韓国、60代でも右・左の支持率がほぼ同じに・・40~50代は大差で李在明候補を支持、20~30代は「第3の人物を待つ」か

さて、公式データには無かったので(※年齢性別による得票率関連は非公開だそうです)、出口調査結果でのデータになりますが、今までの大統領選挙の各年齢代の支持候補を振り返って、それぞれの世代の認識の変化について考えてみたいと思います。まず、あまり昔のことを掘り返しても意味がないので、18代大統領選挙(2012年朴槿恵候補当選、右側勝利)、19代大統領選挙(2017年文在寅候補当選、左側勝利)、20代大統領選挙(2022年尹錫悦候補当選、右側勝利)、そして昨日の21代大統領選挙(2025年李在明候補当選、左側勝利)のデータを参考にしたいと思います。昨日の選挙をもっとも比較対象になるのは、やはり時期的にもっとも近い2022年の大統領選挙(20代)でしょう。その前の2017年の大統領選挙(19代)の場合、前任者の弾劾による選挙だったという点では、今回と同じです。しかし、ちょっと異なる部分もあります。2017年は、文在寅候補の支持率が圧倒的だったからです。

昨日の選挙は、李在明候補に、2017年の文在寅候補ほどの圧倒的な支持が集まったとは言えません。言い換えれば、弾劾があったとはいえ、2017年ほど保守側の支持率が下がっていたわけではありません。似ている部分もあるし、そうでない部分もある、といったところです。ちなみに、18代(2012年)と20代(2022年)は、支持率において接戦とされました。で、本題ですが・・一般的に韓国では、「60代以上は右(保守)支持が強い」とされてきました。しかし、2000年代になってから金大中(キムデジュン)政権が始まり、いわゆる左派政権が誕生し、もう25年が経ちます。その間、政権交代を繰り返しましたが、残念ながら右側の大統領二人が弾劾されるという、ちょっと普通では考えられない展開になりました。それらの影響もあってか、年齢代による支持候補も、変化しています。個人的に、左側に有利な方向に変わりつつあると思っています。それでは、出口調査から、年齢代別のデータを見てみましょう。




 

2025年(21代大統領選挙)70代以上:李在明(イジェミョン)候補34.0%・金文洙(キムムンス)候補64.0%・李俊錫(イジュンソク)候補1.5%。(以下の各段落、21代大統領選挙結果はそれぞれ李在明候補・金文洙候補・李俊錫候補の順になります)。「70代以上」は、相変わらず右側、詳しくは「国民の力」(党名は何度も変えてきましたが)という政党の候補をことがわかります。いままでと同じパターンだと言えるでしょう。20代選挙のときには、左側の李在明候補28.5%・右側とされる尹錫悦候補69.9%という、いまよりもさらに圧倒的な右側支持でした。ちなみに、沈相奵(シムサンジョン)という人が正義党から出馬していましたが、これは共に民主党よりもさらに左寄りの政党です。沈候補の「70代以上」得票率は0.8%でした。朴槿恵大統領の弾劾で行われた19代選挙でも、左側の文在寅候補22.3%・右側の(ホンジュンピョ)候補50.9%・「どちらかというと右側」とされる「国民の党」安哲秀(アンチョルス)候補22.7%でした。全ての年齢で見ると、出口調査結果が、文候補41.4%(実際は41.1%)、洪候補23.3%(実際は24.0%)だったので、この年齢代だけ、どれだけ洪候補の支持率が高かったのか、よくわかります。これもまた、自由韓国党(国民の力の当時の党名)があってこその結果、とも言えるでしょう。18代大統領選挙では、70歳以上というカテゴリーがありません。

 

