さて、米国と韓国の関税妥結、一つ前の更新でもお伝えしましたが、15%となりました。思ったよりはかなり善戦したと言えるでしょう。韓国側は「米など農畜産物開放はない」としているし、トランプ大統領は関連分野でも開放されると話すなど、両方の話がズレている部分もあります。しかし、これは他の国の場合もそうなので、これからわかることでしょう。それより気になるのは、一部で「自動車関連で、12.5%を要求したものの、受け入れられなかった」という報道があったことです。これ、各メディアが複数の専門家たちによる分析を載せていますが、「既存」の関税の差によるものでした。ご存知、米国と韓国はFTAを締結していました。今回の15%関税により、本当にFTAはなんだったのか、事実上の破棄にならないのかこれ、という展開になっています。
とりあえず、FTAにより、いままでほとんど関税がありませんでした。たとえば車分野でも、日本は2.5%だったとされています。でも、韓国は0%でした。ニュース1の記事によると、これは、「価格競争力において、約5%の優位を意味するものだった」とのことです。日本は既存2.5%だったのが15%になったので、関税の引き上げ率を考えると、12.5%の引き上げになります。でも、韓国の場合は、同じ15%でも、引き上げ率もまた15%になり、5%とされる競争力が消えてしまいます。だから、韓国政府は既存の関税からの引き上げ率を考慮して、12.5%を主張していた、というわけです。他に韓国日報なども、15%という関税率だけが注目されて、日本、EUと同じレベルとされているものの、実はそれより不利なことになった、と報じています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・米韓関税交渉の妥結で、米国が来月1日から韓国にかけることになった相互関税率が、日本・欧州連合(EU)と同じ15%と決まった。しかし、専門家たちは、「韓国は米国と自由貿易協定(FTA)の状態だったことを考慮しなければならない」と強調している。米国が2.5~4%%ほどの関税率を適用してきたが、最近の交渉妥結で、共に15%に上がった日本・EUとは異なり、韓国はFTAのおかげで事実上0%だったが、これから15%関税をかけられることになったという点で、実質的に、もっと影響があるだろう、という話だ。ドナルド・トランプ米政権が当初予告した相互関税率25%から10%ポイント下げたものの、満足することではないという意味でもある・・
・・崔鍾建 元次官(※文在寅政権の外交部第1次官だった人です)は「実際に、私たちは他の主要貿易国家とは異なる性格の韓米関係を形成していた。日本とEUとは異なり、我々はFTAを米国と成し遂げていたというのが、核心だ」と述べた。したがって「15%合意」と関連しては、人によって評価にずいぶん差が出るだろうというのが、彼の予想だ。元次官は「愉快な判断」をすべきでないとも明らかにした。彼は「(米国とFTAを結んだ)韓国は、ゼロベース(0%)から15%関税をかけられるようになったわけだ」とし、「反面、EUは約3~4%、日本にはこれまで関税率2.5%をかけられていた状況から、今後は15%になった」と説明した。「15%」という数値の結果だけを見て、日本、EUと同じ評価をすることはできないという意味だ(韓国日報)・・>>
他の専門家たちも似たような話をしていて、「15%の関税率は日本と同じ水準ではあるが、米韓FTAまで考えると、多少の不利な要素が入ったと見ることができる」、「米国が、既存の関税率2.5%だった日本と15%で合意した事実は、韓国は12.5%で合意しなければならなかったということだ」などと話しています。また、ニュース1によると、いままでのFTAによる「価格競争力5%分」も、消えることになる、とも。
<<・・米韓FTAが提供していた韓国産自動車関税「0%」の恩恵は、事実上、終了した。韓米FTAは韓国産自動車に対して米国での関税を免除としてきた。一方、日本とEUは基本関税2.5%を適用された。これにより、国内産自動車は5%前後の価格競争力を維持してきたわけだが、今回の相互関税の体系改編で、このメリットが消え、日本・EUと同じ関税が適用されることになったのだ。実際、業界ではFTA関税減免効果(マイナス2.5%)を維持するためにも、関税率12.5%を最良のシナリオと見ていた。韓国政府もこのための交渉を続けてきた、という。金容範 大統領室政策室長はこの日(31日)、韓米関税交渉の結果、自動車品目関税が15%と決定されたことと関連した「残念な部分」とし「私たちは12.5%で最善を尽くして主張したが、かなえられなかった」と説明した(ニュース1)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。