本題の前に、2つだけ余談をどっこいしょ。ロイター(日本語版)の「関税の大統領令、適時修正と米側説明 赤沢氏『7日に遡って適用』」という記事によると、米側から大統領令を適時修正し、新税率を発動した今月7日にさかのぼって払い戻すとの説明があった、とのことです。これが本当ならただのハプニングだったとも言えますが、さて、どうでしょうか。この「齟齬」、そう簡単な問題(お互いの誤解など)なのか。どうも気になります。他に、日本の護衛艦「もがみ」が、オーストラリアで採用され、よかったと思っています。このような協力は、これからも続けてほしいと願います。こういう話も、なにか思うところがあればコメント欄に書いてください。
で、本題は『米韓造船協力』全般に関するもので、韓国メディアの「米国との造船協力は、本当に私たちが望む形になるのか」という趣旨の記事です。毎日経済(6日)です。米韓関税交渉関連で、別に数えてみたわけではありませんがもっとも多く出てきた単語は「造船」ではないでしょうか。トランプ大統領が韓国関連で「造船分野での協力」について言及してからずっとこの単語が出てきて、もう「これだけは本当に間違いない」とするレベルです。明確にどの記事だったか思い出せなくて恐縮ですが、ある専門家が、「米国で作る船はずべて韓国で作るといったふうに記事が量産されている」と指摘したりしました。話が大げさすぎるのではないか、という意味です。
今回の記事も似たようなもので、「国内の造船業界に、そこまで協力できる(たとえば人材を派遣するとか)余力がない」こと、「米国は軍艦を韓国で建造することを望んでいない(非戦闘艦艇のメンテナンスなどはできる)」こと、「米国は中韓造船協力を警戒している(韓国は中国へのエンジン輸出が多い)」ことの3つが大きなテーマです。人の派遣については、米国は韓国の「強すぎる」労働組合のことを気にしていて、できれば若い人たち(労働組合と深く関わっている年長者たちではなく)を望んでいるけど、そもそも国内に「派遣できるほどの若い人」がそういない、とのことでして。韓国メディアにしてはかなり異例の指摘で、他のほとんどのメディアは「造船で協力できるのは私たちだけだ」というふうに報じています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・まず、米国造船業復活のためには造船分野の熟練した人材を支援することが重要であるが、韓国は50代、60代熟練工を(※米国に)送るという計画を持っている一方、米国は韓国の強い労働組合が米国造船業に影響を及ぼすのではないか懸念しているという点だ。次に、米国政府は国内造船業者の最大関心事である米国戦闘艦・支援艦など軍艦建造を、韓国の造船所ではなく米国内造船所で行うことを希望している。そして、韓国造船会社が年間数千億ウォンに達する船舶用エンジンを中国に輸出していることも問題にしている・・・・(※関税交渉において)韓国交渉団は世界最高水準の韓国造船業技術を移転し、事実上荒廃した米国造船業の復活を助けるというMASGA(Make American Shipbuilding Great Again)プロジェクトを提案して相互関税率を15%に下げたが、具体的な細部交渉を控えて一部項目で韓米両国が「同床異夢」する側面があり、問題になると予想される。
6日、韓国の造船業界と韓米関係に詳しい情報筋などによると、韓国政府と造船各社は引退したり、引退を控えた50代、60代の熟練人材を派遣することを検討している。若い造船業エンジニアたちが米国に行けば、いまも人手が足りない国内造船業競争力が弱まる可能性があるからだ。 しかし、米国は労組活動の可能性などを理由に、若い人材支援を要請している・・・・MASGAプロジェクトが稼働するとしても、巨済や蔚山など韓国内の造船所で、米国のイージス艦など戦闘艦を建造するのは難しいだろうという見通しが多い。ペンタゴンなど米国軍事当局は、有事の際に中国の攻撃や情報流出などを懸念して、朝鮮半島で軍艦を建造することを望んでいない。
米国海軍は今後30年間、軍艦364隻を新たに建造しようとしているが、戦闘体系搭載、米国内の法律、軍事セキュリティなどの問題で、国内造船所では非戦闘艦整備(MRO、保守管理など)受注だけが行われる可能性が大きい・・・・米国内で軍艦を専門的に建造できるのはバージニア州ハンティントンインガールズが事実上、唯一である。これにより、米国側はMASGAファンドを米国内軍艦建造施設の拡充に相当部分あてるよう圧迫する可能性が高い。ヤン・ジョンソ韓国輸出入銀行海外経済研究所首席研究院は、「米国海軍は、韓国内軍艦の建造も可能だという立場だが、議会は意見が異なる」とし「最終的に海外企業の投資を誘導して自国造船業を正常化するという意図だと思われる」と説明した。
情報筋によると、米国は韓国の造船会社が中国に船舶用エンジンを輸出しているという事実に注目している。米国は事実上、中国に遅れをとったと判断される造船業と海軍艦艇を現代化することが重要であるが、韓国が生産した先端船舶エンジンを中国に輸出することは、その目的に合わないためだ。この情報筋は、「米国は、韓国が中国に輸出する船舶用エンジンが中国軍艦などに利用されることを懸念している」と伝えた(毎日経済)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。