韓国のアサン政策研究院というシンクタンクが、「次の政権に対する日本の見方」という見解を述べました。安保関連の話が多く、保守寄りのところです。時事ジャーナルというメディアへの、寄稿文の形です。読んでみると、大まかに3つが書かれています。1つ目は、日本政府が積極的に協力しようとしていたのは、韓国政府というより尹錫悦(ユンソンニョル)政府で、日本は「私たちは尹大統領に借りがある」という認識を持っており、尹大統領に全幅の信頼を寄せていた、というのです。はい。「~と、いう」のです。だから、尹大統領の日本国賓訪問もできた(はずだ)けど、尹大統領の退陣で、それらは叶えられなくなってしまった、とも。さらに、日本との新しい共同宣言などもできた(はずだ)けど、それらも、できなくなった、ともともとも。
私は、どちらかというと「前任者あってこそのベース・エフェクト(比較対象の数値が低くて、いまの数値が本来の意味より高く見える)」だったのでは、としか思っていませんが。2つ目は、李在明候補のことを、日本はかなり気にしており、いままでの言動を忘れていない、というのです。また、韓国は内閣制度の日本に比べて大統領の権限が強いので、さらにそういう部分を気にしている、と。趣旨はともかく、気にしているのは事実でしょう。最後に、それでも日本は日米韓協力など、韓国との幅広い協力を強く望んでいて、その路線を変えることはないだろう、とのことです。
さて、どうでしょうか。いつものことですが、日本が日韓関係を重視しているのは間違いないと思います。よほどのことがない限り、岸田総理と尹大統領の頃の路線を続けようとするでしょう。ただし、また文在寅政権のときのようになれば、そのときはどうなるのか、それは変わるでしょう。程度の差こそあるかもしれませんが、まず日本の世論が動くでしょうし。日米韓協力もそうですが、要するに政権がどんな外交・安保路線を取るのか、それを見てから「相応の出方」を調整していくはずです。これは日本だけでなく、どの国も同じでしょう。というか、そうであるように願いたいものです。ソース記事の主張を読んでみると、引用は一部ですが全体を読んでみても、「日本は韓国が大好きだから」「それでも韓国だから」という論調が一貫しています。私の読み方の問題かもしれませんが、さて、それはどうでしょうか。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・過去6ヶ月間、韓国国内の政治の変化を当事者である韓国と同じくらい関心を持って見守っている代表的な隣国の一つは、おそらく日本だろう。日韓、日米韓関係を重視し、日本の対外政策と結びついた尹錫悦(ユンソンニョル)政権が、予期せぬ事態で短い政権で終わり、不安と憂慮が増幅された。2023年から続いてきた日韓関係の雪解けムードの中で両国の相互好感度が高まり、両国国民間の交流がすでに1000万人を超え、政治、外交、安保、経済、社会、文化など多様な分野でより多くの協力を論じ、一層格上した関係を目指した両国の努力に、ブレーキがかかったからだ。今までの2年が韓日関係のアップグレードのための基盤を固めてきた時間であれば、今後の2年(ユン政権の残りの任期)はその結実を結ぶと期待されていたからだ・・
・・両側とも国内的に難しい状況に置かれているとしても、2025年の修交60周年を迎え、日本との関係を重視するユン前大統領、韓国との関係を重視する石破総理の関係を通じて、「ユン・岸田」をつなぐ「ユン・石破」、金大中・大渕の共同宣言をつなぐ第2の共同宣言、さらには2003年盧武鉉大統領以来、行われなかった国賓訪問を22年ぶりにできる機会でもあったのだ。しかし、日本の視点から見ると、このすべての機会はユン政権の退陣とともに、水の泡になってしまった・・
・・我々が注目すべき最初の、日本の現在の日韓関係に対する認識である。 2023年以後続いてきた日韓関係改善の先頭に立っていた人がユン前大統領ということであり、国内で反対する意見も多かったものの、そういう関係を導いてきたユン政権に対し、日本は堅固な信頼を置いている。言い換えれば、日本はユン政権には借りがあり、何らかの方法でそれに応じなければならないという認識が奥底に位置していた。大まかに言えば、これは「韓国」との協力というよりは「ユン政権との協力」、「ユン政権に対する呼応」だ。しかし、新しい政権がユン政権ほど日本との関係を重視するかは未知数だ・・・・議員内閣制である日本は、大統領制の強力な権限に注目している。特に、外交・安保分野に与えられる大統領の影響力は、大統領個人、大統領の側近の認識ともつながっており、彼らの主な考え方が及ぼす影響力に注目する。
次期政権の対日政策において、各候補者が日本に対してどのような認識を持つのか、各候補陣営内の外交・安保分野参謀は誰であり、彼らの認識はどのようなのか、次期安保室長、外交長官、駐日韓国大使は誰になるかに注目していることも、このような認識を反映する。さらに一歩進んで、現在、国会の多数党、第一党から大統領が選出される場合、国会の多数の支持を背に上げた大統領は、文字通り「何でもできる」大統領になるという懸念も存在する。実状がこれと異なるとしても、強大な国会の支持を得る大統領に対する不安でもある。
これは来る7月に行われる参議院選挙の結果にかかわらず、依然として少数与党である自民党の現実と、不確実な石破政権の持続可能性を考慮すると、日本が一歩さらに積極的に進むことができない現実を反映することでもある。それでも、日本内には韓国との友好的な協力関係を維持しなければならないという幅広いコンセンサスがある。これがまさに三番目の日本の認識だ。世界的に行われているトランプ発関税問題と国際情勢の不安定さの中で、日本と同様の立場に置かれている韓国との協力は、日本にも重要なのだ(時事ジャーナル)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。