さて、25日にお伝えした、「ついに米国が『在韓米軍の役割拡大』を公式に要求してきた」件。どうやら、米国側は韓国メディアに同様の内容を伝達したようです(引用記事本文より)。本件、各メディアが取り上げていますが、なんというか、思ったほど大きな話題になっているわけではありません。関税交渉もいいけど、もっと大きく話題になってもおかしくないと思いますが。そんな中、朝鮮日報(26日)が、「米国は、日本、米国、オーストラリア、フィリピンからなる(記事で言う「西太平洋」)対中ラインに参加するかどうかで、自分の友軍なのかどうかを判断するだろう」という記事を載せました。それは確かにそうでしょうけど、実はこの件、2つだけ指摘しなければならないことがあります。
一つは、朝のニュースもそうでしたが右側の政治家たちは「いまの政権は中国寄りです」というイメージを強調していますし、実際にそれはそうですが、じゃ、右派政権だった頃から、そんなに大きく変わったのでしょうか。去年の年末あたりからの「急展開」はともかく、つい8ヶ月前まで保守政権でした。しかも、もう懐かしい話ですが、尹錫悦政権が始まってから、多くのメディアが「もう完全に米国のほうに舵をきった」「(完全に米国寄りになったので)中国との関係が心配だ」と報じていました。でも、実際はそれほど変わっていたわけでもなく、日米韓安保協力(軍事演習など)も対・北朝鮮用のものばかりで、「前任者が文在寅大統領だった」以外に、これといって変わったことがあるのか。それは常に疑問でした。
在韓米軍は韓国の専守防衛のためにあるという主張も、条約の解釈の問題で、いままで米国としては「公開的に問題提起をしていない」だけでしょう。いままで何度も保守政権がありましたが、この問題はいつもスルーでした。左か右かを離れて、数十年前から続いてきた本件。さて、今回は何かが変わるのでしょうか。可能性としては「明日の午前中にタコ型宇宙人が平和目的で地球に来て、トランプ大統領と関税0%で惑星間FTAを締結する」より少しだけ低いと思われます。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・米国務省は24日、韓国と米国が駐韓米軍の役割再調整を核心内容とする「同盟の現代化」協議を始めることにしたと明らかにした。国務省は韓国メディアに送った声明で、「今回の協議は朝鮮半島で米軍と韓国軍の役割と責任を再調整することを目指している」とし「今、同盟は変化する安全保障環境に必ず適応しなければならない」とした。最近、米国はハイレベル外交で、韓国政府に駐韓米軍を現在の北朝鮮のリスクを抑止する戦力から、中国に対応する戦力に変化させようという提案をしたことが分かった。朝鮮半島に限定された米韓相互防衛条約の領域を、インド・太平洋に拡大しようということだ・・
・・その中心には中国問題がある。米国は3月末公開した「臨時国家防衛戦略指針」で中国の台湾侵攻阻止を最優先課題と想定した。来月発表される新しい国防戦略(NDS)にはこれを備えた米軍の再編が盛り込まれる方針だ。台湾の有事の際、米中が衝突した場合、在韓米軍がこれに参加することを、我々が防ぐ方法はない。米国はさらに、韓国軍も米軍と共に中国に対抗することを要求することもできる・・・・米韓相互防衛条約にはこのような意味が名文化されている・・
・・トランプ政府はすでに、日本、オーストラリア、フィリピンに中国リスクの際に、米国側に貢献することを要求している。この三国は、これに同意する可能性が高い。日米はすでに西海と東シナ海、南シナ海一帯を一つの戦区として結ぶ方案を議論している。米国が駐韓米軍を対北朝鮮抑止から対中国戦力に変えれば、これは70年間も韓国安保を支えてきた基本構造が変わるという意味だ。韓米同盟は全く新しいものになる。李在明政権が米国の要求に応じなければ、同盟は本質的に揺れるだろう。我が国民が米国と共に中国に対抗する意思があるのかも不確かだ。韓米同盟が揺れれば、これは韓国経済、社会に連鎖的影響を及ぼすだろう。
トランプ政権は、米国、日本、オーストラリア、フィリピンで構成される西太平洋大中国戦線に、韓国が参加するのかどうかを見て、李在明政権が自分たちの優軍なのかどうかを判断する可能性がある。これは、今後展開される通商と安全保障交渉の全体に影響を与えるだろう。今、最も重要なのが、米韓首脳間の信頼なのに、これが欠けている状態だ。李在明大統領が「親中」という米国の一角の疑いを、早く払拭させなければならない。今は国内政治ではなく外交安保に全力投球する時だ(朝鮮日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。