韓国で、「3500億ドルを投資せず、トランプ関税25%のまま(任期4年間)耐えたほうがいい」という主張が広がっています。この前、米国のシンクタンクの人が、日本と韓国に対して同じ主張をしたことがありますが、それから一気に広がりました。韓国の国策シンクタンクである対外経済政策研究院も、似たような主張をしていた、とも。関税25%による影響を4年間受けたほうが、ずっとダメージが少ないというのです。京郷新聞などです(15日)。そして、昨日、韓国政府が米国側に「無制限米韓通貨スワップ」を要請したというニュースをお伝えしましたが、「もし通貨スワップができても、それでも負担が大きすぎる」という主張も出ています。こちらは文化日報(16日)です。なんか、「外貨保有高世界◯位」と報じる時と、あまりにも違うニュアンスです(笑)。
そういえば、日本側への関税15%が今日から始まりました。自動車関連だけが注目されていますが、航空機部品などいろいろ(今度こそ)合意のまま適用されたようで、不幸中の幸いですが・・先の「25%のままでいい」主張、本当にそうなのかは疑問です。関税による各企業への影響がどれくらいのものか、まだデータが出揃ってないのでなんともいえませんが、もし価格競争力などに問題が生じ、シェアを失うことになるなら、それを「4年間耐えればいい」と言えるのでしょうか。いったん下がったシェアは、そう簡単には戻らないでしょう。また、他の国では50%とかそんな話も出ているし、次の政権がトランプ関税を元に戻すのかどうかも、わかりません。なんというか、韓国メディアは、なにかがうまくいかないと「私たちは何もする必要がない」という主張をすることが多々ありますが、今回もそんな主張ではないのか、そんな気もします。以下、<<~>>で合わせて引用してみます。
<<・・米韓関税交渉が難航している中、米国が25%の相互関税をかけた場合、韓国の実質国内総生産(GDP)は0.3~0.4%減ると見込まれる。単純に昨年の韓国実質GDPで計算すれば、年間最大7兆~9兆ウォンの経済的損失に該当する。韓国経済に大きな衝撃を与えることができる規模ではあるが、米国が要求した3500億ドル(486兆ウォン)の現金投資よりは影響が少ないという意見が出ている。15日、対外経済研究院が6月に産業通商資源部に提出した「韓米関税協議の経済的妥当性研究」報告書を見ると、米国が予告した通り25%関税を適用すると・・・・年間7兆~9兆ウォンに該当する。実際の年間額はこれよりも減少する可能性もある。
米国の主張通り、3500億ドルを現金で投資して、収益も米国がほぼ持っていく仕組みを選ぶなら(※日本の場合『投資金が回収できるまでは米国と相手国で5:5』の条件で、米国がほぼ持っていくというのは『全額回収の後』に米国が90%持って行くとなっていて、韓国も同じ条件、と言われています)、韓国がすぐに得られる実益が大きくなく、元金をいつ回収できるか不確実性が大きい。「関税25%によるGDP減少」の方を選ぶ選択もある、総量面で影響が少ない道だという意見が出てくる理由だ。
韓国政府は、交渉決裂による影響を気にし、米国の要求をそのまま受け入れることも難しい状況に置かれた。韓国貿易協会国際貿易通商研究は「外国為替保有高4000億ドルの相当部分が対米投資として引き出されば、国内金融市場に影響はもちろん、国家信任度や為替レート、外国為替運用に大きな負担になるため、韓国政府は米国の要求をそのまま受け入れられない」とした(京郷新聞)・・>>
<<・・米国との関税交渉と関連して通貨スワップが関心事として浮上している。最近、一部のメディアは「韓国政府が米国に無制限(常設)通貨スワップ締結を提案した」と報道した。これに対し、政府が公式に否認していないことを考えると、事実であると推定される・・・・米国が果たして韓国と無制限通貨スワップを締結するかどうか、それも結果を見ないとわからない問題だが、米国と無制限通貨スワップを締結できたとしても、韓国外国為替保有額が4163億ドルから663億ドル水準に減少した状況で、韓国経済が果たして耐えられるかどうかはまた別の問題だ。北朝鮮と軍事的対立を続けており、世界最高水準の対外依存度を持つ韓国が、米国と無制限の通貨スワップを締結しても、外国為替保有額の84%以上を減らした後、存立を維持できるかどうかは多くの悩みが必要な問題だ(文化日報)・・>>
引用部分にはありませんが、京郷新聞の記事には、このような内容もあります。「この研究では、最近妥結した日米関税交渉の結果は反映されていない」、「米韓関税交渉が失敗し、最終的に日本が15%関税を、韓国が25%関税を適用されれば、輸出への影響が予想以上に大きくなる可能性がある」、「日本産製品より価格競争力で問題が生じる可能性が大きい」。前にも書いたことがありますが、既存関税は韓国車が0%、日本車が2.5%でした。これが、価格競争力に約5%のリードを与えていた、と分析されています。これだけでも結構大きいのでは、な気もしますが。今日の更新はこれだけです。次の更新は17日(明日)の11時頃になります。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。