韓国、中堅企業の流動性問題で賃金未払いがさらに急増、1~3月だけで6000億ウォン突破

5月12日、韓国賃金労働者の12.5%(分析によっては21%)が最低賃金(時給986円)未満だというデータをお伝えしました。不況の中でも特に影響を受けているとされる自営業(韓国でもっとも多くの雇用が発生するのは飲食業です)の「年100万人廃業」が毎年のように続いていること、などなどがその原因とされています。未読の方は5月12日の記事を参考にしてください。で、今日は、よく「セット」で話題になる、賃金未払いについて、13日の韓国経済の賃金未払い関連記事を部分引用してみます。後者の記事は、題が「社長様、お願いですから賃金をください」となっています。まず、これは何度も引用していますが、韓国の賃金未払いは、年2兆ウォン規模だとされています。

2005年(2004年データ)で、賃金未払い金額が1兆ウォンを超えました。当時も「どういうことだ、IMFはもう卒業できたんじゃなかったのか」と、かなり話題でした。でも、本ブログで取り上げてきた無数の案件と同じく、改善せず、2024年(11月まで)のデータで、1兆8600億ウォンを超えました。年間規模で2兆ウォンは超えたと報じられています。ファイナンシャルニュース(2024年9月29日)によると、当時の雇用労働部次官が「(人口比で)日本の約50倍」と話したり、各メディアの分析では、多分集計期間によるでしょうけど、朝鮮日報の記事などでは十数倍だと、労働研究関連で日本で働いている専門家の個人的な見解としては、「事実上、100倍」という話も出ている、そんなところです。




 

共通する指摘としては、「人件費を重要なものだと認識していないこと」、「関連規定がゆるすぎる」、「温情でなんとかする文化」などなど、です。拙著に、「金銭的な借り貸しの関係を、人間関係アピールで解決しようとする場合が多い」と書いたこともありますが、似たような指摘ではないでしょうか。そんなところですが、今年は1~3月期のデータとして、すでに6000億ウォンになっている、とのことでして。単純計算ではありますが、2兆4戦億ウォンというとんでもない数字が出てくる可能性もあるわけです。また、仁川日報というローカルメディアの記事によると、外国から移住した労働者たちへの賃金未払いも増えています。

なぜか全国データは載っておらず、「中部地域だけ(この場合の中部は雇用庁の管轄地域のことで、京畿道、仁川、そして江原道の一部のことです)」ですが、最近3年連続で450億ウォンを超えている、というデータも出ています。移住と言っても、法的にちゃんと登録されていない人も多いので(賃金がもらえなくても、表向きにできない)、実際の規模はもっと大きいのではないか、とも。こうしてみると、大統領選挙でもっと民生関連の話が出てきてもいいのでは・・な気がしますが、なんか、特定分野で世界◯大強国にするとか、そんな話ばかりです。以下、<<~>>で引用してみます。

 




<<・・デウウィニア、キュテングループ、ティモンなど経営難の企業の賃金滞納が爆増し、代表取締役たちが裁判所に行列を作っている。今年1~3月期だけで賃金滞納額が6000億ウォンを超えた中、賃金滞納で刑事起訴された事業主が2万人に達し、新型コロナ以降最大値を記録したことが分かった。企業が流動性危機に直面して、人件費支給を延期して、裁判沙汰につながる流れが加速しているという分析だ。13日、大検察庁によると、昨年検察が賃金滞納事件で起訴した人員は1万8998人で、2023年(1万5055人)比26%も増加した。賃金滞納で刑事起訴された人員は、新型コロナ時期の2020年2万4456人を頂点に減少傾向を見せたが、最近2年間で再び急増に転換された(聯合ニュース)・・>>

<<・・京畿地域移住労働者に対する賃金体不額が毎年少なくとも300億ウォン以上発生していることが分かった。統計上では表れない未登録移住労働者の賃金滞納まで加えれば、規模はさらに大きくなる。しかし、未登録の身分である移住労働者は申告すらできない立場だ。13日、仁川日報がパクジョン共に民主党議員室を通じて雇用労働部から確保した資料によると、最近3年間、「中部地方 雇用労働庁管轄地域」で発生した移住労働者賃金滞納は毎年450億ウォン以上発生した。中部庁は京畿道全体、仁川、江原道の一部地域が管轄になる・・・・移住労働者賃金滞納のうち80%程度が京畿道で発生したというのが労働部関係者の説明だ。これに基づいて単純計算した時、京畿地域移住労働者は毎年360億ウォンの賃金滞納を経験した(仁川日報)・・>>




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください

  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。