これ、2023年頃に本ブログでも何度か取り上げた案件ですが、米国側はサムスン電子、SKハイニックス、TSMCの中国工場への半導体装備(製造装置)搬入を制限するという話がありました。当時、尹政権が「全力で」この件をなんとかしようとした、とされていました。結果、生産能力の拡大、事前のリスト作成など一定の制限を付けて、サムスン電子などの中国工場への半導体製造装置は搬入は許可されるようになりました。尹政権は「何も変えないで」としていましたが、そこまでは出来なかった、とも。それもそのはずで、2024年9月時点のSBSニュースなどによると、サムスン電子のNANDフラッシュは、中国の西安工場での生産割合が2021年29%、2022年36%、2023年37%と着実に上がり、2024年には40%を記録する見込み、となっています。
同期間、SKハイニックスのDRAMの中国の無錫工場での生産比重は49%、47%、42%などに下がったものの、2024年にも40%を上回っています。記事によると、「半導体分野の中国海外直接投資(FDI)の割合は2022年80.8%から昨年0.8%に下がりましたが、中国での追加的な事業拡張や設備投資が制限されているだけで、既存の工場稼働は維持したからだと分析されています」とも。そんなところですから、尹政権も全力になっていたのでしょう。いまの製造装置搬入はVEU(検証されたエンドユーザー)方式で、特定の範囲内で、VEU向けの輸出(中国の自社工場への搬入)において、「個別ではなく一括で」認められる方式です。ただ、なんでもリストに書けばいいわけではなく、米国商務省と協議してリストを作成します。
ですが、米国側はこの措置を強化するつもりで、すでにサムスン電子、SKハイニックス、TSMCにその事実を通知した、というニュースがありました。電子新聞(21日)などが報じていますが、オリジナルはウォール・ストリート・ジャーナルです。まだ決定したわけではないけど、方針はすでに通知済みで、米国側は、現在のVEU方式を撤回しようとしている、すなわち特例措置を取り消し、普通に個別輸出(搬入)にしようとしている、というのです。最終的に決める前に、企業側の意向を聞いたのかもしれません。どんな結果になるかはまだ分かりませんが、この流れはこれから強くなるしかないでしょう。というか、いま米国はサムスン電子、SKハイニックス、TSMCに関連措置の「猶予(搬入を許可)」をしているわけなので、猶予がそう長く続くはずもありません。実際、トランプ大統領が当選した直後にも、マネートゥデイ(2024年11月6日)など一部のメディアが「中国工場への搬入は大丈夫なのか」という記事を載せたりしました。複数のメディアの記事、<<~>>で引用してみます。
<<・・米国政府がサムスン電子・SKハイニックスの中国工場に米国産半導体装備(※製造装置)供給を制限する方針を通知したと、ウォールストリートジャーナル(WSJ)が20日(現地時間)報道した。WSJによると、米国商務省輸出部門責任者であるジェフリー・ケスラー産業安保担当次官は、今週サムスン電子・SKハイニックス、台湾TSMCにこのような方針を伝えた。ケスラー次官は3社の中国工場に米国装備供給の際に毎回許可申請をしなくてもよい現在の措置(※VEU制度)を撤回しようとする、と明らかにしたとWSJは伝えた。米国政府は、ジョーバイデン前大統領の時に中国半導体工場に米国産の先端半導体機器輸出を事実上禁止した。ただし、サムスン電子とSKハイニックスなど韓国企業など主要企業の中国工場はその適用を猶予した・・
・・「検証されたエンドユーザー(VEU)」規定を通じて、米国政府が事前に承認した企業の指定された品目については、別途審査なしに輸出を許可する方式だ。サムスン電子とSKハイニックスはVEUと認められ、米国産の装備を持ち込むのに大きな問題はなかった・・・・ドナルドトランプ政権の今回の通知は、韓国と台湾半導体企業の中国工場に米国産先端半導体装備が入るのを強く統制するための布石と解釈される。施行されると、許可手続きを通じて先端装備の搬入まで不許可になることもある(電子新聞)・・>>
<<・・対中強硬基調が半導体輸出を低下させるという観測も出ている。国内メモリー・ファウンドリ企業は中国IT顧客社の売上に依存する部分が大きく、国産製造装置の最大輸出国も中国だ。トランプ元大統領の核心公約である対中関税(最大60%)が現実化すれば、中国セット(完成品)の対米輸出が減り、中国に中間財を輸出する国内企業の売上減少も避けられない。中国に拠点を保有している国内半導体企業の生産施設が「シャットダウン」される可能性もある。米国政府は現在、国内企業の工場に例外的に先端装備の搬入を許可しているが、トランプ当選後の強力な装備の搬入が止まる可能性があるためだ。サムスン電子は西安工場で全体NANDフラッシュの40%を生産中であり、SKハイニックスは無錫と大連でDRAMの40%とNAND20%を作っている(マネートゥデイ、2024年11月6日)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。