他国より比較的進んでいると思われていた日米間税交渉が、停滞しています。それとも、「進んだ」からこそ両国の折り合いに限界が見えてきた、といったところでしょうか。トランプ大統領も、前から「日本は手強い」とか言ってましたが、もっと攻める必要があると思ったのでしょうか。参議院選挙もあるし、自民党としては議席減が予想されているだけに、石破政権としてはいろいろと難しい舵取りが予想されます。で、韓国メディアの記事からは、中央日報が「1日延長したのに財務長官に会えなかった」という記事を載せたり、全般的にとても喜んでいるニュアンスがビシバシ伝わってきますが、中には「米韓関税交渉が進まなくなっています(小声)」という記事もあります。
韓国では今進行中の閣僚レベルの関税交渉のことを「技術協議(関税交渉技術協議、3次までありました)」としていますが、猶予期限(7月8日)まで、米韓閣僚レベルの「技術協議」はない(4次は8日以降になる)、とのことでして。聯合ニュースTV、デジタルタイムズなどが報じています。すなわち、8日以前には電話通話しかやることがなく、「期限までの合意は難しい」「うまくできるとしても、相互関税前に戻ることはできない(いままでは全面免除を主張していたけど、それは難しい)」「長期化する」というのです。6月25日にもお伝えしたことがありますが、いままでは「全面免除」「特別待遇」を要求していました。同盟国で、FTA締結国なので、相応の特別な措置が必要だという主張でした。記事の内容はまだ政府公式の見解ではありませんが、すでに大きな方向転換が既定事実化したということになります。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・8日で米国が各国に対する相互関税猶予期限を終了する中、韓米関税交渉の見通しは依然不透明に見えます。政府は米国の関税を事実上、既定の手順と見て、交渉長期化を示唆しました・・・・当初、韓国政府は韓米関税交渉で両国の相互互恵的交渉を強調してきました・・・・ところが新政権初の交渉が終わった後、産業通商資源部の高位関係者は「相互好恵的対話ではない」とし「米国貿易収支の不均衡を解消することに目的がある交渉」と明らかにしました。この関係者は「いくら交渉をうまくしても、関税以前の、現状維持に戻ることができる可能性はほとんどないのが現実」と説明しました。
2012年の韓米FTA発効以来、両国はほとんどの品目で関税を撤廃しました。しかし、今は「高関税」をニューノーマル、つまり「新しい標準」と見て、私たちが提示できる「製造業協力」カードを中心に交渉を続けるという立場です。事実上、米国の関税は既定の手順だということです。トランプ大統領をはじめ、米国政権内で関税猶予終了時点を置いて異なるメッセージが出ている状況について、関係者は「一つ一つの発言に反応せず、最後まで最善を尽くす」と明らかにしました・・・・一方、政府は韓米関税交渉が7月8日を超えて長期戦になると見ています。産業部のハイレベル関係者は「合意(ディール)はまだ遠い」とし「7月8日以降も実質的な交渉は続くだろう」と述べました。また「関税猶予(※猶予延長)に近づくことが現時点での最も現実的な目標」と付け加えました(聯合ニュースTV)・・>>
<<・・7月8日以前には4次技術協議を開くことが難しいという立場を明らかにした中、政府は7月中に通話方式で交渉を続ける方針だ。同関係者は「まだ一週間ほど時間が残っているから、その期間も協議をしていくだろうし、関係省庁と深く協議をするだろう」としながらも「最大の猶予を引き出し交渉を続けるよう最善を尽くす」と話した。専門家たちは、トランプ行政部特有の一方的な交渉フレームに引きずられてはならないとし、造船業など製造業協力を中心に置いて韓国が交渉の主導権を確保しなければならないと強調した。
ソン・ヨングァン韓国開発研究院(KDI)先任研究委員は「トランプ式交渉は10%一括関税と自動車・鉄鋼に対する高率関税を基本前提として敷いており、これを一部撤回する代わりに相手国に非関税障壁解消など追加譲歩を要求する方式」とし「このような交渉をそのまま受け入れた場合、こちらはなにも得るものがなくなってしまう可能性もある」、「トランプが私たちに望むものとして、造船業協力は確実だ」とし、「米国も韓国以外にまさに協力代替を見つけるのが難しいだけに、これを主導的に活用する必要がある」と強調した(デジタルタイムズ)・・>> 今日の更新はこれだけです。次の更新は、明日(2日)の11時頃になります。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。