李在明政権、「北朝鮮人権報告書」を非公開に転換か(ユン政権では公開)

さて、本ブログでも何度か紹介しましたが、いま李在明政権の支持率はかなり順調です。調査機関によっては、60%を超えるという結果になっています。しかし、同じく前任大統領の弾劾で当選した文在寅大統領に比べると、まだまだ低いほうです。李大統領が、盧武鉉・文在寅政権の対北宥和政策を受け継ぐだろうという見解には、ほぼ異論がありません。しかし、問題は「いつ」それをやるのか、です。来年の全国同時地方選挙(全国の自治体首長を選ぶ選挙)などを考えて、保守側が集結しやすい北関連案件では、多少は動きづらいのではないか、と。ちなみに、いま李大統領の支持率は50~60%ですが、文在寅大統領の場合は(2017年5月3週目から1週間ごとに)81.6%→84.1%→78.1%→78.9%で、圧倒的でした。また、朝鮮半島平和プロセス、米朝首脳会談という「目に見える」展開があったからこそ、派手に対北路線を展開できました。

しかし、いまの李大統領には、そこまでの支持率はなく、弾劾と言っても朴槿恵大統領の頃ほどの「圧倒的優勢」とは言えない状況なので、いつから対北宥和政策を本格化させるのか、いまのところはまだ、「とりあえず来年の地方選挙は終わってからでないと」としか言えません。ただ、大げさな政策はまだ動いていないものの、「流れ」が感じ取れる案件は、いくつも動いています。本ブログでもエントリーしましたが、北朝鮮への拡声器運用の中止、そして対北伝単(ビラ)を中止させたこと、などなどです。特に対北ビラの場合、憲法裁判所が「憲法に保障された権利である」という判断を出したこともあるのに、それをまた中止させ、しかも、あまり問題にもなっていません。




そんなところですが、昨日あたりから、「北韓(※北朝鮮)人権報告書」を非公開にする(検討している)というニュースがありました。京郷新聞、朝鮮日報など複数のメディアが報じていますが、これは、2018年から韓国政府が作成してきた報告書です。ですが、2023年尹錫悦政権のとき、なんとこの報告書を「公開」すると決め、実際、1年に1回ずつ公開されてきました。これ、韓国が政府レベルで発刊した北朝鮮人権実態関連の資料の中では、初めての「公開資料」です。南北の状況から考えて、2023年までこういうのがなかった(全て非公開だった)というほうが不思議ですが、とりあえず尹政権で初めて公開しました。

数百人の脱北者たちの証言などで構成されており、言うまでもなくその中身は散々たるもので、英語版も一緒に公開されていました。ところで、李大統領が、これを非公開にすることを検討している、と。記事によると、李政権は北朝鮮への人道的支援を想定しています。これ、文在寅政権でもよくニュースになっていたと記憶していますが・・人道的というのがどこからどこまでなのか、国連などの北朝鮮制裁案的に大丈夫なのか、そんな議論がありました。人道的支援などを行うためには、いまは完全に反応なしの北朝鮮側も何かの形で対話に応じないといけないので、今回のもそのための措置だと思われます。なんか、こうして書いていると、急に文政権のときを思い出します。以下、<<~>>で引用してみます。




<<・・イ・ジェミョン政権が、前任政権で初めて公開した北朝鮮人権報告書を再び非公開に切り替える方案を検討する、という観測が提起されている。政府が北朝鮮との対話・協力に訪点を置き、対北朝鮮圧迫手段である人権問題は「ロウキー」(低い水位)で対応するという意味になる。統一部当局者は6日、今年北朝鮮人権報告書の公開発刊の可否を置いて「まだ決定された事項がない」と明らかにした。現在報告書の草案が設けられ、傘下機関である北朝鮮人権記録センターで内部検討を進行中であり、外部検収の手続きも予定されている・・

・・李在命政権が北朝鮮との関係復元方針を明らかにしているだけに、統一部が北朝鮮人権報告書などの公開可否を原点で見直す可能性が提起されている。統一部長官が就任すれば、本格的な議論がなされるものと見られる。イ・ジェミョン大統領は3日の就任30日を迎え行った記者会見でも、「北朝鮮内の人権問題は、率直に、非常に複雑なものである」とし「私たちが、個々の事案に対して関心を持つのも必要だろうが、北朝鮮の大衆の生活を改善するために人道的支援をすることもやはり北朝鮮の人権を改善するのに役立つことではないだろうか」とした。北朝鮮に向けた圧迫ではなく、食糧など人道支援による生活の質の改善を通じた人権改善案を念頭に置いた発言だという解釈が出ている(京郷新聞)・・>>

 




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。