私は、いわゆるトランプ関税そのものが「ウィン・ウィン」を想定してのものではないと(そう信じる時期もありましたが)思っていますので、今回の日米関税合意も確かに「思ったよりはよかった」ではあるものの、あまり嬉しいとは思えません。日本政府ではなく米国政府のスタンスが問題です。とはいえ、日米関税交渉は概ね好評のようで、善戦したという話が多いようです。昨日だけでなく今朝にも韓国メディアが多くの記事を出していますが、それらも、基本的には「思ったより良い条件だった」とする内容です。特に、昨日の朝にもお伝えしましたが「私たちもこのラインで」という主張が目立ちます。ソース記事の韓国日報は、「日本をベンチマークして、私たちだけの利点をさらに加えればいい」「専門家たちは、私たちのほうが有利だと見ている」としながらも、「日本のように大規模投資を約束することはできない」とも指摘しています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・米国が予告した相互関税の猶予期間が、終了まで10日も残っていない状況で、日本が23日、米国と交渉を終えた。日本はドナルド・トランプ大統領にプレゼントをたっぷりあたえた代わりに、相互関税に自動車品目別関税まで引き下げて、実益を得たという評価が出ている。専門家らは、韓国と日本が対米輸出規模や構造が似ているだけに、日本の交渉の結果が私たちの交渉の成敗を決める一つの基準になるだろうとし、我々も同様のレベルで交渉を終えるべきだと強調する・・
・・(※今回の合意で日本側は)多くを米国側に出したものの、得たのも確かだ。自動車品目別関税を25%から12.5%に、半分ほど削った。既存の関税を含めると関税は総15%だ。自動車は2024年、日本の全体対米輸出のうち28.3%ほどを占めた。トランプ大統領が品目別関税は下げないとしてきたことを勘案すれば、今回のは意外な結果だ。対米貿易赤字国であるイギリスは自動車関税を10%に下げる代わりに最大10万台という物量制限がついたが、日本はこのような制約もないことが分かった(※イギリスの場合はもともと高級車メインの輸出で、台数制限も10万台で十分だという分析もあります)。
相互関税も25%から10%ポイントを削り、議論になっていた米市場も、関税は維持し、輸入量を増やす線で仕上げた。ジャンサンシク韓国貿易協会国際貿易通商研究院長は、日本が善戦したと評価した。彼は引き続き「自動車関税引き下げに集中して交渉をしたと思われる」とし「問題になっていた品目で一部譲ったが、完全な市場開放まではいかなかった」と分析した。日米交渉が早く終えたことを置いて、一部では、日本の参議院選挙の前に事実上(※交渉が)終わっていたのではないかという解釈も出ている・・
・・韓国には、「基準ライン」ができたわけだ。韓日両国が対米貿易黒字規模や輸出品目などが似ているからだ・・・・専門家たちは韓米自由貿易協定(FTA)で関税率が相互0%に近い点、米国が望む造船業分野での協力可能性、ジョーバイデン政権の時から着実に対米投資を増やしてきた点などで見ると、韓国が日本よりは交渉で有利だと見ている。逆に、日本のように大きな資金を米国に投資するのが容易ではないうえ、米の市場開放も難しいというのが不利な点だと口をそろえる。毎年米国米77万トンを無関税で輸入中の日本は、国別クォーターがなく、米国産の割合を増やすことができた。
一方、韓国は2019年の関税率交渉の結果に応じて、国別に低率関税割当量(※関税割当制、Tariff-Rate Quota)を通じて輸入する輸入米の規模を定めたため、米国産の輸入量を増やせば、他の国々ともまた別の調整を経なければならない。キムスドン産業研究院グローバル競争戦略研究団長は、「韓国も日本水準の市場開放は念頭に置かなければならないと思う」とし「韓国が持つ強みを強調して日本より(関税率を)下げることができれば最も良いだろう」とした。院長は「日本の交渉で言及されていないデジタル市場の障壁緩和を(韓国交渉過程中に)出すのも方法」と付け加えた(韓国日報)・・>>
まずは「8月1日前にできるのか」ではないでしょうか(韓国メディアや関係者たちの話だと、十分にできるということになっていますが)。あと、もちろん自動車もそうですが、韓国の場合は半導体関連で関税がどうなるのか、サムスンやSKハイニックスの中国の半導体工場はどうなるのか(関連設備の搬入、生産量制限など)、そんなところがもっとも問題ではないのか・・そんな気もしますが。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。