本題に入る前に、いつもの関税関連でニュースがありました。3日の選挙で政権交代になった場合、さっそく対米関税交渉チームとそのリーダーを新しい人にするという内容です。いままで関税交渉を担当していたのは、韓悳洙(ハンドクス)大統領権限代行、崔相穆(チェサンモク)経済副総理、そして安德根(アンドクン)産業通商資源部長官でした。3人の中の二人は大統領選挙出馬と、野党側の圧力で、もういません。アンドクン長官だけが残っていましたが、彼も与党側の人だからか、すぐに通商部門のリーダーを別の人に変える、とのことです。引用はしまでんが、ヘラルド経済(1日)などが報じています。もちろん新しいチームでスタートするのもいいかもしれませんが、韓国において政権交代は「世の中がひっくり返る」ことなので、既存の協議・交渉路線をそのまま受け継ぐことはないでしょう。
6月4日にスタートする政権が、7月9日までなんとかなるのか。注目ポイントになりそうです。で、本題です。先月末あたりの支持率調査で、「まだわからない」という話も出てはいますが、まだまだ最有力候補である、共に民主党の李在明候補。個人的にも、この人が選ばれるのではないかと思って、関連内容を増やしつつあります(もし異なる結果になっても、多数党ということには変わりがないので、経済政策としてある程度は影響を及ぼすことになるでしょう)。今回は、「335公約」を紹介します。マネートゥデイ(5月28日)などによると、337でもなく335とは、なにか。AI(人工知能)世界3大強国、潜在成長率3%、国力世界5大強国のことです。AIは前から3大強国としてきたのに、これだと3大じゃなかったということになるのではないか、な気もしますが(笑)。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・李在明 共に民主党候補が掲げた経済分野の青写真は、「335」と要約することができる。 AI(人工知能)3大強国、潜在成長率3%、国力世界5強という目標が、公約集に盛り込まれた。共に民主党はこれを国の「真の成長」と表現した。李候補は、公約履行に210兆ウォン程度が必要と予想されているとし、租税支出調整などで財源を確保すると明らかにした。共に民主党が28日発表した政策公約集「これからが本当の韓国」によると、共に民主党の大統領選挙公約は、回復と成長、幸福という3つの軸で構成される。特に経済成長分野は、「技術主導成長」、「皆の成長」、「公正な成長」という3大戦略を土台に、多様な政策方向を盛り込んだ。
これは文在寅(ムンジェイン)政権の「所得主導成長」、「革新成長」、「公正経済」など3大経済政策の方向と、形としては類似している。ただし、各論では違いを見せる。何より、AIなど技術覇権競争が繰り広げられている状況で、技術主導成長が前面に登場したのが目立つ。国民すべての力量を育てなければならないという「皆の成長」を提示したのも、時代精神を反映する。詳細には、具体的な目標を提示している。まず、現在7位圏と分類されるAI能力を「トップ3」水準に上げるという計画だ。尹錫悦(ユンソンニョル)政権でもAI 3大強国を目標に提示しただけに、宣言としての目標にもなると思われる・・
・・潜在成長率目標値は3%に打ち出した。潜在成長率とは、労働力と資本などすべての生産要素をすべて投入したときに物価上昇を誘発せずに達成できる成長率を意味する。ある国の「実力」を見積もることができるのが潜在成長率だ。韓国の潜在成長率は最近下落傾向だ。出生率などの余波で、今後の潜在成長率の見通しも下がりつつある。韓国開発研究院(KDI)は今年の潜在成長率を1%台後半と推定している。その後、徐々に低くなって、2030年には1%台前半まで下がるというのがKDIの判断だ。共に民主党は、未来戦略産業を育成して成長動力を強化するという目標だ。
潜在成長率が中長期的流れの中で議論される数字ではあるが、成長率目標値を公約として提示したこと自体だけでも、李候補の意志を垣間見ることができる。李明博(イミョンバク)政権が経済成長率7%達成など「747公約」を打ち出して、数多くの批判を受けたこともあるだけに、経済政策の数を目標に提示することには慎重でなければならないという意見が多かった。共に民主党が提示した主要政策の財源調達方式は、これといって目立たない。低出産対策などで減税基調がはっきりした中、国税減免率の法定限度遵守を通じて追加財源を設ける計画を明らかにした。国家財政法は、国税減免率が法定限度(直前3ヶ年度の平均国税減免率に0.5%pを加えた数値)以下になるよう努力しなければならないと規している(マネートゥデイ)・・>>
租税支出を調整するというのは、いままでの租税支出を減らす、または既存の何かの減免措置を廃止する必要があります。ホテル経済がどうとかで財政出動するとか言っていた人が、これと両立できるのでしょうか。他にも、特定地域でしか使えない「地域貨幣」を発行するとし、「ノーベル平和賞がもらえそうな政策だ」と自分で言っています(ファイナンシャルニュース、5月30日)。といっても消費クーポンみたいな形になるのではないか、そんな気もしますが。ちなみに引用部分に747公約というものがでてきますが、これは李明博政権の公約でした。世界7大国家(G7レベル)、10年内国民所得4万ドル、成長率7%です。 明日はまた1日休みをいただきます。次の更新は、3日(火曜日)11時頃になります。次の更新日が、大統領選挙です。早いものですね。ついこの前までユンたんがどうとか書いていましたが。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。