咲きました。候補取り消しになってから、21時間ぶりのことです。ハンドクス候補は、事実上、結果を受け入れるという形になり、結果的に候補単一化ができた、いや、「できてしまった」わけです。ノーカットニュース、YTNなど、さすがに各メディアも呆れたようで、多くの記事が「なんだったんだよ」なニュアンスです。
党員たちによる投票としては妥当な結果でしょう。一応、党のルールに沿って決まった候補を、指導部が勝手に取り下げるなんて、「他の人がいいから競選無効」と言っているようにしか見えませんでしたから。いまは、基本的に親尹派の地位は総崩れ、といったところです。しかし、この件が「国民の力」の支持率に与える影響は少なくないでしょう。引用はしませんが、ノーカットニュースなど複数のメディアは、「党内の主流派閥を決めるという側面もあるので、単に候補がキム候補に戻っただけで収まることはないだろう」と指摘しています。親尹派の人たちは、どうしても「尹大統領側の人」として選挙に勝つことを願っていて、それが今回の候補交替の背景だと言われています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・法的対応に乗り出したキムムンス候補者に向けて、(※党指導部は)すべての手続きは合法的だと釘を打ちました。しかし、党員の意志に従うという指導部の主張とは異なり、候補交替に対する反発は手が付けられないほど広がりました。直ちに競選参加者たちと、親・ハンドンフン派(※与党の前代表ハンドンフン氏を中心とする派閥で、親尹派とは特に仲がよくない)などを中心に、指導部が反民主的な暴挙にでたいう反発が溢れました。【アンチョルス/国民の力議員:尹前大統領の非常戒厳となにが違うというのですか、これは」】。
このいざこざは、キムムンス候補の地位が回復した直後にも続きました。指導部が候補交替の名分を築くために推進した「党員賛否投票」で失敗したクォンヨンセ非常対策委員長が辞任を宣言すると、親ハンドンフン議員たちは直ちに、クォンソンドン院内代表なども一緒に辞任すべきだと主張しました・・・・戒厳事態と大統領罷免に続き、候補交替の試みなどと、思わしくないことばかり続いている国民の力。指導部の候補交替の試みは一段落されたが、大統領選挙が一ヶ月も残っていない状況から、党の内訌まで続いており、さらなるピンチを迎えています(YTN)・・>>
ある種のミーム化しているフレーズに、「おちついてきいてください」というものがあります。戒厳令騒ぎのときも、日本側のSNSなどでよく見かけましたが・・ここ2日間この問題を書いてきた私もまた、ちょうどそう言いたいところです。いや、実は今朝になってこのニュースを読んで、「えっ?」と思いました。まだ昨日の「金文洙候補から、事実上、韓悳洙候補に交替」などの記事も、同じくトップニュースとして載っていて、記事の掲載時点だと数時間置きで「取り消し」「交替」「元通り」が続きました。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。