韓国政府、開城工業団地の再開を推進・・南北交流の象徴とされるも、2016年に稼働停止

韓国政府が、開城工業団地の再開を推進すると明らかにしました。北朝鮮の開城という地域にある工業団地で、韓国側の企業が現地で人を雇用する形になっています。一時、南北交流の象徴的な存在でした。2000年、金大中政権のときにプロジェクトが始まりました。実際に工事が始まったのは2003年頃なので、実際は盧武鉉政権によるものだと見ることもできます。現在の鄭東泳 統一部長官が、当時も統一部長官でした。しかし、ご存知、当時の宥和政策は思ったほどの成果が出せず、南北関係そのものが揺れ、北朝鮮核・ミサイル問題などもあり、2016年朴槿恵政権のとき、稼働を中断しました。このときから、事実上、開城工業団地は役割は終了したと見てもいいでしょう。

しかし、文在寅政権ではこの開城工業団地を再び強く持ち上げ、当時の「朝鮮半島平和プロセス」において大きな業績とされる「南北連絡事務所」(南北の職員が常駐する連絡事務所)をこの開城工業団地に設置しました。2018年9月14日京郷新聞を見てみると、「もう一つの偉業」「南北首脳会談から180日ぶり」「南北統一のための大きな前進」などと、かなり高評価されていました。当時、文大統領は開城工業団地の製品を韓国産として認めてくれるよう米国側に働きかけたものの、米国など国際社会は北朝鮮産(制裁対象)としか見ていなかった、という話もあります。まず、時事ジャーナル(7月31日)から、鄭東泳 統一部長官の話を引用してみます。以下、<<~>>が引用部分です。




<<・・鄭東泳 統一部長官は(※7月)31日、「開城工業団地が再び開かれる日、朝鮮半島の運命は再び変わることになるだろう」とし、開城工団の再稼働を推進するという意志を明らかにした。北朝鮮が対南強硬策を表明している中、鄭長官の公言が現実化できるかが注目される・・・・鄭長官は「開城工団が閉鎖され、朝鮮半島に暗雲がかかるようになった」(※後述しますが、そうでもありません)とし、開城工団閉鎖決定をした保守政権に対して「そうすべきでなかった」と批判した。続いて「20年前、開城工団の夢はうまくいかなかったのものの、その夢を蘇らせて現実にするために、再び歩みを始める」とした・・

・・面談に出席していた開城工団企業協会会長団は、鄭長官の公団再稼働意志を歓迎し、開城工団が再び開かれたら入居して働きたいと答えたと、統一部は伝えた。一方、開城工団は2000年、現代亜山とアジア太平洋平和委員会の間で、北側の工業地区開発に関する合意で始まり、2003年6月に最初の工事が始まった。鄭長官は2004年~2005年、盧武鉉政権の統一部首長として開城工団事業を導いた(時事ジャーナル)・・>>

 




しかし、長官は一言もしていませんが、開城工業団地が完全に閉鎖されたのは、北朝鮮による「南北連絡事務所爆破」です。2020年6月16日、北朝鮮は、なんと開城工業団地の南北連絡事務所を爆破しました(常駐職員は事前に撤収)。当時、米朝首脳会談が決裂し、文政権が主導していた「運転者論(仲介外交)」は力を失っていました。文政権としては米国を経由しない南北関係「だけ」が残っていた時点でした。当然ですが、南北交流そのものが大きな影響を受けました。いまでも鮮明に覚えているのは、2020年6月17日東亜日報に載っている、当時「民主平統諮問会議」(政府諮問機関)の丁世鉉 首席副議長の発言です。当時ブログでも紹介しましたが、久しぶりにもう一度引用してみます。

 

<<・・丁世鉉 民主平統諮問会議の首席副議長は、北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所を爆破したことと関連し、「関係を復元することができる余地を残しておいたものだ」と楽観的に解釈した。副議長は17日午前、tbsラジオ「金於俊のニュース工場」に出演して、このように述べた。司会者 金於俊も、今回の北朝鮮の挑発に対して「今回の場合は、(北朝鮮が)事前に、そのようにすると数日前に予告してから行動したわけだから、北朝鮮が関係を切るつもりではないと、私も思う」と擁護する立場を取った。

丁副議長は「共同連絡事務所を爆破したのは事実だが、その機能は、後で復元できる。そのとなりに、今、窓ガラスが壊れている15階建てのビルがあるけそ、そこ、空いてる部屋が多い。そのビルに、ガラス直して、入れば(※新しい南北連絡事務所を作れば)いいのだ」と述べた・・・・「こちら(※韓国)の行動が遅すぎるから、もうちょっと早く動いれくれというメッセージである」と北朝鮮の立場を強調した(東亜日報)・・>>

 

次は、「そんなもの、物理防御力を上げればいい」とでも言うのでしょうか。それとも「愛と努力と根性」かな。いまのところ、北朝鮮側が「話し合うことはありません」としているので、実現できるかどうかは分かりません。さて、来年の地方選挙結果(全国の自治体首長を選ぶ選挙)が出るまでは、具体的には動けないだろうと思われますが。

今日の更新はこれだけです。明日の午前11時頃に更新再開します。来週は夏休みをいただきますので、週末もいつもどおり更新できれば、と思っております。




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