ちょうど先月にも防衛白書の記述で似たようなことがありましたが、日本など周辺国家の記述、発言などで、中国側がそれを問題にしたりします。7月にも防衛白書に「強く懸念」としていましたが、中国側はそれを「自国の軍事能力拡大に、中国を『脅威』としている」と非難したりしました。韓国ではこの手の表現として「懸念」という表現はあまり使いません。一般的に、「威脅(ウィヒョップ)」をよく使います。普通に日本語の「脅威」と同じ意味にもなりますが、なにかもうちょっと具体的な場合は(すなわちシチュエーションによっては)日本語の「威嚇」と似たようなニュアンスにもなります。個人的に、なにか具体的な話でもないない場合は、普通に「リスク(リクス要因)」と訳すればいいじゃないかな、そんな気もします。今回、それが問題になりました。
で、どういう内容だったかと言いますと、韓国外交部長官の、「北東アジアで、中国は周辺国家において多少の問題になっており、中国が国際秩序の『威脅』にならないよう、米国、日本と協力するというのが私あっちの立場です」という発言です(ソース記事デイリアン、6日)。韓国の立場からするときわめて普通のものでしたが、中国の官営メディアがこれについて「とても危ない、綱渡り外交である」と非難しました。すると、大統領室が急に声明を出し、「域内でもっと役に立つ、そんな中韓関係を作っていきますという、そういう趣旨の発言でした」としました。野党「国民の力」は、なんでここまで中国にだけは丸くなるのかと、批判しています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・大統領室が、趙顕 外交部長官の発言に関連して中国官営メディアが思わしくない反応を見せると、解明に乗り出した中、国民の力が「なんで中国の前でだけ、こんなにも小さくなる李在明政権は、一体何がそんなに怖いのか」と話した。郭圭澤 首席広報担当者は6日、声明を出して「(外交部長官の)極めて常識的な発言にここまで反応する中国も問題だが、さらに理解できないのは、李在明政権の態度」と指摘した。これに先立ち、中国官営メディアは外交部長官が「北東アジアで、中国は隣国に多少問題になっている。中国が国際秩序の威脅にならないように、米国・日本と協力するというのが政府の立場」と明らかにしたことについて、不満を述べた。
彼らは、韓国外交政策の両面性を示していると指摘し、「長官の言詞は、危ない綱渡り外交を反映している」と指摘した。これに大統領室は5日、言論公知を通じて「外交部長官の発言は、韓中の間の一部事案に異見があっても、民生及び域内安定と繁栄に役立つ韓中関係を作るために持続して努力していくという趣旨の言及」と解明した。首席広報担当者は「(大統領室は)外交部長官の発言は『韓中間に一部異見があっても域内に役立つ関係を作るために持続努力するという趣旨の言及』という内容の文を発表した」とし、「まるで、中国側に解明する形である」と指摘した・・
・・また、首席スポークスマンは「韓米首脳会談を控えた大事な時期である。かなり米国側に「親中」のイメージとされている李在明大統領だからこそ、このような措置は韓米関係に不利なことになるだろうし、国益にも全く役に立たないことを心に留めておくべきだ」とした。また、「李在明大統領は、国際社会で永遠に『シェシェ』大統領とされることを望んでないなら、今でも厳重な外交現実を直視し、余計な誤解の余地を残さないよう、助言する」と話した(デイリアン)・・>>
先も書きましたが、少なくとも各関連記事を読んでみたところ、外交部長官が発言した「威脅」という言葉は、そこまで強い表現ではありません。たとえば、先の日本の防衛白書に書いてある「強い懸念」という表現も、当時の韓国メディアの記事には「中国を威脅と記述した日本防衛白書~」ということになっていました(7月15日MBCなど)。国民の力側も言っていますが、外交部長官として普通の発言だったと思いますが、大統領室が前に出るとは、さすがはシェシェ、といったところでしょうか。しかし、「多少問題になっており」「威脅にならないように」が、なにをどうすれば「域内の繁栄のための関係を築く」になるのか、それもよくわかりまシェん。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。