止まらない賃金未払い・・「労働人口2倍の日本の20倍」、政府が代わりに支給するも回収率は3割未満

毎年増加していく、韓国の賃金滞納問題。新しいデータがあったので、もう一度取り上げてみます。前にも何度か同じ趣旨の内容を書いた記憶がありますが、数年前までは、こういう問題は「1年に2回」ニュースが一気にカーッと出てくるだけでした。ソル(旧暦1月1日)とチュソク(秋夕、旧暦8月15日)は、ボーナスなどで豊かな状態で両手にプレゼントを持って故郷のお父さんお母さんに訪れて3代(孫も)仲良くハハハハハ~ホホホホホ~するイメージだったからです。最近は日本旅行に行く人のほうが多いと言われていますが(私もそうでしたが、もう住んでいるのでノーカン)。でも、いつからか、このニュースがしょっちゅう報じられるようになりました。これはこれで、マスコミの昨日として良いことではないでしょうか。改善の兆しはまだ見えていませんが。

「どんな理由があるとしても、労働人口が2倍の日本の、20倍を超える賃金未払いは、納得がいかない」。22日、アジア経済がこんな記事を載せました。ちなみに、2倍と言っていますが、労働人口で検索してみると、日本の場合は約7000万人、韓国の場合は約3000万人だそうです(労働人口には失業者が含まれます)。政府が基金を動員してまず支払うことにしていますが、規模が膨大で、しかも本当に事業者が事業に困っていて給料を出せずにいる場合も多く、回収率(先に政府が支給し、あとで事業者側から受け取る率)は3割にもならない、とのことです。以下、<<~>>で引用してみます。




<<・・(※導入部の見出し)「昨年初めて2兆ウォンを突破した賃金未払い額が、今年4月基準で8000億ウォンに及び、最大値の更新を控えている。景気問題で仕方ない部分があるとしても、労働人口が2倍の日本の20倍を超える賃金未払い金額は、そう簡単には納得できそうにない。どうして賃金滞納がこんなに多く、「そうなりやすい」国になったか、原因を追跡してみた(※引用部分にはありませんが、関連した話でいつも出てくるのは、まず人件費というものを重視しない風潮、関連法規が弱いこと、長引く不景気、債務中心の発展などが指摘されています)。

事業主が労働者に支給できなかった月給を国家が代わりに出す「代支給金制度」の利用が増え、その財源である賃金債権保障基金が急速に枯渇している。故意に賃金を滞納する事業主は多くなっているが、政府が代理で支給した後にその分をきちんと回収できず、賃金基金の消耗速度が速くなっているのだ。基金不足分を毎年税金で埋めているが、回収率を高めることができる明確な方法がなく、税金のムダ遣いという批判も出ている・・

 




・・簡易代支給金は、会社は破産してないけど一時的な経営資金難などで賃金を滞納されたときに申請でき、1000万ウォン限度まで受けることができる。事業場が倒産した場合、申請する倒産代支給金は最大2100万ウォンを支給限度とする。昨年、代支給金7242億ウォンも、10年前(2014年2632億ウォン)の2.7倍水準で跳ね上がったが、今このスピードなら、今年の代支給金規模は昨年より多く9000億ウォンまで上がることができる。最近5年(2020~2024)間の年平均大支給金は6000億ウォン程度だ。業種別では製造業で722億4900万ウォンで最も多い大支給金が支給された。続いて運輸・倉庫・通信業(46億2300万ウォン)、建設業(32億1900万ウォン)、農業6億6800万ウォン、金融及び保険業2億6400万ウォンの順だ。

特に、全体の代支給金の57%に相当する1338億2700万ウォンが、人口と雇用が集中したソウルと京仁地域(※首都圏である京畿道と仁川のことで)から出た。続いて釜山329億ウォン、光州285億ウォン、大田183億ウォン、大邱146億ウォン、江原47億ウォンの順だ。問題は、代支給金の支給が増え、賃金基金の規模が大幅に縮小していることだ。 2020年に6798億ウォン規模だった林債基金は、2024年に3240億ウォンまで減った。債券・株式などで行われる基金運用収益率が最近5カ年平均で4.41%水準なのに、同じ期間、基金は事実上、半分以上が減少してしまったわけだ。政府は、事業主の賃金滞納で穴を開けられた基金財政を、税金による追加予算で埋めている。4月国務会議で代支給金予算だけ819億ウォンを充当した。昨年も2216億ウォンを会期中に引き入れた(アジア経済)・・>>




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。