本題に入る前に、米中関税交渉が「思ったより」良い形で進行されたようです。「お互い115%も下げた」とのことですが、90日間の時限付きで、しかも「115%も下げる分があること」それ自体が問題ですので、まだなんとも言えません。経済安保領域は論外ですが、それ以外の部分なら、確かに100%超えの関税など現実的ではありません。世界経済にこれ以上思わしくない影響を及ぼさないことを願います。「米国の方が譲る形になった」という見解も結構出ているので、これからの日本と米国の関税交渉にも、なにか参考になることがあるといいですが・・はてさて。で、ここから本題ですが、これまたずいぶん前から指摘されている問題、韓国の不動産関連ニュースをチェックしていると必ずと言ってもいいほど出てくる言葉、ジョンセサギ(伝貰詐欺)問題について、です。
韓国には、「保証金」を大家に預け(あとで返してもらえる)、家を借りるジョンセ制度というものがあります。ですが、実は人に貸せる状態ではない(いつ差し押さえられるかわからない、など)家を貸すことが多く、社会問題になっています。大家は、保証金(返さないといけない金)を使ってまた不動産を購入したりするので、普通に保証金が返せなくなることも多いですが、そういうのはジョンセサギにはなりません。明らかに合法的とはいえないやり方で家を貸し、保証金を受け取ることをジョンセサギと言います。
で、金利が上がって不動産市場が沈滞した時期・・数年前あたりから「大幅に増えた」と言われている本件ですが、毎日経済のシリーズ記事(記事1、 記事2)によると、青年(公式の青年ではなく、記事では「20~40歳」)だけでも、月1000人近くがジョンセサギに会っている、とのことでして。先も書きましたが、大家が「そんなつもりなかったけど、首が回らなくなって保証金が返せなくなった」場合は、ジョンセサギにはなりません。明らかに違法的なやり方によるものだけ、しかも20~40歳だけ人数で月1000人以上となると、明らかに社会問題と言えるでしょう。ちなみに、30代がもっとも多い、とのことです。記事には「信託ジョンセサギ」というものが載っていますが、他に関連ニュースを読んでみると、様々なやり方があり、率直に言って、ある程度知識のある人でもこれを事前に把握できるのか、ちょっと疑問です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・来月で、ジョンセサギ特別法が施行されてから2年になる。ボクギワン共に民主党議員室がLH(※住宅公社)から受けとった資料によると、4月までに(※関連法で)被害者と認められた人は合計2万9540人。このうち20~40歳の青年が2万2152人で全体の75%を占める。毎月1000人に近い青年たちがジョンセサギにやられているわけだ(毎日経済、記事1)・・>> <<・・昨年末、ソウルの新築オフィステルにジョンセして入り、住んでいたイ某さん(32歳)は、今年初め、ある信託会社で内容証明を受けた。1カ月以内に家を空けなければ不動産引き渡し命令と明け渡し訴訟を出すという内容だった。あとで分かったことだが、イさんだけでなく、該当のオフィステルに入居した他の多くのテナントたちも同じ内容証明を受けた・・
・・ジョンセサギ特別法が施行されてから2年が近づくが、まだいろいろな種類のジョンセサギが続いている。そのうち、特に問題になっているのが「信託方式」だ。ヴィラ(※Villa、もともとは別の意味ですが、韓国では小型アパートなど共同住宅をこう言います)やオフィステル(※住居用で使えるオフィス)を新築しながら、資金が足りない建物主は、銀行融資のために不動産を信託会社に渡す。これを担保として収益権証書を受け取り、銀行から融資を受けるのだ。この時、賃貸人は信託会社の同意を得てこそ、ジョンセ契約を締結することができる。しかし、これを隠したまま(※この状態だと、そもそもジョンセとして出せない)、テナントに言わずに契約を結んだ後、その保証金で銀行のから受けた融資を返す事例が相次いでいる。明らかな詐欺問題である。
賃貸人が銀行から受けた融資を全額返済できなかった場合、金融会社は不動産を売却しても貸出金を回収することになり、この過程で信託会社は不動産所有権を持っているため、テナントに退去を命令することができる。ジョンセ契約の過程で信託会社の同意を受けなかったため、そこで住んでいたテナントの人は住宅賃貸借保護法の保護を受けることもできない(毎日経済記事その2)・・>>
この伝貰制度が、韓国の高度経済成長期を支えた制度の一つ(庶民の住居負担を大幅に軽減)なのは事実です。しかし、当時は、大家が受け取った保証金を銀行に預けておくだけでも結構な利子がつきました。でも、最近は貰入者(家を借りたテナントの人)が預けた保証金を、大家が不動産購入などに使ってしまうのが「普通」になっています。この時点で、すでに制度は破綻しているとも言えるでしょう。最近は月貰(普通の月々家賃制度)も増えてきましたが・・
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。