津寛寺(ジングァンサ)という寺があります。2023年、岸田総理が訪韓して日韓首脳会談が開かれたとき、尹錫悦大統領の金建希(キムゴンヒ)女史と岸田裕子女史が、ここで親睦会のような形でお茶会などを開いたことがあります。2015年にもジル・バイデン大統領夫人が訪問したことがあるとのことで、結構有名な寺のようです。場所がソウルなので他の寺よりアクセスが良好という理由もあるでしょう。で、なんで急にお寺さんの話になったのかと言いますと、最近、李在明大統領のバッジによって、このジングァンサという言葉がまた話題です。それは、一般的に「津寛寺太極旗」と呼ばれる国旗(現在のものとはデザインが異なりますが)のバッジです。
2009年、この寺の中で、古い太極旗が見つかりました。独立新聞など、1919年頃の資料も一緒に入っていたとのことで、韓国では「これが31運動のときに使われた現物だ」ということになっています。あとで国家宝物に指定されました。推測ではありますが、私は、これが2015年と2023年に日米首脳夫人をここにお連れした理由だと思っています。「津寛寺太極旗」で検索すると、日本グーグルでも多くの画像がヒットしますので、参考にしてください。左上のほうがすこし焼けているのが特徴です。
この津寛寺版のもっとも大きな特徴は、31運動のときに使われた(根拠はありませんが、一緒に入っていた新聞などからその可能性があるということになっています)ことと、そして、日本の国旗である日の丸を墨で塗りつぶし、上書き(上塗り)したものである点です。韓国は政府公認で、これを「抗日意志を極大化したもの」としています。ここで、韓国政府(国家遺産庁の「国家遺産ポータル」ページの説明文)の宝物「ソウル津寛寺太極旗(Taegeukgi from Jingwansa Temple in Seoul)」について、こう説明しています。ちなみに、本ページには「Seou」になっていますが、多分ソウルの誤字(Lが書かれてない)だと思われます。以下、<<~>>が引用部分です。
<<・・「ソウル津寛寺太極旗」は2009年5月26日、ソウル市恩平区津寛寺の附属建物である七星閣を解体・復元する過程で、内部仏壇の内部壁体で発見されたもので、太極旗といっしょに包まれていた独立新聞類19種類が見つかった・・・・(※それらは)1919年6月6日から12月25日までに発行されたものであり、そこから、31運動が起き、大韓民国臨時政府が樹立された1919年頃に製作されたものだと推定される・・・・津寛寺太極旗の最大の特徴は、日章旗の上に太極と4卦の形状を墨で上塗りして抗日意志を極大化したという点だ。特に、左上の部分の端が火に焼けており、いくつかの場所に穴が開いた跡があり、万歳運動の当時またはその後の現場で使用された可能性が非常に大きい。
したがって、現在1919年に製作された太極旗がほとんど知られていない状況で、この太極旗は1919年に製作された実物という自体だけでも重要な意味がある。また、津寛寺太極旗とともに発見された独立新聞類にも、太極旗と太極文様および太極旗関連の記事が載っており、さらに意義がある・・・・仏教寺院が独立運動の背後や拠点地として重要な役割を担ったという事実を語ってくれる。形態上でも、日章旗の上に太極の青色部分と4つを黒色を墨で上塗りして抗日独立意志と愛国心を強烈に表現し、日章旗の上に太極旗を描いた唯一かつ最も古い事例という点で、独立運動史で占める象徴的意味が非常に大きい・・>>
で、韓国の禹元植(ウウォンシク)国会議長がこの旗の形をしたバッジを、李在明大統領にプレゼントしました。ウ議長は、2月28日、国会議事堂の壁に大きな津寛寺太極旗を掲げ、独立運動家たちを招待してイベントを開いたことがあります。67歳の方ですが、戒厳令のとき、国会のフェンスを乗り越えて中に入る姿が話題になったことがあります。6月6日のアジア経済によると、李大統領はこれを「本当に意味があるもの」としながら、もらった後に、ずっとこれを付けています。公式の場でも。以下、引用してみます。あ、そして・・休んだばかりなのに恐縮ですが、今日の更新はこれだけになります。次の更新は明日(11日)の11時頃になりますので、ご理解のほどをお願いします。
<<・・イ・ジェミョン大統領が就任後2日連続で国旗バッジを付けたまま公式の席上に登場して注目を集めた。6日、李大統領は、ソウル顕忠院で開かれた第70周年記念記念式典に出席したとき、このバッジをつけていた。李大統領は5日、初の国務会議でも該当バッジを左胸に付けて参加した。このバッジは「津寛寺太極旗」を形象化したものだ。一般的な太極旗の形状とは異なり、左上隅の一部が焼かれた形状が特徴である。抗日運動現場で実際に使用されたと推定される痕跡がそのまま残った津寛寺太極旗の形を取ったのだ・・
・・ウウォンシク国会議長は4日、ソウル国会で開かれた大統領就任記念昼食会でこのバッジをプレゼントし、李大統領に直接付けた。ウ議長は社会関係網サービス(SNS)を通じて「今こそ国のアイデンティティを立て直す重要な時という意味で、31運動の際に使用した津寛寺保管太極旗バッジをつけた」と明らかにした。それと共に、李大統領がこのバッジをもらった後、「本当に意味のある太極旗だ」と喜んだという(アジア経済)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。