米国商務省「外国所有の半導体工場がVEU(認定エンドユーザー)資格を得ることはもうないでしょう」

昨日お伝えした、サムスン電子とSKハイニックスのVEU(Validated End-User、認定エンドユーザー、韓国ではよく「検証された最終使用者」と訳されます)取り消しの件。簡単に言えば、韓国半導体メーカーは、これから中国工場への米国製設備搬入などにおいて「個別審査を受ける」ようになります。電気車補助金とともに、尹鈴悦政権の大きな外交成果とされてきましたが、補助金もVEUも事実上の取り消しになりました。本件、一昨日あたりからニュースになっていますが、連日、韓国では大きな話題になっています。一部メディアは「い、インテルもですよ」としていますが、2つ前のエントリーでもお伝えしましたが、法人名はインテルとなっていても、その工場はSKハイニックスのもので、事実上、韓国半導体メーカー「だけ」が対象となりました。

予想通り、多くのメディアが記事の題などに「後頭部」「ダブルスタンダード」と書いています。コウトウブルスタンダードと名付けましょう。国内メディアの米韓首脳会談についての評価があまりにもよかっただけに、予想外だといいたいのでしょう。しかし、今回の措置が米韓首脳会談「だけ」で決まったとは思えません。どちらかというと、なにか米国に有利な交渉、合意があった場合、今回の措置をトランプ大統領が「止めた(発表を延期させた)」可能性はありますが、相応の交渉がなかったからといって、急にこんな措置を取ったはずはありません。ちなみに、TSMCの場合、いまのところはVEU資格が続いています。




TSMCの場合、VEU資格を得るとき、米政府から時限付きでVEUの保障を受けたという話しもあります。その時限が来るまでは、VEUを続けることができるのではないか、とも。ただ、具体的な情報が出ているわけではありません。さて、本件、短期間で大きな影響が現れることはないだろうと(工場のアップグレードに関する内容ですので)言われていますし、実際にそうでしょうけど、メモリー分野も含めて中国半導体が成長していることを考えると、やはり両者にとっては大きな問題でしょう。一時は我先にと中国に半導体工場を作っていましたが。また、毎日経済(8月31日)の毎日経済によると、米国商務省は「これで、外国所有の半導体工場がVEU資格を得ることはもうないだろう」と話していて、どうやらサムスン電子やSKハイニックスのVEU復活は難しそうです。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・中国半導体産業牽制に乗り出した米国のドナルド・トランプ政権が、NVIDIA、AMDなど米国企業の中国輸出には寛大な立場であるものの、サムスン電子、SKハイニックスだけには規制を強化し、ダブルスタンダードではないのかという議論が起きている。米国商務省は最近、NVIDIAの人工知能(AI)チップであるH20とAMDのMI308チップを中国に輸出してもいいと許可した。




ドナルド・トランプ大統領はさらに、NVIDIAの高仕様プレミアム製品である「ブラックウェル」についても一部仕様を下げたバージョンが出るなら、中国への輸出を許可してもいいと柔軟なジェスチャーを取った。一方、商務省産業安全保障局(BIS)は29日(現地時間)、事前公開した指針で、サムスン電子の中国西安工場とSKハイニックスの中国無錫工場などを「検証されたエンドユーザー(VEU)」プログラムから外した。2022年から米国産半導体装備の中国内搬入を管理し、韓国企業にはVEU資格で便宜を提供してきたが、3年ぶりになかったことにしたのだ。

これにより、サムスン電子とSKハイニックスは今後、中国に半導体装備を搬入する際にVEU資格に明示している包括許可の代わりに「件別審査」として許可を受けなければならない。米国商務省の関係者は「今回の決定以降、外国所有の半導体製造工場が再びVEU地位を得ることはないだろう」と述べた。

 

サムスン電子とSKハイニックスは、中国工場で生産するDRAMとNANDフラッシュプロセス管理に不確実さが増大する可能性があるとし、緊張感を隠すことができないでいる。半導体設備の円滑な搬入が遅延・拒否されると、収率(完成品のうち良品の比率)が低下し収益性に問題が生じ、顧客会社が離脱する可能性がある。米中ハイテク競争の影響が、韓国半導体企業に及んでいるわけだ。米韓首脳会談で同盟を強化しようと意気投合してから、その4日後に米国のこのような措置を受けることになった政府としても、慌てるしかない。前任のジョー・バイデン政権の時に同盟国と結んだ合意を、簡単にひっくり返すトランプ政府の政策の一貫性と信頼性にもひびが入った(毎日経済)・・>>




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