日米関税交渉が停滞している中、当事者たちも「なにをどう発言すればいいのか」で苦労しているようです。フォルケンダー米財務副長官は日本との関税交渉について「非関税障壁が問題になっている」としながらも「近日中に進捗状況を発表できると期待している」としましたが、時系列としてはその後、べセント財務長官は「日本は偉大な同盟国だが、関税交渉は難航していて、参議院選挙が制約になっている」と話しました。偉大だと思ってんならこんなやり方するなタコヤキが、と言いたいところですが。米国の株式市場ももはや某ガンダムEDみたいに「もうどうなってもいいや」モードに見えるし、この「MAGAMAGAしい」寸劇がいつまで続くのか、どういうエンディングを迎えるのか、気になるところです。
さて、韓国メディアの日本関連記事リストを見てみると、まず参議院選挙関連で、「右派とされる野党が躍進しそうで懸念される」という記事がいくつか出ています。他には、7月5日に地震がどうとかの内容の記事がかなり多いですが、「客観的に検証されていない話」など、思わしくない流れだと指摘する記事はありませんでした(私が読んだ記事の中では)。そういうのは指摘しないほうが需要があるから、でしょうか。そんな中、個人的に気になったのが、「しつけができていない」という記事の多さです。なんのことかと言いますと、トランプ大統領が日本と米国の貿易について、「spoiled」という単語を使いました。あれのことです。
これは、日本語にすると「甘やかされてきた」で、いままで条件が甘すぎた、という意味になります。確かに外交で使うには強い表現ですが、韓国では多数のメディアがこれを「しつけができていない(ボルシオップタ、ボルッが無い)」と訳しています。これは、韓国語訳として間違っているわけではありません。単語の意味だけ調べると、確かにそういう意味もあります。しかし、これは「甘い条件」を指摘する内容なので、韓国語でも「(条件に)甘えてきた」「既存の条件が甘かった」などの単語・表現があるにもかかわらず、公営放送であるKBSをはじめ、圧倒的多数のメディアが、なにかの約束でもやったかのように、「しつけができていない」という表現を使っています。意味というか、特に「ニュアンス」として全然違うと思うのは私だけでしょうか。
少数ではありますが一部のメディアは、別の表現を使ったり、またはあえて直訳を避けて「いままで両国の貿易は日本に甘い条件だった」というふうに、一つの単語ではなく、意味を説明するような書き方をしていますが、あまりにも少数です。大手だと、地上波放送のSBSが「慣らされている(慣行などを当然のものだと思うようになっている)」と訳しているだけで、他はほとんどが「しつけができていない」としています。ある意味、彼らが「もっとも聞きたがっていること」だから、でしょうか。だからこういう表現を選ぶ、いや「選ばないといけない」ということになったのでしょうか。
先も書きましたが辞典の意味としてそう書かれているのは事実なので、反論されたときに「辞典のとおりにしただけ」と言えば、逃げ道も確保できると思っているのでしょう。韓国語で「しつけ」はボルッと言います(「しつけができていない」は「ボルッが無い」)。この言葉を聞くと、まっさきにあの金泳三大統領の発言を思い出さずにはいられません。1995年11月、金泳三大統領が江沢民中国主席と首脳会談をした後、共同記者会見で「(日本のことで) 今回はボルジャンモリを叩き直してやる。それができないなら首脳会談もしない」と言いました。
ボルジャンモリは「わるふざけ」のことで、語源というか意味はボルッ(が無い)と同じで、どちらかというと、金大統領の発言のボルジャンモリのほうが、もっと強い(俗な)表現とされます。韓国では、この発言に怒った日本が、いわゆる「IMF外国為替危機」を促したという説もあります。もちろん、根拠はありません。米韓、日韓首脳会談など外交はもちろん、内政も「まだなにも始まっていない」のに支持率が60%超えている李在明政権。米韓関税交渉で、おなじことを言われるのではないか、そんな可能性は考えないのか、考えないことにしたのか、考えてはいけないのか。すなわちいつものことです。明日は1日休みをいただきます。次の更新は、7月6日(日曜日)の11時頃です。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。