韓国、全国民に1万5千円~5万円の「消費クーポン(商品券)」支給・・その効果は

李在明大統領の経済政策の中で、もっとも素早く動いているのが債務の帳消しと消費クーポン(商品券)のバラマキです。ちゃんと成果が出せるならいいですが、今までも何度か似たような政策があったけど、これといった効果はありませんでした。聯合ニュース(22日)、韓国経済(15日)が記事を載せているので、まとめてみます。ちなみに、ソース記事はクーポン関連なので、債務蕩減(帳消し)について私見を書きますと、同じことがいままで何度も何度もありました。しかし、家計債務関連で何か好転したという話はありません。今回は、いままでよりずっと大規模になる、という話もあります。いままでは「~万人分」と言っても、実際に債務の調整を受けた人はそれよりずっと少なかったけど、今回は本当に110万人以上の対象に「やるぞ(おーっ)」ということらしいです。はてさて。

李在明大統領は京畿道知事だった頃から、「地域貨幣(地域通貨)」として、その地域でしか使えない商品券(韓国では主に消費クーポンと言います)に熱心でした。それが地域経済を活かすことになる、というのです。京畿道の研究団体などはすごく高く評価していますが、韓国経済の分析によると、思ったほどの効果はなかった、とも。他の地域の消費を減らすだけで、全国単位で見るとさほど変わらないというのです。ソウルでは、「地域通貨」の多くが「塾の費用(私教育費)」で消えるなど、思っていたのといろいろ違う、とも(零細自営業者などが元気になるイメージでしたが)。また、非公式な取り引きで、クーポンの額面より安い価格で「現金化」する人も多いと指摘されています。さて、帳消し+クーポンコンボ、どれだけの効果を出すのか。以下、各紙から<<~>>で引用してみます。




<<・・政府が、二次追加経済予算案で全国民に15~50万ウォンずつ民生回復消費クーポンを支給することにして、実際の消費進行効果に注目が集まっている。新型コロナ支援金関連の研究結果では、新規消費創出効果が概ね20~40%と分析された。政府も同様の水準と推定することが分かった。政府が投入したお金の20~40%が新しい消費として創出され、残りは既存の消費を置き換えたり、貯蓄したということだ。専門家たちは22日、今回の民生回復消費クーポンも40%ほどの消費傾向が現れるだろうと予想した。4人世帯が100万ウォンを受け取れば40万ウォンが追加消費につながるわけだ。

クーポンは2回に分けて支給され、1・2次を合わせれば1人当たり支給クーポン額は、所得上位10%(512万人)が15万ウォン、一般国民(4千296万人)25万ウォン、次上位階層(※生活保護などの「基礎受給者」よりひとつ上の所得層、38万人)40万ウォン、基礎受給者(※生活保護など、271万人)50万ウォンだ(聯合ニュース)・・>>

 

<<・・イ・ジェミョン政権の発足で、イ・ジェミョン大統領の代表ブランドである「地域愛商品券(地域通貨)」が全盛期を迎える見通しだ。政府はすでに1人当たり25万ウォンの民生回復支援金を地域通貨で支給することにして2次追加経済予算案を組んでいる。京畿道城南市をはじめ、地方自治体が地域通貨を本格的に発行し始めて、もう10年が過ぎた。地域通貨の経済的効果は、まだ明らかにされていない。地域経済を活性化するという分析があるが、また、近隣自治体の消費を取ってきただけだという反論も少なくない。李在明政権の任期5年間、地域通貨の経済効果を検証する巨大な実験が繰り広げられるだろうと経済学界は見ている・・




・・(※京畿道の団体など一部では地域通貨を高く評価しているが)2020年租税財政研究院は「地域通貨の導入が地域経済に及ぼす影響」という題の報告書を通じて、初めて地域通貨の経済的効果を全国規模で分析した。調査範囲を地域から全国に広げた研究結果は、それまでのものとは全く異なるものだった。租税研究院は「2010~2018年の全国事業体全数調査資料を用いて分析した結果、地域通貨の発行による有意な地域経済活性化効果は観測されなかった」と結論付けた。地域通貨が隣の自治体の消費を引き付けるゼロサムゲームに近いということだ。

地域経済を意味的に活性化できるかどうかについて、意見は様々だ。地域通貨のほとんどが、学院費(※塾の費用、私教育費)と病院費に使われ、既存の消費を代替するだけで(※肯定的に評価する側は、既存の消費を代替するのではなく、新しい消費を創出する側面が大きいとしています)、私教育と過剰診療を増やすだけだという懸念も提起される。今年1~5月、ソウル市の地域通貨使用額4886億ウォンのうち、学院費(教育)と病院費が占める割合が2176億ウォンで、45%に達した。市場価格より安い値段でも地域通貨を現金化する、いわゆる「現金カン」問題も後をたたない(韓国経済)・・>>

 




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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