各政権の通過儀礼のようなものですが、李在明政権もまた、住宅価格上昇を抑えるための政策を出しました。すなわち、家計債務対策でもあります。いままで、ほぼ全ての政権が似たような政策を出しましたが、住宅価格は上がる一方でした。今度こそ効果が表れるのか、効果があるなら、それが韓国経済において良いことなのか、不動産で発展した経済ではなかったのか、などなど、結果が気になる政策です。しかし、いままで効果がなかったので、今回も結局は政府が折れるのではないか、とも思われます。東亜日報など多数のメディアによると、今回の政策の核心内容は、住宅担保ローンの限度額を下げることです。首都圏と、その他の一部の地域だけ適用されます(不動産市場が過熱しているとされる地域)。どうせ住宅担保ローンで買うから、言い換えれば「ローンで買おうとしている住宅を担保にしてローンを組むから」、これは事実上、ローン全体の限度額に影響します。
限度額は、細かい既定はおいといて、6億ウォンまで(約6千万円)。それなら家を買うにも十分だろう、と思われるかもしれませんが、1億円以上が「普通」になってしまったソウルでは、そうでもありません。記事によると、瑞草区、江南区など「そっち関連で超有名な」地域によっては、借りられる金額が9億ウォン~10億ウォン(9千万円~1億円)近くも減少する、とのことでして。久しぶりに、韓国のDSR(Debt Service Coverage Ratio)についてちょっと書いてみます。これは、所得で元利金返済をどこまでカバーできるか、のことです。例えばDSR10%なら、所得の10%を債務の返済に使っているという意味です。このDSRが高いと、簡単に言えば自由に使える金が少ない、という意味になります。
韓国の「家計債務」カテゴリーに含まれる人たちのDSRは、平均で39.9%です(2023年10月16日聯合ニュースなど)。所得の約4割が、借金の返済で消えるわけです。記事時点で、「家計債務がある」と分類される人は、1,978万人。総額は1845兆ウォン、彼らのDSRは39.9%です。多重債務者は448万人。普通、DSRは借金していない人まで含めて平均を出しますが、韓国の場合は、家計債務問題が深刻だからか、家計債務がある(金額は関係ない)人たちだけで統計を出しています。
すなわちこの39.9%というのは、1,978万人分の話です。韓国の人口は約5,000万人で、経済活動参加人口は約2800万人とされています。また、重複する分もありますが、韓国では「自営業者債務」は、家計債務としてカウントしません。その家計債務のほとんどは、不動産を購入するためのものです。こんな状況ですから、政府が家計債務関連政策を出すのは当たり前ですが、いままで成功した試しがないので、なんとも言えません。以下、<<~>>で引用して見ます。
<<・・ソウルのアパートの74%が「住宅担保ローン限度6億ウォン制限」の影響(※題、ここでいうアパートは日本で言う「マンション」のことです)。政府が首都圏と一部地域の住宅担保融資限度を6億ウォンに制限する強力な融資規制が施行された初日となる、28日。銀行側が非対面式での住宅担保ローン・信用融資を全面中断させた。電算システム修正作業が必要だという理由だが、当分の間、実需要者のローンも急激に減少するだろうという見通しも出ている。ソウルのアパートの約74.3%が、今回の住宅担保ローン6億ウォン制限影響の圏内に入っており、当分の間、ソウル不動産の急上昇は抑えられると見られる。
政府が首都圏及び該当地域で6億ウォン以上の住宅担保ローンができなくする強力な規制を出してから、わずか1日で、銀行側は非対面式の住宅担保ローンと信用融資を全面中断した。システム修正作業がその理由ではあるが、一部では、銀行側が政府の規制基調以上にローン総量を減らす可能性がある、という分析も提起されている。イ・ジェミョン政権の最初の不動産対策として、ソウルアパートの74%が住宅担保ローン規制影響を受けており、ソウルの主要地域の不動産仲介会社には新規住宅買収の問い合わせも急減した。今回の融資規制により、ソウルの全アパートの約74.3%が影響を受けることも分かった。
「不動産R114」によると、27日基準でソウルアパートの平均売買相場は14億6492万(※この時点ですでに不思議体験です)ウォンだ。従前の住宅担保認定比率(LTV)70%を単純適用すれば、10億2544万ウォンまで住宅担保ローンを受けることができたが、(※新しい制限ができた今では)今では6億ウォンまでしか借りることができない。これにより、買収者が現金で調達しなければならない金額は、今までは4億3948万ウォンだったが、それが8億6492万ウォンに、2倍増えることになる(東亜日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。