2025年(21代大統領選挙)60代:48.0%・48.9%・2.3%。「60代」は、右側とされる李俊錫候補への票を考えるとしても、かなり保守支持が弱くなってきたと言えます。一時は、保守支持の象徴的な年齢代でもあった60代ですが、これも時代の流れ、でしょうか。20代大統領選挙では、左側「共に民主党」李在明候補32.8%・右側「国民の力」尹錫悦候補64.8%でした。沈相奵候補は1.8%。19代大統領選挙でも、文在寅候補24.5%・洪準杓候補45.8%・安哲秀候補23.5%と、これまた当時の雰囲気では考えられないほど、右側を支持していた年齢層です。18代大統領選挙では、先述の70歳以上も含めて「60歳以上」になっていますが、右側の「セヌリ党(国民の力の当時の党名、懐かしいですね)」朴槿恵候補72.3%・左側「民主統合党(共に民主党の当時の党名)」の文在寅候補27.5%と、こちらも圧倒的でした。今回の大統領選挙では、60代の「保守支持」は大幅に弱体化したといってもいいでしょう。まだ、若干右側支持が上回ってはいますが。




50代:69.8%・25.9%・3.3%。「50代」は、20代大統領選挙では李在明候補52.4%・尹錫悦候補43.9%・沈相奵候補2.6%でした。これまた、今回の選挙で、右側支持が大幅に減少したと言えましょう。19代大統領選挙では、文在寅候補36.9%・洪準杓候補26.8%・安哲秀候補25.4%。18代大統領選挙では、朴槿恵候補62.5%・文在寅候補37.4%でした。

40代:72.7%・22.2%・4.2%。「40代」は、20代大統領選挙では李在寅候補60.5%・尹錫悦候補35.4%・沈相奵候補2.9%でした。今回、そこまで大幅に動いたわけではありませんが、さらに左側支持が強くなったと言えます。19代大統領選挙では、文在寅候補52.4%・洪準杓候補11.5%・安哲秀候補22.2%。18代大統領選挙では、朴槿恵候補44.1%・文在寅候補55.6%でした。左派支持が若干強かったけど、それほどでもなかったと言えるでしょう。

30代:47.6%・32.7%・17.7%。「30代」は、今回(21代大統領選挙)では、なんと李俊錫候補が17.7%という大健闘を見せています。これは、30代だけでなく20代でも同じで、これは本当に支持を集めているというより、「李在明候補にも、金文洙候補にも票をあげたくない」という考えによるものだと、私は見ています。19代大統領選挙の安哲秀候補にも、似たような現象がありました。むしろあのときのほうが、全ての年齢の人たちが「彼にかける」という気持ちが強かったと言えるでしょう。でも、そんなふうで集まった票が、実際の「一定した」支持に繋がるはずもなく、いまは、安哲秀さんは、そこまで有力な政治家だとはちょっと言えない状況になっています。これまた個人的な意見ですが、李俊錫さんへの支持も、そう長続きはしないだろうと、私は見ています。20代大統領選挙では、李在寅候補46.3%・尹錫悦候補48.1%・沈相奵候補3.8%でした。19代大統領選挙では、文在寅候補56.9%・洪準杓候補8.6%・安哲秀候補18.0%。18代大統領選挙では、朴槿恵候補33.1%・文在寅候補66.5%。

 

20代(20代以下):41.3%・30.9%・24.3%。「20代(20代以下)」では「第3の候補」を求める傾向が更に強く、なんと李俊錫候補が24.3%も得票しています。20代大統領選挙では、李在寅候補47.8%・尹錫悦候補45.5%・沈相奵候補4.4%でした。19代大統領選挙では、文在寅候補47.6%・洪準杓候補8.2%・安哲秀候補17.9%。18代大統領選挙では、朴槿恵候補33.7%・文在寅候補65.8%で、全般的に若い人たちは左支持が強いけど、他の年齢層とはちょっと異なり、右も左ももうやだこの選挙的な考えが強く、「政党」メインではなく、第3の候補を求める傾向が強いと言えるでしょう。また、同じ20代でも、男性は李在明候補24.0%・金文洙36.9%・李俊錫候補37.2%だったのに比べて、女性の場合は李在明候補58.1%・金文洙25.3%・李俊錫候補10.3%と、支持傾向が大きくズレているのが特徴です。他の年齢台はそれほどでもありませんが、20代と30代でこの現象が目立っており、30代でも男性は李在明候補37.9%・金文洙34.5%・李俊錫候補25.8%、女性は李在明候補57.3%・金文洙31.2%・李俊錫候補9.3%でした。李在明候補、モテモテですね(笑)。




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