旧ブログだった頃から、多くのメディアが冗談抜きで「定期的に」取り上げてきたテーマ、「最低賃金未満」関連です。1年に2回、ソルとチュソク(旧暦1月1日、8月15日)には定番ニュースでしたが、最近は何かの新しいデータが出るたびに、複数のメディアがニュースを載せます。日本の十数倍、分析によっては事実上100倍になるとまで言われている、賃金労働者の最低賃金未満率。同じ機関でも分析する方法によってかなりの差が出ますが、一応、政府が公式に把握している最低賃金未満率は「約300万人」となっています。今回は比較的少な目に出ましたが、一応最新データなので、ファイナンシャルニュースの記事からピックアップしてみます。
ちなみに、これは最新データではなく「既存の情報」ですが、2017年~2021年の5年間データで、賃金未払いは日本の14倍、民間の分析だと100倍以上という主張もあります。OECDの最低賃金『以下』データ(OECDは未満ではなく以下で集計します)によると、最低賃金制度がある25カ国の中で、最低賃金以下労働者がもっとも多いのはメキシコ(25%)で、その次が韓国(19.8%)でした。ベルギー0.9%、米国1.4%、オーストラリア1.7%、日本2.0%、チェコ3.1%・・などで、22位フランス(12%)、23位スロベニア(15.2%)、24位韓国、25位メキシコ(アジア経済2023年4月2日)。
で、今回の分析(公式ではなく、経営者総協会が統計庁データを独自に分析したものです)では、賃金労働者の12.5%の276万人が最低賃金未満である、とのことでして。「政府公式で300万人」という数値をよく見かけますので、これでも各種データの中では少ないほうだと言えるでしょう。記事で注目すべきは、「週休手当」です。4月28日にも「分けアルバ」という言葉を紹介しながら同じ内容を書きましたが、1週間に一定以上の時間勤務した勤労者には、1週間に1回有給休暇を与える制度です。表面的には最低賃金以上の賃金(去年基準で約986円、韓国は全国に同じ最低賃金が適用されます)をもらっているように見えても、実は週休手当(法的にもらえるはずの手当)をもらっていないので、そこまで考えると、最低賃金未満の割合は21.1%、467万人まで増えます。
特に、「5人未満の事業場」で勤務する労働者の場合、総392万3000人ですが、その29.7%の116万4000人が最低賃金未満だった、とのことでして。(引用部分にはありませんが)これは韓国で「庶民向け」とされる宿泊・飲食業で特に問題になっており、職員の30%以上が最低賃金未満、という場合も多いとのこです。4月29日にお伝えしましたが、韓国でもっとも多くの雇用が発生するのは「飲食業(食堂)」です。2024年下半期時点で、234種類の産業小分類の中でもっとも多くの就業者が存在するのは「飲食店業」で、166万2000人でした。最低賃金関連で、大々的に調査するとかそんな話がありましたが・・それでもあまり減っていないようです。
数値そのものよりも、改善されないでいることのほうが驚きです・・といっても、先も書きましたが、多少人数は減っています。しかし、これは記事ではなく「ネットの意見」といったところですが、今回、人数が多少減少したのは、先の「分けアルバ」が増えたからだ、という話もあります。店側が、週休手当や最低賃金負担などをなくすために、例えば店が忙しい時間帯だけ、とても短い時間だけ働く条件で雇用するという意味です。短い時間だけ働くので、最低賃金未満の人は減少はしますが、全体賃金額も減少します。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・昨年、法定最低賃金額である時給9860ウォンを受け取れなかった労働者が276万人に達することが分かった。全体の労働者の12.5%に達する数値だ。物価と賃金上昇率を上回る水準の最低賃金引き上げが持続し、労働市場が受け入れられないでいるという指摘が出ている。韓国経営者総協会(経総)は11日「2024年最低賃金未満率分析」報告書を通じてこのように明らかにした。報告書によると、2001年に57万7000人水準だった最低賃金額未満の労働者数は昨年276万1000人で378.5%急増した。同期間最低賃金未満率も4.3%から12.5%に3倍近く増えた。このような現象の背景として、経総は高率の引き上げを続けてきた最低賃金に対し労働市場が受け入れることができなくなっている点を挙げた・・
・・実際、過去20年間の最低賃金引き上げ速度は、物価と賃金上昇速度を大きく上回ることが分かった。2001年比2024年消費者物価指数と名目賃金がそれぞれ73.7%、166.6%引き上げられる中、最低賃金は428.7%が上がった。物価の5.8倍、名目賃金の2.6倍さらに急上昇したのだ。業種別では宿泊・飲食店業(33.9%)と農林漁業(32.8%)など一部業種で最低賃金未満率が非常に高くなった。規模別では、5人未満の事業場で最低賃金を受けられない労働者の割合が高かった。 5人未満の事業場で勤務する労働者392万3000人のうち、29.7%(116万4000人)が最低賃金額未満を受けていると分析された(ニュース1)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。