韓国、相次ぐ「CPTPP加入」主張・・「日韓関係の良い、今がチャンス」

「そういえば、CPTPP加入の話はどうなった?」な気がしてちょっと探してみました。実は、6月~7月あたり、同じ趣旨の記事をかなり見てきました。CPTPP加入すべき、加入しないことは考えられない、などなど。主張するメディアも専門家も機関も様々で、結構な記事が出ていました。毎日経済(7月8日)、中央日報(7月8日)、ファイナンシャルニュース(7月1日)、などです。他にも、冗談抜きで結構な数があったと記憶しています。ですが、実際になにか加入申請を決めたとか、そんな話は聞こえてきません。なんでこんなにCPTPPにこだわっているのかまでは分かりませんが、何度も何度も同じ主張が出てきました。

前から、「日本が反対している」という主張が根強く、いまでも「日韓関係が改善された今なら加入できる」と主張する専門家も少なくありません。G8(G7拡大枠、G10など)のときとまったく同じ発想で、加入しようとすればすぐにでもできるけど、反対されているので加入できないでいる、ということです。実際は、CPTPPは会員国全ての賛成が必要で、G7拡大は、それ自体が議論されたことがない、というのが本当のところですが。以下、いくつかの記事から、CPTPP加入主張をまとめてみました。一つ前のキョウドウタイキョウドウタイ主張と合わせて考えてみると、「CPTPPできそうにないから」といったところ、でしょうか。




なにせ、ここまで同じ主張が出ているのに、政府レベルの動きは、まだありません。もっとも最新情報となるのが、16日の記事ですが・・韓国の産業資源通商部長官(候補)である金正官候補のインタビュー記事(7月16日、ソウル経済)です。読んでみると、当たり前のようにCPTPP関連質問がありましたが、候補者は『米国発保護主義の拡散、サプライチェーン再編などの状況で輸出市場の多様化のために、CPTPP、インド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)など多者協定を戦略的に活用することが重要だ』、『経済的実益と農水産業などの分野に支援などを総合的に検討し、CPTPP加入について検討していく』とだけ話し、これといって目新しい話はありませんでした。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・(※パックス・アメリカーナ(アメリカ主導の国際秩序)が崩壊しているという話の後に)次に、環太平洋経済同伴者協定(CPTPP)加入を推進しなければならない。韓国経済は輸出依存度の高い小規模開放経済という特性上、安定したグローバル・サプライチェーンを備えなければならない。したがって、既存の国際貿易体制が機能しなくなっている今の状況において、最小限のサプライチェーンの安定性を確保するための基盤を築くためには、CPTPP加入が実に必要である。パックス・アメリカーナの崩壊は、韓国に安全保障、国際政治、そして経済政策の順番に影響を与えるだろう。これを総合的に見つめる目と、迅速に対応する瞬発力を通じて、パックス・アメリカーナの後に繰り広げられる未知のリスクに柔軟に対処する基盤を構築しなければならない(毎日経済)・・>>




 

<<・・「韓国を製造業大国と先進経済に牽引する上で決定的環境を提供したのは、多国間貿易体制である。れがオールドノーマル(Old Normal)になってしまった。今は、力に依存する管理貿易体制というニューノーマル(new normal)に変わっている。中国は前のノーマルを守る力がないし、米国は新しいノーマルを変えようとしないだろう。多国間貿易体制の守護だけを主張する政策では、上手く行かない。今最も高い水準のメガFTAであるCPTPP(包括的・漸進的環太平洋経済同伴者協定)は最近、イギリスが加入しながら、その存在感と地位がさらに高まった。開放された世界市場の確保が重要な韓国が、ニューノーマル時代にCPTPP体制の外にとどまることは想像できない。日韓関係が改善された今が、加入の機会だ。ただ、国内の政治的圧力を克服するかどうかにかかっている(中央日報)・・>>

 

<<・・(※国策シンクタンクKDIの)報告書は、輸出入多様化のために国家レベルの経済外交と通常協力強化を提案した。2021年から進展のない、CPTPP加入を急ぐ必要があるとも指摘した。報告書は「生産の国内化」誘導政策も提案した。報告書は「米国発の関税問題で触発された韓米の通商問題が終わるといっても、米中両国に集中している韓国の貿易構造の脆弱性はそのまま残るだろう」とし、「貿易多様化のための国家レベルの経済外交、通常協力と企業レベルの支援策が並行しなければならない」と話した(ファイナンシャルニュース)・・>>

 




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。