「仲裁者」、「仲介者」、「均衡者(バランサー)」などなど、韓国政府の外交路線はいくつかの言葉で表現されてきました。ちなみに、文在寅政権の外交は仲「介」外交のほうが合ってる気がしますが、韓国では「仲裁外交」という言葉も普通に使われていました。最近は実用外交ということになっています。前にも書いたことがありますが、実は盧武鉉政権が掲げていたバランサー外交が、「均衡的実用外交」であり、中身または目的は、似たようなものだと思われます。これらの言葉を聞いて、米国も日本も、あまり良い思い出はなさそうですが・・今回、米韓首脳会談などを受けて、またもや「仲介者」「仲裁者」などの主張が出ています。東亜日報は、特に米国と北朝鮮のことを取り上げながら、仲裁者としての韓国の役割が重要になっていた・・と報じています。
しかし、少数ではありますが、「米国のど真ん中で『中国との関係も重要だ』と話しといて、実用だと言えばそれでいいのか」という側面を指摘する記事もあります。ニュース1(26日)は、「安米経中はもうできないとしながらも、米国に『相手の立場で考えてほしい』というのは、それは結局中国側に近づいたことではないのか」という題の記事で、この側面を記事にしています。李大統領のいう「実用」とは、実は盧武鉉政権のバランサー外交(中国側に近づくことをバランスと主張してのもの)と同じですから、このニュース1の主張のほうが的確だと言えますが・・全般的に今回の米韓首脳会談はかなり好評で、こういう記事を出すメディアは少数だけです。以下、両方、<<~>>で引用してみます。
<<・・米韓首脳会談で東アジア外交安保地形が動く、韓国の仲裁者としての役割論が浮上(※題)。米韓首脳会談の後、中国と日本メディアは東アジア地域の外交・経済・安保地形に変化が起きていると診断した。中国は韓米首脳会談の後、緊密になった韓米関係に警戒感を表わしながらも、韓中関係回復の重要性を強調している。日本も在韓米軍の役割変化と北米関係の変化に準備をしなければならないという意見を出している・・・・このような中国と日本での米韓首脳会談後の反応を見て、これまで東アジア外交安保地形で外されていた私たちの役割論が再浮上している、という評価が出ている。
李在明大統領が先にトランプ大統領に米朝首脳会談を提案したように、米朝、米中関係で、両側と関係を結んでいる韓国の仲裁者としての役割がこれまで以上に重要になっているということだ。イ・ギョン、デシン証券研究員(※なんで証券研究員が出てきたのかはわかりませんが、記事原文ままです)は「今回の訪日・訪米を通じて、韓国は米国と中国の間のどちらかを選ばなければならない構図ではなく、仲裁者としての役割を果たすことで、難関を打開できるようになると期待される」とし、「慶州(※APEC開催地)でトランプと習近平の出会いを成立させることができれば、韓国は両国から実利が得られる外交的、産業的立場を手に入れる事ができるだろう」と話した(東亜日報)・・>>
<<・・李在明大統領が、米国の対中圧迫基調の中でも「安米経中はもう不可能だ」という現実を認めながらも、「米国も中国と協力しているではないか」と話し、韓米、韓中関係をすべて取り組む「陽動作戦」に出た。米国の対中牽制への参加の要求が続いている状況で、韓国の地政学的・外交的現実を強調し、米国に「易地思之してほしい」というメッセージを出し、中国には「韓中関係改善」の意志を浮き彫りにする外交的ジェスチャーだと解釈される。
李大統領は25日(現地時間)、米韓首脳会談をきっかけに米国ワシントンD.C.で開かれた戦略国際問題研究所(CSIS)招待演説を終えた後、ジョン・ハンリー所長との対談で「韓国は、いままでは安米経中だったが、もうそうはいかない」とした。しかし、李大統領は「でも、米国も中国と基本的に競争し、対決もしながら、また協力する分野においては協力するのが事実ではないか」とし、米中関係と韓中関係が似ている点があるという論理を展開した。「私たちの立場で考えてほしい」と要求したわけだ。特に李大統領は「私たちが(中国と)地理的に多く近いため(現在は)それから派生する、避けられない関係をよく管理できている水準」とし「私たちが米国の基本政策からずれて判断することはできない」と話し、中国との交流がそのまま韓米同盟に反するものではないというメッセージを強調した。
米国自らも技術・気候・エネルギーなど分野で中国と協力する現実に言及し、韓国も「中国と必要な協力は持続しなければならない」という点を力説したのだ。特に、このような発言を米国ワシントンの真ん中で公開的にしたことは、中国に向けて送る積極的なメッセージであると解釈できる。韓国が同盟として米国の政策基調を尊重しながらも、同時に中国との関係も望んでいるというメッセージを、中国に送ったわけだ。
李大統領は24日、米韓首脳会談を控えた機内懇談会でも「外交に親中もなにもないでしょう」とし「国の国益に役立つと近づくし、役に立たないなら遠ざかるだけ」と明らかにし、韓米同盟を基盤とした韓中関係改善も必要だとした。李大統領は「私たちの外交の根幹は韓米同盟だが、だからといって中国との関係がないと生いていけない」とし「そういうのを親中だとしたら、私は親中をしなければならないだろう」とも話した。米韓首脳会談の日程をすべて終えた後は、10月末アジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議での中韓首脳会談の実現に力を入れると予想される(ニュース1)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。