韓国の省庁の一つ「産業通商資源部」には、通商交渉本部長という職位があります。通商部門の事実上の長で、次官(副大臣)レベルになります。元・通商交渉本部長が24日の中央サンデー(中央日報の週刊紙版)に、「米国との関税交渉に、私たちには多くのカードがある」という内容を寄稿しました。使えるカードが多いから、焦らず進めよう、という内容ですが・・最近あまり聞かなくなった「超技術」などの話(技術超格差、超技術力差、など)と似ている気もします。超技術関連の主張は、「米国も中国も韓国を必要としているから、私たちはどちらに肩入れする必要もなく、これといってなにかをする必要もない」という趣旨のものでした。でも、最近はあまり聞かなくなりました(笑)。
寄稿文には、別にドラゴンボールのタイトルに付きそうな単語は出てきませんが、方向性は似ているものです。ウクライナやイギリスは使えるカードがないけど、韓国には多くのカードがある、これは私ではなくトランプ大統領関連専門家たちがそう言っていることだ、そんなところですが・・読んでみると、いまからAIに投資しようという話が出てきたり、日米デジタル貿易協定のようなものを締結して、日米韓のデジタル市場を統合しよう、とか、そんな話が出てきます。私の読み方の問題かもしれませんが、使えるカードが多いのではなく、「ほしいカードが多い」という意味になるのでは・・と。欲しいカードが多いということは、いまは使えるカードが少ないという意味ではないでしょうか。それに、最初にウクライナやイギリスのことを評価下げする必要があるのだろうでしょうか。それに、引用部分で「華麗なカラー写真」としている部分ですが、すでに1月の日米首脳会談で出てきたことばかりです。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・私たちには協商(※交渉)カードが多い。これは筆者の言葉ではない。ワシントンで会ったドナルド・トランプ米大統領専門家たちの伝言だ。一方、ホワイトハウスでゼレンスキー ウクライナ大統領と会談を行ったトランプ大統領が何度も繰り返した言葉が「あなたには交渉カードがない」というものだった。韓国内では懸念が大きいが、いったん落ち着いて、トランプ政権の立場から韓国を見ると、私たちには交渉カードが多いという意味が理解できる。トランプ2期政権の最初の合意となる、5ページ分量の米英合意文を見ると、単調だと考えざるをえない。米国に牛肉・エタノールなど市場開放をして、自動車25%の関税例外で10万台のクォーターを設定するなど、何か斬新な、新しいものが入ってないのだ(※イギリスはもともと対米輸出が10万台規模で、かなりの高級車メインです)・・
・・韓米間の交渉の結果物を想像してみると、造船をはじめ様々な製造業分野、韓国企業の投資を含め、先端産業分野の技術協力、液化天然ガス(LNG)エネルギーなど、はるかに多彩な絵が出ている。米国の中西部、共和党メインの有権者たちにアピールできる内容だ。米・英交渉の結果が白黒写真なら、韓米交渉の結果は華麗なカラー写真であっても過言ではないだろう・・・・人工知能(AI)デジタル分野の協力が良い事例だ。先日、シリコンバレーで複数のAIスタートアップとベンチャーキャピタルに出会った筆者は、韓国がAIレースで大きく遅れているとともに、新政権でのAI育成のためには韓米間のAIデジタルパートナーシップを積極的に活用しなければならないことが確認できた。
最近、米国のビッグテック企業が東南アジアに数十億ドル規模で投資したのに比べて韓国に対する投資ニュースは聞こえない。MS、アルファベット、アマゾン3社が今年の投資額も2600億ドル、韓国全体の研究開発予算の10倍を超える天文学的規模だ。規模の経済では、相手にならない。韓国のAIがキャッチアップできる方案は、米国のビッグテック企業の韓国投資やデータセンターの設立などを誘導し、米国のAIエコシステムと協力し、韓国がうまくできるニッチ分野を探し、アジアのAIテック・ハブ化することだ(※各単語は原文ママです)・・
・・そのためには韓米間デジタル分野の「高速道路」が必要である。韓米自由貿易協定(FTA)の電子商取引分野は、スマートフォンが普及する前に作られた、時代に合わない協定だ。日本はトランプ1期の時、日米間の高水準のデジタル協定を結んだ。われわれも米国に韓米デジタル協定締結、あるいは日米デジタル協定に加入することで、韓米日デジタル市場を統合することを考慮する必要がある。韓国内需市場は小さいが、K-スタートアップが日米市場に進出して成功すると、ほぼ20倍規模で大ヒットすることができる。このように新しい政府が大きな絵を新たに描いて交渉をするためには、新しい政権の発足後、米側に新たなイシューを提起する可能性をこれから開いておかなければならない。今は対米協議よりは、国内の準備に、新政権への交渉バトン・タッチがスムーズになることが望ましい。時間に追われているのは、アメリカのほうである(中央SUNDAY)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。