李在明政権、「前政権の政策に対して反省が足りない」などの理由で各省庁の業務報告を受けず

いままで何度も『上と下が入れ替わるだけ』というフレーズを使ってきました。根本的なことは何も変わらず、ただ、上と下に二分された両勢力の立場が入れ替わるだけ、という趣旨です。韓国社会の多くの分野で見られる現象です。特に政権交代が起こればこの現象は著しくなります。今回、李在明政権の国政企画委員会という組織が、各省庁を強く批判し、業務報告すら受けないでいる、と話題になっています。各省庁が報告した業務内容に問題があるなら、そんなこともあるかもしれません。しかし、朝鮮日報、デジタルタイムズなどの記事によると、「前政権の政策失敗に対する反省が足りない」なども理由だ、とのことでして。簡単に言うと、もっと前政権の政策を認めない内容を報告せよ、というのでしょう。

もともとは「大統領職の引受委員会」という組織が、選挙が終わってから政権が変わるまで大統領の職務を引き継ぐためにいろいろと仕事をしますが、今回は大統領が不在状態だったので、この国政企画委員会が、政権が始まってから「引受委員会」のような役割をしています。すなわち、引き継ぐことが本来の役割です。一部のメディアは(中には左側とされるメディアも)、彼らを「まるで占領軍のようだ」としています。李在明大統領が前に米国に対して同じ発言をしたことがあるから、でしょう。この話になると、2020年4月28日、朝鮮日報が「世の中が変わったことを確実に知ること」という記事を引用したくなります。今年6月22日~24日にも関連記事がありますが、今日は2020年の記事を引用してみます。なんというか、「わかりやすい」内容ですので。




同月15日、総選挙で左側が勝利しました。朴槿恵大統領の弾劾の影響が強く残っているし、右側はちゃんとしたリーダーシップを発揮できる人物がいませんでした。このときの影響を、2024年の総選挙で覆せなかったのが、尹錫悦政権の命運を決めたという話をよく耳にします。今読み返して見ると、記事は「選挙で勝つことも負けることもあるだろうが、このまま流れが固まったような印象を受ける」とする趣旨も書いていますが・・少なくとも今のところは、その予想があたったとも言えるでしょう。尹政権になってから、地方選挙では保守側が勝つこともありましたが、国会議員選挙では連続で左側が勝利しています。来年の地方選挙(自治体の長などを選ぶ全国同時選挙)ではどうなるのでしょうか。

で、当時の、2000年4月の選挙で、大統領府(最近は大統領室と言いますが)の選挙介入や曺国氏関連の捜査で起訴された3人が、なんと国会議員に当選しました。その中の1人、チェ・ガンウク(前)青瓦台公職規律秘書が、尹錫悦早朝率いる検察側に対して遺憾を表明しながら、『世の中が変わったことを思い知らせてやる』と話して、話題になりました。記事はそのことで、「何度も聞いた言葉だ」「40年間、世の中は10回は変わったが、そのたびにその言葉を聞いた」としています。その後に尹総長が大統領になりましたが、いまは・・当時、チェ議員が言ったとおりになったと言えなくもない気がします。以下、<<~>>が引用部分になります。




<<・・「世の中が変わったことが確実に分かるように、返してやる」。今回の総選挙で当選したチェ・ガンウク前青瓦台公職規律秘書官が、ユン総長率いる検察にて投げた革命公約である・・・・私たちの現代史は、何度も世の中が急激に変わった。1950年6月28日の朝、ソウルには北朝鮮軍のタンクが走った。その後に私服姿の青年たちが腕に赤い腕章を巻いたまま集まって(※当時、北朝鮮側に付いた人たちのこと)、世の中が変わった・・・・1960〜61年には3・15不正選挙(※李承晩政府の不正選挙)、4・19革命(※李承晩氏を追い出した大規模デモ)、5・16クーデター(※朴正煕氏の軍事クーデター)があった。自由党・民主党の高官たちが次々と逮捕された。

1972年に維新(※憲法改正による朴正煕政権の戒厳令強化期間。明治維新に憧れてつけた名前だと言われています)があった・・・・1980〜81年には新軍部(※全斗煥軍部)が入った。1987年には民主化(※国民が直接参加する大統領選挙改憲)があった。40年の間に、ざっと世の中は10回は変わったわけだ。そのたびに、間違いなく耳に入ってくる言葉があった。「世の中が変わったことを知らないのか」。もうそのセリフを聞かなくてもいいのかと思っていたが、あっさりまた言われたわけだ(朝鮮日報、2020年4月28日「世の中が変わったことを確実に知るということ」より)・・>>

なんというか、右側も似たようなことしますけど(笑)。そういえば、同じ流れの話として、尹錫悦前大統領に対する逮捕状が請求されました。しかし、裁判所はこれを棄却し、与党(共に民主党)としては、ちょっと驚いている様子です。しかし、28日に出頭を要請している、とも。いずれ、通るのでしょう。複数のメディアが、「前大統領と、前大統領夫人のダブル逮捕もありえる」とワクワク(?)している、今日この頃です。候補だった頃から「統合」を強調してきた李政権、果たしてそれは「統合」なのか、それとも「占領」なのか。結果が気になるところです。




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。